覗けば深い女のトンネルとは? 第34回「80年代男子が肉食になる必然」

 

最近の男子は草食だとか言いますね。和久井の知り合いの女性が男子大学生に「最近の男子は草食だって聞くけど?」と尋ねたそうです。その学生は「そんなことはないですよ、肉食なヤツは肉食です」と答えたとか。マスコミのいう社会と現実はずいぶん乖離してるんじゃないか、と知人は言っていました。

 

数年前に、評論家の斉藤美奈子さんのイベントでこんな話を聞きました。

「80年代の男子はたいへんだったんですよ。女ができないと青春がないのと同じだったんです。だから女にモテるために必死になってバイトしてお金を貯めて、クルマを買って、女子にプレゼントを買って、サークルに入ってスポーツを極めなければいけなかったんです」

 

当時はまだインターネットなんてないし、スマホはもちろん携帯電話もないんです。自宅でできることといえば本を読むかテレビを見るかくらい。和久井の当時の知り合いには、学生で貧乏で、だけどあまりにヒマだったので電話帳で名字を数えて過ごしたという人がいました。「東京都には鈴木が何人、佐藤が何人だった」なんて、もうどこにも使えない情報を仕入れてました。

 

つまり、彼らが充実した青春を送るためには、とにかく外に出るしかなかったんです。バブルのころなので、女たちは「クルマを持ってない男なんて、男じゃないわよね!」なんて高らかに言ってました。だからひとり暮らしをしている大学生だって頑張ってクルマを持っていたものです。

 

大学に入ったらサークル活動が当たり前、みたいな時代だったから、入ったサークルでモテ男子になるために、必死にスポーツを練習してたようです。ビリヤード、ボーリング、テニス、スキーと、女子のいないところでまず練習して、一緒に行くときは「こうやるんだぜ」くらい言えるようにしておく。テニス未経験の男子が一生懸命影で練習してたの知ってます。

 

当時のデートは男性が奢るのが当たり前(女性がお金を稼ぎにくい時代だったしね)。なかなかエッチもさせてくれない時代だったから、もうあの手この手でお手合わせをお願いしていたわけです。

 

カラオケボックスや漫画喫茶なんてなかったから、男女が気軽に2人っきりになるのもたいへん。ラブホテルはいまほどオシャレじゃなくてケバケバしくて、女子にはなかなか受け入れがたい場所でした。あ、そうか、だから当時の男子はマイカー持ってたのね。クルマで人気のないところに行く必要があったのか。

 

AVビデオもそれほど普及していなかったから、頼りになるのはエロ本だったでしょう。一人暮らしの男子の部屋にみんなで遊びに行くと、「開かずの引き出し」みたいなのがありました。エッチの情報源も雑誌のみ。勉強したかったら買うか借りるかしなくちゃいけません。いまみたいに誰にも知られずネットで勉強なんてできないから。

 

そもそも携帯電話もない時代です。気になる女の子をデートに誘うのに、彼女が実家住まいなら実家に電話をしなくちゃいけませんでした。なので当時の親は「佐藤くんはうちの娘に気があるのね」「この子は挨拶がちゃんとできて感じのいい子ね」なんてちゃんとわかっていたわけです。実際、和久井の母親は、和久井の交友関係をがっちり把握していて「最近、斎藤くんから電話がないけど、彼女でもできたの?」なんて聞いてきました。和久井を追いかけてた男子が心変わりしてほかの女子と付き合い始めたことまで想像がつく世界だったわけですよ。

 

ほかに手段がなかったとはいえ、これだけのハードルを乗り越えた強者のみが、女の子と付き合うことができました。実家の親御さんに挨拶する勇気、いまの大学生にどれくらいあるかしら。

 

いまは、そこまでガツガツしなくても娯楽がいっぱいある時代。恋人がいなくても、1人で十分楽しく過ごせます。

 

女子を誘うのもハードルが低くなりました。少女マンガでもエッチな表現が溢れるようになり、女子が持つ性の情報が豊富になったことも、その流れを加速させているでしょう。

 

こう考えると、いま肉食って言われてる男子たちも、昔でいえばフツー未満かもしれません。良いとか悪いとかではなく、「草食化している」と言われれば、「そうかもね」って思うわけです。