「お坊さんが本気で考えた お寺できもだめし」。大分県別府市内の本願寺別府別院のこんな看板の写真がツイッターに投稿され、関心を集めている。

この写真は、2017年7月30日夕にアップされ、別府に旅行で訪れたという東京都内の投稿者男性は、お寺でのきもだめしが怖いのか、行く気はないとつぶやいていた。

僧侶らがお化けに仮装し、最後に仏様へ導く

この写真投稿は、3万件以上もリツイートされ、様々な声が寄せられている。

そこで、本願寺別府別院に31日、Jタウンネットが話を聞くと、担当者の佐藤淳心(じゅんしん)さん(41)がその内容や経緯を話してくれた。

きもだめしは、本堂を回る縁側の通路を3つのエリアに分けて30日午後に行った。それは、仏教の三悪道である畜生道、餓鬼道、地獄道だ。畜生道は「愚かさ」、餓鬼道は「むさぼり」、地獄道は「怒り」を表す。

そして、僧侶らがそれぞれのイメージに合うようなお化けに仮装し、参加した人を様々なやり方で驚かす。畜生道は獣(けもの)、餓鬼道はホラー小説の貞子のような姿、地獄道は鬼といった具合にだ。


きもだめしで参加者を驚かす鬼(写真は以下、本願寺別府別院提供)

最後に、本堂正面の極楽浄土に戻ってきたときに、僧侶が合掌の作法などについて教え、仏様にお参りするという段取りになっている。入場料はさい銭だけにした。きもだめしは、「べっぷ火の海まつり」の一環として行われた。

「申し訳なかった」と鬼に懺悔した人も

佐藤淳心さんは、きもだめしを企画した意図について、こう説明する。

「仏壇でお参りする姿も、核家族化で見られなくなりました。また、朝昼晩のご飯では、今の子供たちは合掌しなくなっています。お寺にも普段、若い人たちは行かないですよね。そこで、お寺を身近に感じてもらえるようにと今回の企画を考えました」


きもだめしは、足元をライトで照らすだけで、真っ暗な中だ。僧侶らは、押し入れなどに忍び込んで参加した人を驚かし、怖がらない人には、通り過ぎた後も忍び足で近づいた。ただ、小さい子供らには優しく接したそうだ。

「怖いものは、自分自身の内側にあるんです。自分が死ぬのが怖いので、怖がるんですよ。それを気づかせて、正しい道に導くのが目的なんです。そこから救われるのは、仏様の働きになります」

最後の地獄道では、鬼がソファに偉そうに座って、説教する。「そんなんだから、地獄に落ちる。仏様にお参りして来い!」と。中には、「今までのことは、申し訳なかった」と鬼に懺悔した人もいたそうだ。



きもだめしは、16年に初めて行い、行列ができて参加を制限するほど好評だったため、お化け役を10人から20人に、時間も3時間から6時間に増やした。今回も、整理券を出すほどの人気を集め、10〜20代を中心に参加者が約1000人にも達したという。