中国人民解放軍建軍90周年 内モンゴル自治区でパレード(新華社/アフロ)

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 中国人民解放軍は7月30日、内モンゴル自治区の軍事基地で、8月1日の建軍90周年を記念する大規模な実弾演習を行った。解放軍は2015年9月にも北京中心部で大規模な軍事パレードを実施しており、2年間に2回も大規模な軍事演習を行うのは極めて異例。党大会を前に、習近平国家主席(軍事委主席)が自身の軍権強化を誇示する狙いがある。

 さらに、今回の軍事演習には、このほかにも重要な意味が潜んでいる。それは北朝鮮とインドへの軍事的なけん制だ。7月下旬には北朝鮮の近海でもミサイル発射訓練があるほか、中国軍は現在、1カ月以上も中印国境付近でインド軍とにらみ合いを続けており、今回の大規模演習は中国の意向に逆らい牙をむいている両国に対して、最悪の場合、掣肘(せいちゅう)を加えるとの習氏の意思表示と受け取れよう。

 習氏は建軍記念日の4日前の7月28日、北京で、「軍最高の栄誉」として新設された「八一勲章」の授章式も主宰し、軍の最高司令官として習氏自ら受章者10人に勲章を渡した。「八一勲章」は中国軍が創設90周年の節目を迎えるに当たって、習氏の肝煎りで創設された栄誉ある勲章だ。初めての授与となる今回は17人の候補者から10人が選ばれた。また同日、中国軍では最高位の上将の任命式も行われ、習氏は韓衛国・中部戦区司令員ら5人に上将昇格の命令状を手渡した。

 習氏就任後の上将任命は今回で6回目で計28人と、上将全体の過半数を占める。5年に1度の中国共産党大会を控え、昇進や論功行賞により軍内で習氏の求心力を高める意図があるとみられる。

 そのような建軍90周年のセレモニーのなかでも、記念日2日前の30日に内モンゴル自治区で行われた大規模な実弾軍事演習は別格で、初めて公開される最新鋭戦闘機の「殲20」などの多くの最新兵器が登場した。また、軍事演習は中国中央テレビ局(CCTV)が実況生中継した。

 実弾軍事演習はライブで放送されるのは極めて異例だが、これは予期せぬ事故が起こることも考えられるからだ。このような危険を冒してまで、あえてCCTVがライブ中継するのは、習近平指導部による国威発揚のほか、圧倒的な軍事力を見せつけることで、北朝鮮とインドを強くけん制する狙いがある。

 北朝鮮の朝鮮中央通信は29日、金正恩朝鮮労働党委員長の立ち会いの下で、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」の2回目の発射実験を28日深夜に行った結果、「成功した」と報じている。

 中国と北朝鮮はそれぞれのメディアを通じて、激しい批判の応酬を繰り返しており、中国としては、圧倒的な軍事力を見せつけることで、金氏の野望に一矢報いたいところだ。

●インドともにらみ合い

 一方、インドと中国も関係が悪化している。その発端は、中印とブータンの3カ国国境に中国軍が越境しており、インド軍も中国と対峙するように軍を集結し、すでに1カ月以上も両軍がにらみ合いの状態になっているからだ。

 このままいけば、偶発的なきっかけで両軍が本格的な戦闘に陥る可能性は高まるばかりで、状況によっては中印が1962年以来、55年ぶりに戦争状態に陥ることも考えられる。

 そのような折も折、中国人民解放軍建軍90周年を記念する大規模な実弾軍事演習が行われただけに、習氏としては、インド軍にも中国軍の強大な戦闘力を見せつけたいところだ。

 ただ、これまでの経緯から北朝鮮・インドともに、簡単には引き下がらないのは間違いない。それだけに、その対処の仕方を間違えると、相手を挑発し、取り返しのつかない結果を招くことも考えられ、それが政治的に、秋の党大会に跳ね返ってくる可能性は十分にある。習氏は慎重な対応を求められよう。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)