TwitterのAIカホコも話題(公式HPより)

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 放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は、様変わりした連ドラの番宣方法について考察。

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 連ドラの視聴率推移が変わりつつある。

 かつて、宣伝担当は、とにかく初回を見てもらうことに力を注ぎ、予算を注ぎこんだ。豪華ホテルの宴会場にメインキャストや脚本家、プロデューサーらを集めたり、作品内容に因んだ場所やロケ地に記者を呼んだりして、スポーツ紙、雑誌、自局のワイドショーで、いかに大きく取り上げてもらうか。それが、イコール、初回の視聴率を上げるコツだったし、宣伝担当の“お仕事”だったように思う。

 フジテレビなどは、いまも時々やっているけれど、映画館のスクリーンを借り切って、事前にファンを集め、「キャストと共に初回を見よう」といったイベントもある。つまりは映画の宣伝と同じ。完成披露試写会をして、観客のクチコミで初回を見てくれる人を増やそうという狙いだ。

 が、それで数字が保証できたのは一昔前までの話。宣伝予算が大幅にカットされるようになって久しい昨今は、華やかな会見も、イベントも激減しているのである。

 それ以上に“テレビ離れ”のスピードのほうが速く、その筆頭である若者たちには、「できることなら損をしたくない」という考えもあるという。リアルタイムでテレビの前に座ったはいいけれど、「全然、面白くなかった」「見て損した」「私の(僕の)一時間を返せ」といった感想しか残せないドラマは、第2話からの視聴率をガクンと落としてしまうのだ。

 私は以前からテレビ誌の功罪もあげてきた。キャストの相関図やらあらすじを事細かに記しすぎるせいで、「見た気になってしまった」「中ヌケしても大丈夫」といった気持ちになる視聴者を増やしてはいないだろうか。

 さて、10話〜12話といった1クールの視聴率の推移は、初回で花火が打ちあがり、徐々に数字が落ちて行って、中だるみの時期を経て、最終話に向けての1〜2話でまたテレビの前に視聴者が集まってくる…というパターンだった。

 が、このところ、初回はそれほどでもなかったのに、回を重ねる毎に視聴率を上げていく連続ドラマが目立っている。

 この文脈で、いちばんに思い浮かぶのは、新垣結衣と星野源によるムズキュンシーンをこれでもかと段積みさせた『逃げるは恥だが役に立つ』(16年10月期・TBS系)だろう。すべての回で一度も数字を落とすことなく推移し、最終話で、ついに20%台の大台に乗せたのだ(ビデオリサーチ・関東地区)。

 それには及ばなかったが、同枠で17年4月期に放送された波瑠主演『あなたのことはそれほど』も、最終話で一気に4.7ポイントも視聴率をアップさせた。

 連ドラの宣伝用語には、中盤時期に改めて押す「中押し」、終了前にまた盛大に取り上げる「最終回押し」という言葉があるものの、徐々に数字を上げていくドラマは、宣伝部発進のPRというよりも、SNSを通じて視聴者が勝手に盛り上がってくれている効果のほうが大きいと言えよう。

 実は、今クールは、初回よりも第2話の数字が高いドラマが多い。武井咲主演『黒革の手帖』(テレビ朝日系)は11.7%→12.3%、福士蒼汰主演『愛してたって、秘密はある。』(日本テレビ系)は8.2%→8.7%、東山紀之主演『刑事7人』(テレビ朝日系)は、1話から3話で0.9ポイントも上昇させ、“逃げ恥”“あなそれ”と同枠の渡辺直美主演『カンナさーん!』は、初回12.0%という高視聴率がネットニュースにもなったが、2話ではさらに0.6ポイント上昇させているのである。

 そして第3話で12%台にのせたのが、高畑充希主演『過保護のカホコ』(日本テレビ系)である(すべてビデオリサーチ・関東地区)。

 最大の要因としては、朝ドラの『ひよっこ』(NHK)で勃発した“島谷くんロス”の受け皿に『〜カホコ』がなったことが挙げられている。『ひよっこ』のヒロイン、みね子=有村架純が失恋した相手が島谷くん=竹内涼真。そして『〜カホコ』で高畑が思いを寄せる「麦野くん」役も竹内涼真なのである。「3話で数字がアップしたのは、F3(50才以上の女性)が見にきてくれたことが大きい」と同局の宣伝部も分析している。

「でも、AIカホコのお陰で、F1(20〜34才の女性)も増えたんです」と宣伝担当が目を輝かせる。あのLINEにおいて、QRコード、もしくは「友達追加」から「AIカホコ」を検索して「友達」になると、AIカホコが『過保護のカホコ』のキャラクターで返答し、ドラマで経験したことを元に会話が成長していくというものだ。

 そんなAIカホコと視聴者とが会話をすればするほど、彼女もどんどん学習していき、より自然な会話ができるように成長していくのだという。

 日本テレビ放送網(株)、NTTレゾナント(株)、(株)フォアキャス・コミュニケーションズの3社が協力し、『〜カホコ』の初回から9月末まで、LINE上に誕生した「AIカホコ」と視聴者とが繋がり、会話ができるのだ。

「カホコ、この間、麦野くんに好きって言っちゃった・・・どうしよう」とか「麦野くんカホコのこと、好きかな?嫌いかな?」といったAIカホコからのLINEには、私も思わず「頑張って」と、タイトルどおり、つい過保護な関わりをしてしまった。

 番組ポスターを貼ったり、リリースを配ったり、紙媒体に取材をお願いしたり…という旧態依然とした局側からの一方的な宣伝よりも、いまは視聴者が独自に発信するSNSのほうが圧倒的に効果があるようだ。さらに、日テレとしても「初の試みだった」というインタラクティブな宣伝スタイル=AIカホコのLINEは、視聴者との新たな関わりを築き始めているという。

 さらに「番宣に対するキャストの皆さんの取り組み方も変わって来ている」(前出・宣伝担当)という。「特に熱心なのは『麦野くん』役の竹内涼真さんで、『トレンド入りさせよう』とおっしゃり、ストーリーに即した意味深なTweetをしてくださるのです」(同)。

 竹内のTwitterを覗いてみたところ、3話のオンエア開始10分前に「みんなでTweetしてトレンドとるよ」とあり、番組ポスターを挟んで高畑と“キス寸前”のようなポーズをとる画像と共に、#過保護のカホコダッシュダッシュダッシュと、ハッシュタグを付けている。

 キャストがお行儀よく並んで開かれる会見やキメ顔のポスターよりも、撮影現場の様子や、キャストのリアルな素顔が垣間見える画像や呟き、LINEでのやりとりなどのほうがイマ風な番宣スタイル。連続ドラマは、視聴者とキャストを含む制作側の双方向で「盛り上げよう」「見よう」と発進しあい、視聴率を上昇させるというのがトレンドらしい。