「つなぐ、つなぐ、つなぐ。FC岐阜が面白い」

写真拡大 (全4枚)

FC岐阜が面白い。

大木武監督が新たに指揮を執る今シーズン。とにかくパスをつなぎまくる異色のスタイルが注目を集めている。3バックをベースとした堅実な戦術を採用するチームが多いJ2の中で、大胆なスタイル転換を果たした岐阜。

今回のコラムでは、その戦いぶりにフォーカスを当ててみたい。

■基本形はアンカーを置いた4-3-3

上図が今季の基本システムだ。

最後尾を守るのはビクトル。センターバックは直近の試合で定位置を掴んだ阿部正紀を柱に田森大己、ヘニキ、青木翼が起用されている。サイドバックは右に野澤英之、左は福村貴幸。

アンカーは主将の庄司悦大が不動で、インサイドハーフはシシーニョ、永島悠史、小野悠斗が争う。

ウイングは右が大本祐槻、左が古橋亨梧。センターフォワードは難波宏明を軸にシシーニョ、風間宏矢のゼロトップもしくは、“9番“のクリスチャン、瀧谷亮を据えている。

■コンセプトを体現するキーマンたち

冒頭でも述べた通り、今季の岐阜はとにかくパスをつなぐ。

攻撃時は庄司が両CBの間に入り、3バックを形成。両ウイングがタッチラインいっぱいに幅を取り、生じた中盤のスペースはインサイドハーフとサイドバックが使っていく。3-4-3の陣形でパスをつなぎながら崩しにかかるのだ。

昨季の岐阜と言えば、レオ・ミネイロを中心としたカウンターアタックが代名詞だった。わずかな間で大胆なスタイル転換を果たすのは簡単ではない。当然ながら、指揮官の理想をピッチ上で表現するキーマンが不可欠だ。大木イズムの体現者を紹介してみたい。

まずは、チームの核となる2人のスペイン人、ビクトルとシシーニョ。

不動の守護神として君臨する前者は、試合の流れを変えるビッグセーブが持ち味。スペイン人らしくキックの技術も巧みで、後方からビルドアップするチームにピッタリのゴールキーパーだ。

流石の技術で魅せる後者は、かつてU-17世界選手権で準優勝に輝いた実績を持つ実力者。

ミッドフィールドを精力的に動き回り、正確なパスでリズムを作り出す。以前から日本に興味があり、“アビスパ福岡のキング”城後寿の大ファンとしても知られている。ポゼッションサッカーに欠かせないコンダクターだ。

また、サイドを疾走する2人の大卒ルーキーにも注目だ。

中央大出身の古橋は、思い切りの良いドリブルと冷静なフィニッシュを披露。24試合で5ゴール・7アシスト(アシスト数はリーグ2位)の成績は立派の一言である。

一方、阪南大出身の大本は、右ウイング・右サイドバックどちらのポジションでもハイレベルに機能。精力的なアップダウンで右サイドを制圧する背番号17は、“和製コルシア(今季からセビージャに移籍したフランス代表)”と呼ぶにふさわしい。

そして、チームの中心となっているのが、キャプテンの庄司。

昨季はレノファ山口でパスサッカーを支え、今季は岐阜で不動のアンカーとして活躍する。シシーニョがチームの頭脳なら、庄司はチームの心臓だ。

気の利いたポジショニングが魅力の背番号10は絶対的な存在で、替えがきかない。次節のザスパクサツ群馬戦は出場停止となるだけに、代わりに誰が起用されるか注目が集まる。

■スタイルの継続を求む

24試合を終了し、6勝8分10敗の18位。J1含め日本屈指のパスワークを誇りながら、順位には結びつかないジレンマが垣間見える。

とはいえ、その独自色は称賛に値する。例えば、最終ラインの構成。センターバックの田森、ヘニキ、青木は元々ボランチの選手だ。右サイドバックの野澤も同様にボランチ出身で、かつて“トーキョーのグアルディオラ”と形容された技巧派である。

もっとも、近年ではボランチの選手をサイドバックで起用する例が増えている。山本真希、茨田陽生やセバスティアン・ルディ、ヨシュア・キミッヒといったプレーヤーが新境地を開拓しており、伸び悩みの感があった野澤にとっては渡りに船だったかもしれない。

上記のコンバートは、守備を考えればマイナスだ。本職のセンターバックやサイドバックを最終ラインに配した方が安定するに違いない。田森、野澤らの起用は、安定感には目をつむり、何よりもビルドアップを重視している表れだ。そして、野澤のポテンシャルを引き出すという意味でも、興味深い采配である。

そうは言っても、守備の安定感のなさが上位進出の足かせになっている。38失点はリーグワースト4位タイの成績で、リーグ9位の得点力(33得点)が順位に結びついていない最大の要因となっている。一瞬のスキが失点につながるケースが散見されるが、今後も攻撃マインドを貫いて欲しいと切に願う。

ボール支配率の高さをシュートひいてはゴールにつなげるのはもちろん、ボランチ出身のCBが多いだけに3バックの採用で守備を改善するのもアリだ。

いずれにせよ、「攻撃は最大の防御」という理想を体現し、サッカーフリークを楽しませて欲しい。J1以上にリアリズムが重視されるJ2では、その理想を追求するだけでも大きな価値があるのだから。

2017/07/23 written by ロッシ

筆者名:ロッシ

プロフィール: 1992年生まれ。1998年フランスW杯がきっかけでサッカーの虜となる。筆者の性格は堅実で真面目なため、ハビエル・サネッティ、長谷部誠、ダニエレ・ボネーラ、アルバロ・アルベロア、マッティア・カッサーニにシンパシーを感じている。ご意見・ご感想などありましたら、ツイッターアカウントまでお寄せください。

ツイッター: @antelerossi21