プスッ、ファッファッファッファ。

歌舞伎役者顔の彼は、陸前浜街道といっしょに海沿いの線路を快走。派手さはないけど、ツーッとホームに入ってくると、プスッ、ファッファッファッファと軽く息を整えて、再び次の停車場へ向けてスルスルと、シレッと出ていく。

鋭い加速、やさしいブレーキ、しなやかな曲線通過、ビジネスクラスを想わせる客室空間……新幹線ネットワークが拡充し、東京圏では在来線特急が存在感を失いつつあるいまでも、常磐線特急「ひたち」「ときわ」は、中央線特急「あずさ」「かいじ」と並び、平日も週末も沿線のエース的存在。「彼が登板すればだいじょうぶ」という安定感がある。

E657系、常磐線特急「ひたち」。いわきエリアでの仕事が定期的にあり、いつもこの全車指定席に飛び乗るけど、乗るたびにいろいろ発見し、あらためて「あっぱれあげたいね」(週刊御意見番調)と想わせるシーンに出会う。

きょうの夕方、いわきからの帰り道も、いつもどおり「シハセのロゴナはマジ速い」だった。

駅の売店でおにぎりやサンドイッチとペットボトル茶をSuicaでピッ。えきねっとチケットレスサービスや券売機で指定席を買うときだけちょっとだけ迷う。

海側にするか山側にするか。窓も奥行きがあったほうがいいから、上りだったら2号車の海側15Aかな、と。2号車を選ぶのは、東京駅でいつも使う階段が近いのと、いつも割りと空いているから。それと、モーター車だから。

福島と茨城の県境、勿来を過ぎるあたりで海を眺めながらパソコンを開く。またプスッ、ファッファッファッファとひと息ついて、日立駅。

福島臨海鉄道が分岐する泉、工業団地が続く磯原、製薬・化学・食品工場が並ぶ高萩、そして日立製作所とその関連施設が密集する日立と、いわきを出たE657系は、Yシャツやスーツ姿の男性・女性を迎え入れながら、海岸線を行く。

日立を出たあたりで、座席の5〜6割が埋まる。高萩や勝田では、かつての「スーパーひたち」で活躍した前任、651系が灯りを落として休んでいる。

水戸でさらに席が埋まり、「次は上野、途中駅にはとまりません」と伝え、助走。パンタグラフをたたんだ赤いEF81 95やマニ50、高崎のDE10らに手を振り、長めの車内アナウンスが始まる。

「東海道線直通、特急『ひたち』号、品川行きです。自由席がございませんのでご注意ください。進行方向、一番前が1号車。後ろより最後が10号車です。お手持ちの指定席券の号車番号・座席番号をご確認ください」

常磐線特急「ひたち」は、水戸と上野で乗務員の交代がある。水戸〜上野間は、水戸支社。上野〜品川間は、東京支社という割り振り。

「途中、東京まで車内販売の営業がございます。お近くをとおりましたさいは、ご利用くださいませ。担当は、変わりまして勝田運輸区の○○です。次の上野までご案内します。本日は、常磐線特急「ひたち」ご利用くださいましてまことにありがとうございます。次は上野です」

水戸の街を過ぎ去ると、再び車窓は田んぼの緑、緑。常磐線をオーバークロスする常磐道や北関東自動車道の道も、上下とも順調に流れているよう。いつも思うけど、土浦駅の手前で車窓に映る蓮の畑は何用だろうか、食用? 園芸用?

検索してみると、「土浦市は、生産量日本一を誇るレンコンの産地です。特に霞ヶ浦湖畔には「ハス田」が広がり、花が咲き乱れるさまは、ほかでは見ることのできない景色です」(土浦市)と。「へえーっ」が、またひとつ。

「ってことは、そろそろ咲き始めるころじゃん!」