『妖怪アパートの幽雅な日常』を、ご存知でしょうか。2004年に第51回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞し、シリーズの累計発行部数は500万部という大ヒット作品です。コミックス版は、現在「月刊少年シリウス」で大人気連載中。そしてとうとうアニメ化がされました。2017年7月から現在放送中のこの作品。いったいその魅力はどこにあるのでしょう?

 

『妖怪アパートの幽雅な日常』は、こんなお話です。

主人公の稲葉夕士(いなばゆうし)は早くに両親を亡くし、親戚の家に引き取られます。突然の居候に対して従姉妹は彼を邪魔者扱い。「高校に入ったら家を出るんだ」と夕士は寮のある高校を受験し、見事合格します。ようやくこの息苦しい家から出られる! と思っていたのに、なんとその寮が火事で全焼。途方に暮れていたところ、「寿荘」という賄い付きの格安アパートを紹介されます。「何かいわくがあるのかな……?」と思っていましたが、その通り。なんと寿荘は、人間だけでなく妖怪や幽霊までもが同居する「妖怪アパート」だったのです。

 

と、波瀾万丈な展開から始まる「妖アパ」ですが、アニメを手がける監督の橋本みつおさんに魅力を教えていただきました。

インタビューに和やかに対応してくれた橋本みつお監督。なかなか聞けない製作秘話も。聞き手は少女漫画マイスターの和久井香菜子さん

 

――公式サイトの監督のメッセージに「脱ぎかけ男子に目覚めた」とありましたが、どういうことでしょう?

 

橋本 最近は、女性向けのちょっとエッチな漫画や映像がたくさんありますが「脱ぎかけ男子」より「脱いじゃった男子」が多い印象です。でも僕は全部脱いじゃったらセクシーではないと思うんですよ。

Profile:橋本みつお 東映動画(現:東映アニメーション)を経て現在フリー。監督作品として劇場版『ドラゴンボールZ』、『頭文字D 5th Stage』、『頭文字D Final Stage』 など、他にもホビー系アニメを中心に多数の監督作品がある。

 

――わかります。シャツの袖口から見える尺骨とか、襟元から覗く鎖骨に萌えます! 別に大変なところは見えなくていい。

 

橋本 試写会のときにこの話をしたら、共感してくださる女性が多くて驚きました。男性タレントの写真集なども、僕のイメージだと、裸よりはワイシャツだけ着ていたり、家でのラフな格好が多いですよね。それも「脱ぎかけ」のひとつの形かなと思っています。

 

――具体的にはどんなシーンで脱ぎかけ男子のシーンがありますか?

 

橋本 第1話で、夕士と親友の長谷が卒業式のあと、土手で殴り合いをするシーンがあります。今までだったら僕は、アクションシーンでパッとかっこ良く脱がせたと思うんです。でも長谷はお家柄の良い男子です。乱暴に脱ぎ捨てたりはしないだろうと思ったんですよ。そのときに片袖を脱いだ姿がセクシーなんじゃないか? と発見したんです。そこからそっと脱ぐ「脱ぎかけ男子」にしました。

第1話で登場する主人公・稲葉夕士(いなば ゆうし)の親友、長谷泉貴(はせ みずき)の“脱ぎかけ”シーン。橋本みつお監督がこだわったアニメ版オリジナルの隠れた見せ場

 

――アニメはかなり漫画のシーンを忠実に再現しているなと思いましたが、この脱ぎかけシーンは、漫画では全然脱ぎかけじゃないんですよね。普通に上着を腕に掛けていました。

 

橋本 そうなんです。たたんでそっと置こうとしたら、夕士がいきなり殴りかかってきたので、闘牛士のようにバッと上着を相手に被せるという展開に変更しました。

 

――女性が見て楽しいシーンは「脱ぎかけ男子」の他になにかありますか?

 

橋本 アパートの地下に温泉があるという設定なんですが、その入浴シーンはよく出てきます。でも女性は裸に萌えるというよりは、長髪男子が髪を上げていたり、結んでいた髪をほどいたり、ギャップに萌える感じでしょうか。

 

――そうですね。

 

橋本 龍さんという長髪のキャラクターがいまして、普段は髪を束ねているんです。でもたまに髪を解くシーンがあって。普段は凛々しいのに少し可愛くなる感じが、裸よりも魅せポイントかもしれないです。


主人公の他にも魅力的な登場人物が多い本作。中でも女性に人気が出そうなのが、龍さんという長髪のキャラクター。普段は髪を束ねて凛々しいのに、髪を解くシーンがあって少し可愛くなる感じが見逃せない

 

――それは面白そう! ところで「妖怪アパート」の魅力は何だと思いますか?

 

橋本 みんなそれぞれ色々な繋がりができて、人と人との繋がりが連鎖して、色々な物語に広がっていくところです。この作品では、この世の人ではない人たちがたくさん出てくるんです。虐待していた母親と子供の話や、何千年も生きている人の話など、その一人ひとりの裏話がとても深い。

妖怪や幽霊が登場するため重い話題もあるなか、随所に織り込まれる宴会シーンが画面を明るく盛り上げてくれる。酸いも甘いもあるのは、この世も、あの世も同じというメッセージなのかも

 

――登場人物の中でお気に入りのキャラはいますか?

 

橋本 るり子さんです。手だけの幽霊で、いつも賄いを作ってくれるキャラクターです。彼女はストーカーの手によってバラバラにされてしまい、手だけの幽霊になったという結構どぎつい内容なのですが、それでもあの妖怪アパートで幸せに暮らしています。ほかの妖怪たちもみんなそれぞれ、様々な思いを抱えつつ生活しているんです。彼らの抱える問題がDVやストーカーなど、現代の社会を象徴するような事柄だという点も作品に深みを与えています。原作は15年ほど前のものなのですが、古さを感じないですね。そのなかで夕士が悩んでどう生きていくかや、周りのキャラクターの豊かさが魅力なのではないでしょうか。

高校生にして除霊師の久賀秋音(くがあかね)は姿に反して大のつく食いしん坊。人間と妖怪がアパートの食堂で垣根なく食事を共にするシーンとそこで交わされる会話も“妖アパ”の見どころのひとつ

 

――他人との同居生活に一種の憧れがあるのでしょうか、最近は少女漫画でも、共同生活の話はとても多いんです。

 

橋本 シェアハウスが流行った時期がありましたが、「逃げるは恥だが役に立つ」「カルテット」など、同居生活を描いたドラマも多くなりましたね。シェアハウスではラウンジに集まってみんなでワイワイやっていますが、妖怪アパートでも居間で宴会したり食事したり。その様子はちょっとシェアハウスに似ているかもしれませんね。

 

――最後に、視聴者と読者のみなさまにメッセージをお願いします。

 

橋本 いろいろと言いましたが、妖怪アパートに住んだことによって、夕士は本当にたくさんの人と関わって、助言をもらって成長していきます。今まで散々「脱ぎかけ男子」など言ってきましたが、一番の魅力で伝えたいことは「言葉」だと思っています。彼らの発する台詞はひとつひとつとても深いです。注目して見ていただければと思います。

 

ひとりで脱ぎかけ男子に萌えてもよし、ご家族で楽しんでもよし。暑い夏に清涼感を求めてもよし? 楽しみ方いろいろの「妖アパ」。アニメ『妖怪アパートの幽雅な日常』はTOKYO MX、読売テレビ、BS11でオンエア中。また見逃した人はU-NEXTなど25の動画サービスでオンデマンド視聴できますよ!

 

企画・構成=プロデュース・オン・デマンド 取材・文=和久井香菜子 文章構成=咲坂美緒 撮影=三木匡宏

 

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