焼け太りの赤い鶴

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 今や、“V字回復”は日本航空(JAL)の代名詞になりつつある。一度、破綻した“赤い鶴”は5年前に再上場を果たし、業績も順調に推移しているからだ。舵取りを担うのは初のパイロット出身社長で、就任5年の植木義晴氏(64)。だが、株主総会で提案した“ある議案”が波紋を呼んでいるのだという。

 JALの2017年3月期決算を見ると、売上高は1兆2889億円で、本業の儲けを表す営業利益は1703億円だった。全国紙の経済部デスクによれば、

「対前年比で売上高はマイナス3・6%、営業利益はマイナス18・6%の減収減益ですが、7年前に経営破綻したことを考えれば及第点。ジャニーズの嵐やテニスの錦織圭選手をCMに起用したり、国内線初のWi-Fi完全無料化を実施するなど攻めの姿勢が見える。ですが、“あの議案”を提案した真意は測りかねます」

焼け太りの赤い鶴

 あの議案とは、JALが6月22日に開催した株主総会で提案した“役員報酬の増額”。目下、JALは取締役12人の報酬額の上限を4億5000万円と定めているが、それを2・5億円引き上げるほか、自社株10万株を報酬として加えたいと株主に承認を求めたのだ。結果、賛成多数で可決された。株主の男性はこう理解を示す。

「株主総会の質疑応答では、質問に立った株主12人のうち4人が役員報酬の増額に触れていました。会社の説明は理解し難かったが、今後の業績も期待できるので私は賛成。1株につき94円の配当ですが、もう少し上げてくれると嬉しいですがね」

 毎年、結果を求められる経営者が、成功を収めた見返りに“大きな果実”を手にするのは、それほど悪いとはいえない。ただし、JALには特殊な事情があったのだ。

4300億円の減免

「役員報酬の増額は、問題があると思います」

 こう指摘するのは、経済誌の航空業界担当記者だ。

「7年前に破綻した時にJAL株は紙屑と化し、民間金融機関は社債を含めて約5216億円の債権放棄を強いられ、1万人以上の希望退職者以外に165人のパイロットや客室乗務員などが解雇されました。業績が回復したのなら、解雇された元社員を再雇用すべきだと思います」

 また、欧州系航空会社の日本法人の幹部も、

「破綻後のJALは、約3500億円の公的資金が注入されて“真っ白な会社”に生まれ変わった。有利子負債を見ると、ライバルのANAが約7298億円なのに対して、JALは1160億円に過ぎない。まるで“焼け太り”のようです」

 さらに、問題なのが法人税の減免だという。

「会社更生法を適用された会社は、過去の赤字を持越して法人税を減額できる特例措置があります。JALもこの恩恵に与り、来年度までの9年間で4300億円以上の法人税を免除されるのです。本来、支払わなければならない法人税の分をCMや、ディズニーリゾートなどのスポンサー料に回している。アンフェアといわざるを得ません」(同)

 挙句、役員報酬を増額するというのだから、どういう神経なのか。JALの広報部に話を聞くと、

「ご指摘の通り、法人税減免期間中ではございますが、今年度から新中期経営計画をスタートさせることから、それに合わせるタイミングが適当と判断しました」

 株主総会当日、最寄駅から会場への道には“不当解雇撤回”のチラシをまく、元社員たちの姿があった。鉄面皮の植木社長は、彼らと対峙しても“適当な判断”だと胸を張っていえるのか。

「週刊新潮」2017年7月27日号 掲載