米トランプ政権は「国境での課税調整」(国境税)を盛り込まないことを決めた。大統領が訴える「大規模減税」はさらに難しくなるのは確実。輸入企業が猛反対したためで、同政権の目玉政策である「抜本的税制改革」は早くもとん挫した格好だ。写真はニューヨーク市。

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2017年7月末、米トランプ政権は「国境での課税調整」(国境税)を盛り込まないことを決定めた。国境税は法人税減税の財源として検討されていたが、断念に追い込まれたことで、トランプ大統領が訴える「大規模減税」はさらに難しくなるのは確実。同政権が目玉政策に掲げている「抜本的税制改革」は、早くもとん挫した格好だ。

ムニューシン財務長官や共和党下院トップのライアン議長ライアン下院議長と下院歳入委員会のブレイディ委員長、ホワイトハウスのコーン国家経済会議(NEC)委員長らは7月27日の共同声明で、国境調整税には未知の部分があるため、「税制改革を前進させるために、この政策を除外することを決定した」と発表した。国境税について、「多くの不明な点がある」との理由から、法人税の国境税調整を採用しないことを決めたという。

同声明によると、トランプ政権の税制改革は、通常の手続きに沿って、担当委員会で草案が準備され、上下両院で審査されることになった。このため決着までには1年以上かかるとみられ、規模や時期とも当初の米産業界の期待とはほど遠いものになりそうだ。

国境税は、ライアン氏ら下院の共和党指導部が減税の財源として提案。米国内の輸出企業の法人税を軽減する一方、輸入企業の税負担を重くするもので、10年間で1兆ドル(約110兆円)以上の税収につながるとみられていた。だが、輸出企業が賛同する一方、米小売り最大手ウォルマートなど輸入品を扱う企業が猛反発した。実現すれば中国、ドイツ、日本など対米輸出国に影響が出る恐れがあった。

トランプ政権は4月に公表した税制改革案に、「歴史上最大の減税」として、法人税率を35%から15%に引き下げる案などを盛り込んだ。下院の共和党案では20%への引き下げを主張しており、今回の声明では「可能な限り税率を減らす」としながらも、具体的な数字は明記しなかった。法人税率の15%への引き下げは、10年で2兆ドル(約220兆円)の税収減につながるとの試算があり、国境税を断念したことで、減税の規模が小幅になるのは避けられない。

このためレーガン政権時に実施された、特別措置見直し、大幅減税など抜本的税制改革には程遠く、小幅減税にとどまるとの見方が出ている。(八牧浩行)