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ふるさと納税、財形貯蓄、節電……。世間に流通するさまざまな節約術や納税の工夫。だが、本質を理解せずテクニックだけに走ればかえって思わぬ損をしてしまうこともある。ちまたで人気&定番のマネー術を、気鋭のファイナンシャルプランナーがチェックする。

■「ふるさと納税」は上限額に要注意

雑誌やテレビ、ネットを通じて、世の中にはさまざまなマネー術が流布しています。わかりやすくてすぐに試せそうなものは、ついやってみたくなりますよね。

でも実際には、とっつきやすくても効果が薄かったり、他の人には有効だけれど自分には合わなかったり、というものも少なくありません。使い方を間違えると効果が薄れたり、むしろ損をしてしまったりするマネー術も存在します。

そこで今回は、定番もしくは最近人気のいくつかのマネー術を見直してみようと思います。

まず取り上げたいのは、「ふるさと納税」です。居住地以外の自治体に、納税額の一部を実質的に振り分けられる制度で、出身地や災害被災地に寄付ができるという意味合いはもちろん、実質2000円の自己負担で各地の特産品がもらえることでも人気を集めています。私もお得な制度として、よくおすすめしています。

しかし、このふるさと納税には、いくつか落とし穴があります。第1の注意点は、「実質2000円の自己負担」ですむふるさと納税の額には、人によって上限があるということです。

ふるさと納税の基本的仕組みは、納めた金額のうち年間2000円を超える部分が、所得税や住民税の減税という形で本人に戻ってくるというものです。たとえば、年2万円分のふるさと納税をした場合、2万円から2000円を引いた1万8000円が減税分になります。内訳は、所得税率が10%の人の場合、所得税が1800円、住民税が1800円、残りの1万4400円が住民税からの「特別控除」となります。

そしてこの特別控除分は、住民税取得割額の2割までと定められています。くわしい計算は省きますが、年収500万円、専業主婦の妻と中学生以下の子供がいるAさんの場合、2000円の自己負担で寄付できる上限額の目安は4万9000円まで。それを超えた分は、最初の2000円同様「自己負担」になります。さらに、住民税は前年度の収入をもとに計算するため、ふるさと納税をした年と減税を受ける年の収入が変わると上限額が変わります。

こうした上限のわかりにくさが、ふるさと納税の落とし穴の一つです。同じ年収でも、住宅ローン減税などで課税年収が低い場合、上限額はさらに下がります。ふるさと納税のポータルサイトには、源泉徴収票の数字を入力すると上限額が計算できるページが設けられているので、一般の方はそれを利用するのがいいでしょう。

第2の注意点は、住民税の減税分が、翌年度の住民税から差し引かれる形で還元されることです。所得税の確定申告による還付金などは、まとめて銀行口座に振り込まれるため総額が把握しやすいのですが、ふるさと納税による住民税の減税分は、給与からの月々の天引き分が減る形で還元されます。感覚的には単に手取りが増える形になるので、つい使いきってしまいがちです。減税の総額を意識し、無駄遣いせずに家計に戻すことを心がけてください。

■超低金利の今、「一般財形貯蓄」にメリットはあるか

給与から定額を天引きして貯めてくれる「財形貯蓄」は、貯金のための優れたツールです。利率は定期預金に多少色がつくくらい。お勤め先によっては利子を少し上乗せしてくれる場合もあります。

そんな財形貯蓄にも、難点はあります。まず、自動的に貯められるために放置ぎみになりやすいこと。月々いくらずつ貯めているのか、今いくら貯まっているのか、よくわからなくなりがちです(使わないという意味ではいいのかもしれませんが……)。

一般財形貯蓄と、財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄との使い分けにも注意が必要です(※)。使い道を限定したくないから一般財形で、という方が多いのですが、他の財形のように利子課税の免除はありません。それほど高くはない利子に税金までかかるのなら、財形にこだわる理由を感じにくくなります。

※財形貯蓄には目的に応じて「一般財形貯蓄」「財形年金貯蓄」「財形住宅貯蓄」の3種類があり、「年金」と「住宅」には両方合わせて元利合計550万円以内が非課税となる税制上の優遇措置がある。

とりあえず財形住宅貯蓄で貯めておいて、途中で解約しても、利子に税金がかかるのは過去5年分まで。6年以上貯めるなら、一般財形を選ぶメリットはありません。

1週間満期や2週間満期の定期預金のほうが利率が有利なこともありますし、中長期的に考えるなら一部を投資信託の積み立てに回してリターンを狙う手もあります。超低金利の今、最初にある程度お金を貯めるまでならともかく、まとまったお金を置いておく場所としては、一般財形のメリットは見えにくいように思います。

■「契約アンペア数の見直し」は節約になるか

電気代節約の手段としてときどき話題になるのが、契約アンペア数の見直しです。多くの電力会社では、契約アンペア数によって基本料金が変わります。

東京電力を例にとれば、ファミリー向けマンションで一般的な40アンペア契約を30アンペア契約に切り替えると、月々の基本料金が280円80銭安くなります。使用料に比例する電力量料金の単価は変わりませんが、何も意識しなくても年に3000円ちょっとの節約、という人もいます。

でも、果たして本当にお得なのでしょうか。

アンペア契約とは、一度に最大使用可能な電力をどこまでにするかというものです。電子レンジを使えば15アンペア、エアコンの立ち上がりもやはり15アンペアぐらい必要ですから、30アンペア契約であれば、そこでテレビをつけてドライヤーを使えばブレーカーが落ちてしまいます。

IHコンロを使うオール電化のご家庭なら、60アンペアはないと生活が成立しないでしょう。水道の蛇口の栓を絞り、ちょろちょろと弱々しく出る水をみんなで順番に使うようなもので、月280円の節約の代償としては不便が大きすぎます。

電力自由化プランについてもシミュレーションしてみましたが、もともと多くの電力を使っている家庭ならば安くなるかも、くらいの評価です。深夜電力を使ったお得なプランを昔から継続しているご家庭も、新プランに乗り換えるメリットは薄いでしょう。

エアコンのオンオフも最近話題ですね。設定温度と気温の差が大きいときほどエアコンは電気を消費するので、こまめにつけ消しするより、つけっぱなしのほうが節電になる、という理屈です。

私も2015年の夏、30日間、24時間つけっぱなしを実験してみたのですが、わが家の場合は月額で約600円、電気代が高くなってしまいました。ネットなどには電気代が半額になったという報告もあるので、間取りやエアコンの性能にもよるのだと思います。

ただ、快適性はすばらしかったので、2016年の夏もまた試してみようと思います。10〜20分程度の外出でいちいち消したりつけたりするのは、確かに電気の無駄になるようです。どうしても精神的に抵抗がある場合は、たとえば朝方の数時間だけ消すように設定してみてもいいかもしれません。省エネ性能の高いエアコンに買い替えるのも、おすすめです。

ちなみに、つけっぱなしが節電になるのは夏だけ。冬は夏よりも設定温度と気温の差があり、温度を保つための消費電力が大きく、つけっぱなしは逆効果です。

節約術でときどき目の敵にされるのが、クレジットカードです。カードがあるから無駄な買い物が増える、だから「クレカ断ち」をしよう、などなど。

■「カード断ち」より上手に利用してポイントを稼ごう

しかし、ファイナンシャルプランナーとして指摘しておきたいのは、現金であろうとカードであろうと、買うべきものしか買ってはいけないという大原則です。そこをあやふやにし、自分の無駄遣いをカードのせいにしても状況は改善しません。

そのうえで、クレジットカードにはポイントがつきます。マネー術という観点からおすすめできるのは、年会費が無料で、どこで使っても1%以上のポイント還元があるカード。現状では、楽天カード、P-one(ピーワン)カード、リクルートカードなどが該当します。通信費などの固定費の支払いに使い、ポイントを貯めるのが、カードを使った初歩の節約術です。

今、注目しているのは、LINE Pay(ラインペイ)カード。通常のクレジットカードとは異なり、あらかじめチャージして使うプリペイドカードの一種で、還元率が2%もあります。固定費など定額の引き落としには使えず、システム上本人名義のカードを要求するネットショップなどでも使えない欠点はありますが、普通に使えるお店もたくさんあります。

収入アップや資産運用は、自分の意志だけではどうにもならない要素が多いもの。でも節約や使い方の工夫なら、意志さえあれば効果は出ます。さまざまなマネー術の本質を理解したうえで、上手に使いこなしてください。

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<人気のマネー術、ここに注意!>

●ふるさと納税
住民税額で決まる上限に注意。還付分が見えにくく、減税分を無駄遣いする危険も。
●財形貯蓄
一般財形は給料天引き以外のメリットが希薄。やるなら財形住宅貯蓄か財形年金貯蓄を。
●電気代節約
エアコンのこまめなオンオフは電力の浪費。契約アンペアの見直しも利便性を考えて。
●クレジットカード断ち
お得なポイント還元、利用明細を使った出費チェックなど、使い方次第で家計の味方に。

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(ファイナンシャルプランナー 風呂内 亜矢 構成=川口昌人 写真=PIXTA)