車載用リチウムイオン電池正極材料(写真:住友金属工業Web研究開発より)

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 車載用二次電池の需要拡大の勢いが止まらない。二次電池の正極材料は希少金属であり、その確保がボトルネックとなるであろう。

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 住友金属鉱山は28日、二次電池用正極材料であるニッケル酸リチウムの生産設備に追加増強投資することを発表。これは、パナソニックのリチウムイオン二次電池生産拡大への対応であるが、その背景には、トヨタのHV車プリウスの需要、EVの雄ステラの量産があるだろう。そして、欧州でのEVシフトの潮流が加わる。また、住友鉱は13日、リチウムイオン二次電池の再資源化を日本で初めて実用化したとも発表。二次電池の正極材料は、希少金属であり、安定供給への布石であるだけでなく、環境への配慮という冠を得たのであろう。

 住友鉱は、二次電池の雄パナソニックと二次電池用正極材料を共同開発し、安定供給している。またトヨタとも株の持ち合いをしているが、材料の品質や技術に対する信頼がHVに加えEVでの連携を示唆しているのであろうか。

 加えて、ニッケルを鉱山開発、精錬、材料供給に至るまで一貫生産している強みがある。なお、希少金属の取引では、紛争鉱物ではないことを求める風潮があるが、一貫生産をしている安心感は、競争優位なポジショニングである。

●二次電池用正極材料、ニッケル酸リチウムの生産能力

 二次電池用正極材料であるニッケル酸リチウムの生産設備に40億円を追加投資し、2018年6月に完成予定という。これにより、ニッケル酸リチウムの生産能力は、現在建設中の3,550トン/月から4,550トン/月に増加する。

●リチウムイオン二次電池の再資源化を成功、日本初

 住友鉱は、使用済みのリチウムイオン二次電池、またはリチウムイオン二次電池の製造過程で発生する中間物から、含有される銅およびニッケルを回収して、再資源化することに日本で初めて成功した。

 リチウムイオン二次電池は、希少金属の含有量が低く、再資源化の採算性が悪いため、経済的な困難さがあった。住友鉱は、2工場の乾式銅製錬工程と湿式ニッケル製錬工程とを組み合わせた処理フローを確立し、原料中の不純物濃度を的確に管理、国内で唯一銅およびニッケルを回収することに成功したという。銅は電気銅として、ニッケルは硫酸ニッケルとして回収する。そして、硫酸ニッケルから二次電池の正極材料に加工し、日本で初めて廃リチウムイオン二次電池からの再資源化に成功した。世界的な資源枯渇に対応する資源循環の推進に繋がる朗報であろう。

●二次電池材料(住友鉱、ニッケル系正極材)のテクノロジー

 リチウムイオン電池は、正極・電解質・負極からなり、正極と負極間でリチウムイオンが行き来する。受電と放電が可能で、実用化されている電池の中では最もエネルギー密度が高い。つまり、高容量、小型軽量化が可能であり、スマートフォンやEVなど適用範囲が拡大している。欠点は、発火等の危険を伴うが、充放電に対する制御回路で対策する。

 正極材の材料は、ニッケル系、マンガン系、三元系などがあるが、パナソニックと共同開発したニッケル系正極材で、高容量・軽量・高耐久性を実現しているという。加えて、ニッケルを鉱山開発、精錬、材料供給に至るまでを一貫生産している。二次電池は、技術面のみならず、安全面や安定供給を求められる。つまり、需要の不確実性を除けば、代替製品の脅威は緩和されているのであろう。

●補足、大阪府立大学とJST、リチウム硫黄二次電池用正極の開発に成功

 5月24日、大阪府立大学とJSTは、「高容量および長寿命を兼ね備えたリチウム-硫黄二次電池用正極の開発に成功」と発表している。

 リチウムイオン電池を凌駕する次世代型蓄電池の開発である。住友鉱やパナソニックは、代替製品の研究開発動向をも見据えている。その上での既存技術への設備投資は高度な経営判断であろう。