7月2日、津軽海峡付近で1時間半にわたり日本の領海内を通航した中国海軍の東調(ドンディアオ)級情報収集艦(提供/防衛省)

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東京都議選での都民ファーストの圧勝に日本中の目が注がれた7月2日。北へ遠く離れた津軽(つがる)海峡では、中国海軍の情報収集艦による領海侵入という重大事件が発生していた。

中国海軍の領海侵犯は、2004年11月(石垣島[いしがきじま]周辺)、昨年6月(口永良部島[くちのえらぶじま]周辺)に続き、史上3度目のこと。各国海軍に詳しいカメラマンの布留川司(ふるかわ・つかさ)氏はこう語る。

「領海侵犯したのは、敵の情報収集を主任務とする東調(ドンディアオ)級『天狼星号』というスパイ船。ゴルフボールのような大きな球体が3つ搭載され、その中には人工衛星までも追跡できるカセグレンパラボラアンテナや、相手を映像でとらえる光学追尾装置が入っています。ほかにも、空中を行き交う電波情報や海底地形をスキャンするソナー類、それらを記録・解析する設備も整っているといわれています」

この情報収集艦に対し、海上自衛隊は神奈川県・厚木基地から13年に配備された新型哨戒機(しょうかいき)P−1を“実戦初投入”。1時間半にわたる侵入行為を上空から追跡し続けた。軍事評論家の菊池征男氏が解説する。

「P−1は、イージス艦にも装備されているフェーズド・アレイ・レーダーを3ヵ所に搭載しています。コンピューターの指令で高速の電波ビームを走査させ、目標の位置や移動方向、速度といった情報を立ちどころに割り出すことができます」

ただし、情報収集艦に対してP−1が接近したということは、P−1側の情報も少なからず相手に吸い上げられたことを意味する。前出の布留川氏はこう警告する。

「中国側からすれば、自衛隊のレーダーに捕捉されることは百も承知。その上で、侵入行為に対する自衛隊側の出方や、それに伴う通信を傍受し、データを収集することが目的だったのでしょう。特に中国にとって未知の存在であるP−1については、無線通信の周波数や動作パターン、飛行ルートなど、あらゆる分析がなされているはずです」

中国海軍は東調級の同型艦を6隻も就役させており、日頃から日本近海で目立つ活動をすることで、日本側のリアクションから情報を取り続けている。また、7月17日には海軍の子分格である海警(かいけい)局(日本の海上保安庁にあたる組織)の船2隻も、初めて津軽海峡沖の領海に侵入。これもP−1をはじめとする自衛隊側の反応をモニターする狙いだろう。

日本近海では、互いの動きや意図を察知しながら牽制(けんせい)・監視し合う“詰め将棋のような情報戦”が日夜、人知れず行なわれているのだ。

(取材・文/世良光弘)