『イッテQ! エブリデイ出川語録2』(日販アイ・ピー・エス)

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 どうしてあのタレントは人気なのか? なぜ、あんなにテレビに出ているのか? その理由を、業界目線でズバッと斬る「ズバッと芸能人」。

 いま、芸能界は「老いドル」で活気づいている。

 元棋士の加藤一二三(77)、梅沢富美男(66)、出川哲朗(53)、TOKIO・城島茂(46)ら、各年代に一人ずついる「おじさんスター」。
 老いを味方につけた彼らの人気に迫ってみた。


■「一人電波少年」出川
 
 まずは出川哲朗。

 メディアでは今、「時代が出川に追いついた」ともてはやされているが、彼が『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)でやっていることは、『進め!電波少年』(同)の企画と、いい意味でまったく変わらない。
『電波少年』は、1992〜98年まで放送されていた、体当たり企画が人気の伝説のバラエティだ。

 例えば「羽生善治に勝ちた〜い!」と、羽生に「王」しか駒を持たせずに対局したり、「バツイチになりた〜い!」と、公募した一般女性と結婚して3日後に離婚したり、「渋谷のチーマーを更生させた〜い!」と渋谷に繰り出したものの逆にボコボコにされるなど、今ではオンエアできないような挑戦を毎週行っていた。

 ちなみに、『イッテQ』の中でハリウッドスターを激写する「パパラッチ出川」という企画があるが、これを『電波』流に言い換えれば、「世界のセレブと2ショットを撮りた〜い!」だ。

 また、「はじめてのおつかいin ニューヨーク」で出川が、拙い英語と旺盛なバイタリティで現地人に道を尋ねる姿も、『電波』ではおなじみだった。
 そんな『電波』でかつて、「ロサンゼルスのコールガール(売春婦)を更生させた〜い!」という企画があった。

 ロスの夜の街に一人繰り出した出川。ようやく、あるコールガールをカタコトでモーテルに誘い、仕事を辞めるよう説得しようとしたのだが、そんな出川を怪しいと思ったのか、女性が部屋から電話。

 しばらくすると、彼女のバックについていると思われる組織の男数人が部屋を急襲! 出川を拉致するという“事件”が発生した。
 
 数時間後、モーテルの前に、顔を布のようなものでぐるぐる巻きにされた出川が投げ捨てられていた。

 何かあったときのために出川の腰に装着していたカセットテープを再生してみると、男たちに「お前は警察か?」と問いただされたり、「お前を殺す!」などと恫喝されても、言われている意味が理解できず、すべて「イエス」と答えている出川の声が録音されていた。

 そんな出川も、加齢に伴い、 今まで耳ざわりだった甲高い声が若干低くなった。また、滑舌がより悪くなって、ポンコツぶりに拍車がかかった。青年期のシュッとした面長の顔から、丸みを帯びた「小太りじいさん」顔に。

 ギラギラした「男性性」丸出しの風貌がうまい具合に抜け切り、いつしか女子高生から「かわいいい」とまで言われるようになった。

 もちろん、度重なるケガや病気、そして加齢で体にガタがきていることも、逆に「応援したくなる」ポイントに。

 つまり出川は、やっていることは変わらないのに、「おじさん」という通行手形を得たことで、いま好感をもって受け入れられているというわけだ。
 

■梅沢富美男の「棚上げ」感

 続いては梅沢富美男だ。

 ひな壇の最前列、司会者の近くに座る「ご意見番」としてバラエティ番組の会議で挙がる名前といえば、これまではもっぱら、高橋英樹か中尾彬だった。

 しかしここ最近、梅沢の名が急伸してきた。

 人気の理由は、その「浮気過去」と「妻に頭が上がらない感じ」にある。
 
 これは彼がよく自分で話しているが、浮気相手と沖縄へ行ったものの台風に遭い、空港で待機していた姿がテレビ中継にバッチリ映り込み、妻でフィトセラピスト(植物療法士) の池田明子さんにバレたこともあったという。
 
 最近も、その妻の出版記念イベントに同席するなど、妻にうまく操縦されているようなところがある。

 口ではエラそうなことを言っていても、その「脇の甘さ」「すき」が、視聴者にツッコミどころ、親近感を与えてくれる。

 かつて有吉弘行が、「自分のことは棚に上げていろいろ言うのが毒舌タレント」と語っていたが、まさにその典型が梅沢なのである。


■老いていく過程を売りにできる城島茂
 
 続いて、TOKIOのリーダー城島茂。

「最近、朝起きたら肋骨痛い。横になって寝ているだけなのに」(フジテレビ系『TOKIOカケル』2017年5月24日』)

「40代は7〜8割が髪に不安を抱えているから。私もしっかり対策しとかんとね」(日本テレビ系『ザ!鉄腕!DASH!!』2016年10月23日)

 自虐ともとれる、数々の「老い」発言。

 またその『DASH』では、「城島は再びバック転できるか?」(2012年5月13日放送)という、ジャニーズタレントにとって、屈辱的な企画にも挑戦している。
 
 こうして、老いを売りにできるジャニーズも、彼をおいてほかにいないだろう。


■ゆるキャラ・ひふみん

 最後は“ひふみん”こと加藤一二三九段だ。

 彼の特徴のひとつはやはり、前歯がないことだろう。

 その理由は、かつて前歯に義歯を入れたものの、頭の働きがストップし、将棋の戦績が振るわなくなってしまったためだという。

 そしていまや、このクシャクシャの「老人顔」と「フガフガ」しゃべりが、視聴者に安心感を与えている。

 ちなみに、歯があったころの彼の顔は、精悍そのものである。

 今年もアメリカから出稼ぎに来た野沢直子が、彼を初めて見て「何!? この一人ジブリ」と驚いたというが、確かに「ゆるキャラ」的な存在である。

 余談だが、時代を作った「歯抜けスター」は、これまでにもいる。

 伝説の番組『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ系)で発掘された素人で、吉田十三(とうぞう)さんという方がいた。福島・郡山出身。当時83歳。「エンペラー吉田」というニックネームで大人気になる。

「偉く、なくとも、正しく生きる!」が口癖。東北訛りで、しゃべるたびに、入れ歯がよく外れるおじいちゃんだった。

 番組では、ジェットコースターに乗ったり、肝試しに参加したり、起震車(地震体験車)に揺られていた。今、こんなことをやらせたら、「老人虐待」と訴えられ、BPOに通報されてしまうだろう。

 高田純次が、吉田さんが寝ている間に入れ歯をこっそり外し、そのシワシワのおでこにそっと乗せたシーンは、バラエティ史に残る名場面である。

 また、横山昭二弁護士もいた。

 彼は、オウム真理教教祖・麻原彰晃(松本智津夫)の最初の私選弁護人となった人だ。

 麻原被告の接見に行くときにマスコミに揉みくちゃにされ、「やめて〜!」などと叫んでいたシーンが話題となり、『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)などのバラエティに出演していたが、彼もまた前歯がなかった。

 松本人志に見いだされ、映画『さや侍』に主演した野見隆明さんも歯がなかった。
 
 つまり、歯のないお方はバラエティ的には最強なのである。

 その伝統は今も、『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)や『有吉ジャポン』(TBS系)などにも受け継がれている。

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 いまや4人に1人が65歳以上という日本。2060年には国民の約2.5人に1人が65歳以上の高齢者という社会が到来すると推計されている。

 今後はこうした、「老いていく」ことをセールスポイントにするタレントが増えていくに違いない。新たな「老いドル」の誕生に期待したい。
(文=都築雄一郎)