『海辺の生と死』の満島ひかりと越川道夫監督

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「死の棘」の小説家・島尾敏雄と、共に小説家になる島尾ミホの出会いと恋をモチーフにした恋愛映画『海辺の生と死』(公開中)で、はかない恋のきらめきを体現した満島ひかりと永山絢斗。奄美群島・加計呂麻島を舞台に、激しいロマンスを撮り上げたのは、『アレノ』(15)以来、2作目の監督を務める越川道夫だ。主演の満島と越川監督に、エモーショナルな長回しのシーンについての撮影秘話を聞いた。

【写真を見る】満島ひかりと永山絢斗の共演シーンはこちら/[c]2017島尾ミホ/島尾敏雄/株式会社ユマニテ

『海辺の生と死』は、太平洋戦争末期の奄美群島・加計呂麻島で出会い、激しく求め合った国民学校の代用教員・大平トエと、ニジヌラに駐屯する隊を率いる朔(さく)中尉のロマンス。満島は島尾ミホをモデルとした主人公の大平トエを、永山はトエの恋人となる島尾敏雄をモデルとした朔中尉を演じた。

越川監督は食事のシーンからラブシーンに至るまで、トエと朔のやりとりを、1カットの長回しを多用して撮り上げていった。そのかいあって、ふたりのパッションは全く途切れることがなく、観客はぐいぐいと画面に引き込まれていく。

満島は永山との共演について「ウソがつけないふたりというまれな組み合わせでした」と述懐。「だから、撮影の途中でも止まっちゃうことが何度かありました。言葉にするのは難しいですが、呼吸が続かなくなると止まっちゃうんです。貫き通そうとして演じ進めずに、心が折れたら折れたままの顔をした状態になってしまう。お互いにそうでした」。

越川監督も「ある長いワンカットのシーンは、7テイク目がOKカットになっていますが、6テイク目まではシーンの終りまで通ってないんです。どちらかが続けられなくなっていたから」と言っていたが、あれだけの長回しを何度も撮り続けたこと自体に驚かされる。

越川監督は「芝居にウソがつけないふたり」だと補足する。「この映画のすべてのシーンをそのように演じていたのだと思っています。でも、もっとお芝居としてウソをついた方がいいんじゃないの?と、満島さんと迷う時もありました。でも、どちらかが『そうではない』と、『過剰にやらなくていい、演技で必要以上に説明する必要はない』と言って、そういうすり合わせはみんなでやっていきました」。

現場での満島は、越川監督と互いに共通言語を交わしながら、密にやりとりをして撮影をしていったそうだ。「監督とはすごく話しましたよね。『監督とふたりで日本語じゃないような会話でずっとやりとりをしていたから、置いていかれるんじゃないかと思った。でも、その感じが面白かった』とも言われていました(笑)。スタッフさんも口をぽかんと空けて待っていてくれることもありました」。

越川監督も笑いながら「僕と満島さんだけが『それだ!』と喜んでいることが何度もありました。でも、最終的にはみんながそれをわかってくれていたから、あの画が撮れているんです。本当に楽しい現場でした」とうれしそうに振り返る。

また、島のロケーションもトエ役に息吹を吹き込んだと満島は言う。「砂浜のジャリジャリする音や波の音や鳥の声を聞いたり、蝶が飛んでいるのを見たりして、現実と非現実の境があいまいになりそうな感じでした。時にあいまいになりすぎて、ちょっと不思議な瞬間もありました」。

越川監督も「それは島で撮っているからでしょう。他の土地で撮っていればなかなか見えてこない場所の力みたいなものを、島ではとても感じてしまうんです。映画の都合でそれを無視するわけにはいかない。満島さんは島育ちですから、より一層それを感じたと思うし、僕たちもそういう島を裏切るわけにはいかないと思いました」と、ロケ地が貢献した大きな役割についてもかみしめる。

満島も「島の力はすごいと感じました。食べ物にしてもそうで、いちばん知っている食べ物だから、体が喜ぶのがわかるんです。私にとっては、世界一眠れる場所でもあります。そういうのも含めて、みんなよりちょっとラッキーでした。ホームだから」。

照りつける太陽の下、緑は生い茂り、海は荒々しいうねりを見せる加計呂麻島。その大自然を背景に満島ひかりがつむぎ出す愛の奇跡をじっくりと堪能していただきたい。【取材・文/山崎伸子】