上白石萌音の歌声をチェック

女優・上白石萌音が愛してやまない“歌”


上白石萌音というと、映画『舞妓はレディ』(2014年)、『ちはやふる』(2016年)、そして『君の名は。』(2016年)など数々の人気映画に出演している、今をときめく人気女優──たしかにそういうパブリックイメージなのだが、彼女が演技と同じくらい力を入れ、愛してやまないのが“歌”だ。


去年9月、『君の名は。』の舞台挨拶のとき、出演者とお客さんにサプライズで、同作の音楽を手がけたRADWIMPSが登場し、ボーカルの野田洋次郎と上白石が即興ライブを行うことになり、彼女は野田のアコースティックギターに乗せ「なんでもないや」を歌い切った。


歌い終わった上白石は「この18年間のなかでいちばん幸せでした」と大感激した様子で語っていたが、あのシーンを観て、度胸がすわっているなと思ったと同時に、本当に歌が好きなんだなと改めて感じた。


2016年10月にカバーアルバム『chouchou』でCDデビューを果たしたが、このミニアルバムも秀逸で「366日」「Woman“Wの悲劇”より」など、名曲だが相当テクニックを要する難曲を見事に歌い切り、表現している。



素晴らしき参加アーティストと組んでオリジナルアルバムをリリース


そしてオリジナルアルバム『and…』(7月12日リリース)である。「どうせ女優のアルバム……」というような見方はやめたほうがいい。良曲揃い、アレンジの素晴らしさ、参加ミュージシャンのすごさなど、このアルバムをクオリティの高いものに仕上げているポイントはいろいろあるが、何よりも彼女の一曲一曲との向き合い方、その姿勢が評価されるべきだ。


ここまでの完成度の高い一枚を作るのは、決して片手間では無理だ。秦 基博、藤原さくら、名嘉俊(HY)、世武裕子、内澤崇仁(androp)という、人気アーティストが手がけた素晴らしい、でもひと筋縄ではいかない楽曲を、それぞれのアーティストのクセのある、独特の世界観を薄い膜のように残しながらも、完全に上白石萌音の歌にしている。


「それぞれの曲で声を変えたいというか、それぞれで歌っている一人称を違う人にしたいというのは自分のなかで決めていて。それぞれの曲の主人公が着ている服から、身長や性格も自分のなかで構築して、そうしないと歌えない曲ばっかりだったので、役作りをするような姿勢で臨みました。曲自体が、自分を貫いてしまったら浮いてしまう感じなんです。だから演技と歌が融合していると感じたレコーディングの日々で、面白かったです」と語っている。


 


自ら作詞も。アーティストとしての才能の片鱗も見せる


8曲中3曲で作詞を手がけ、自分の言葉ではあるが、それぞれの曲が、まったく質感も温度感も違う詞で、才能を見せてくれている。なかでも注目は「Sunny」だ。「小さい頃メキシコに住んでいたことがあって、根がラテン気質なので『Sunny』にはそれが出ています(笑)。今まで切ない、繊細な思いを歌わせていただいて、そういう曲も大好きなのですが、初めてレコーディングでニコニコしながら歌った曲です」と、一見おとなしいイメージだが、根はラテン系と自ら明かし、それが同曲には100%映し出されている。


個人的にはアルバムを締めくくる、androp内澤崇仁が提供した「ストーリーボード」は、今年の聴いた様々な曲のなかでも5本の指に入る名曲だと感じている。内澤が紡ぐ切ないメロディと歌詞、上白石の切ない歌声とが相まって、切なさが溢れて、胸に迫るものがある。素晴らしい表現力だ。


「これまで関わって来た方と繋がりから生まれたアルバム」という意味を込め、彼女が『and…』というタイトルを付けた。これだけ才能あるシンガーには、クリエイターは楽曲を提供し、歌ってほしいと思うはずだ。


これからもいろいろなクリエイターと繋がり、その度に上白石は自分のなかにある新しい引き出しを発見し、作品をリリースする度に我々は驚かされそうで、まさに末恐ろしいシンガーだ──そう感じさせてくれる1stアルバムだ。


TEXT BY 田中久勝



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