「演じるために生まれてきた人」と評された満島ひかり

写真拡大

 女優の満島ひかりが29日、テアトル新宿で行われた映画『海辺の生と死』初日舞台あいさつに登壇し、4年ぶりの単独主演映画である本作で、戦中の奄美群島・加計呂麻島に住む女性トエを圧倒的な存在感で演じたが、父親役の津嘉山正種から「演じるために生まれてきた人」と絶賛され、照れ笑いを浮かべていた。この日は永山絢斗、井之脇海、川瀬陽太、越川道夫監督も登場した。

 本作は、島尾敏雄の私小説「死の棘」と短編小説「島の果て」、さらに俊雄の妻・島尾ミホの小説「海辺の生と死」をモチーフに、太平洋戦争末期の加計呂麻島で出会った海軍特攻艇隊隊長の朔中尉(永山)と、国民学校教師・トエ(満島)との、はかない恋の一瞬を描いた物語。

 満島は「島尾夫妻については、いろいろと思う人がいると思いますが……」と、後に島尾敏雄が出版した「死の棘」で夫婦の壮絶な顛末が描かれていることを引き合いに出して語り始めると、「激しさを持ち合わせた人ですが、わたしはピュアな愛を貫いた人として、島の持つ女性らしさと共に柔らかい姿を表現できればと思って演じました」と役づくりに込めた思いを語る。

 満島の柔らかくも激しい女性像の表現に、津嘉山は「俳優には二つのタイプがあって、努力して俳優になる人と、演じるために生まれてきたような人がいる」と語ると「(劇団青年座で)一緒だった西田敏行は俳優になるために生まれてきたような男だと思っていましたが、満島さんも共演してそう感じました。この人から発するオーラは意識して出しているものではない。これから大きく羽ばたく女優さんだと思います」と絶賛した。

 またこの日は、劇中で満島が歌う島唄の指導をした朝崎郁恵がスペシャルゲストとして登場。奄美の島唄は、楽譜や楽器がなく、波や風の音で歌われていたそうで、満島は口伝えで指導されたという。そんな朝崎の歌声が場内に響き渡ると、満島は目を閉じ、しみじみと耳を傾けていた。

 満島は「加計呂麻島の人々に語り継がれる手のぬくもりや、島の歴史が、愛の形として映画にならないかなという思いでがんばりました」と作品への思い入れを述べると「観た人の大切なところに触れる場面が一つでもあればうれしいです」と笑顔で語っていた。(磯部正和)

映画『海辺の生と死』は全国公開中