自分で「ペニシリンアレルギーだ」などと判断しない

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花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギーを引き起こす原因物質(アレルゲン)は、さまざまなものが存在する。医薬品もそのひとつで、「薬物アレルギー(薬物過敏症とも)」を起こす可能性があると知られている。

代表的な抗生物質「ペニシリン」のアレルギーも確認されている。だが、ペニシリンアレルギーと診断された子どもの多くが、実は誤診や勘違いだったとする研究を、2017年7月3日に米ウィスコンシン医科大学の医師らが発表した。

ペニシリン使えないと治療が難航することも

ペニシリンアレルギーは、日本でも古くから問題視されていた。

製薬企業の業界団体、日本製薬工業協会(製薬協)はウェブサイト上に掲載している薬物アレルギーの解説の中で、日本国内の事例として60年前に虫歯の治療中、ペニシリンアレルギーによってショック状態に陥り患者が死亡する「ペニシリン・ショック」が起きたと紹介。社会問題になり、ペニシリンアレルギーが薬物アレルギーの典型例として認識されていると記載している。

現在ではペニシリンの純度が高くなり、注射によって突然ショック状態を起こす例は減少しているようだが、湿疹やかゆみ、めまい、耳鳴りといった軽症の症状は確認されているという。

米国でもペニシリンアレルギーの存在はよく知られている。しかし、研究を行ったウィスコンシン医科大学の医師らによると「ペニシリンアレルギーである」と診断される子どもが想像以上に多く、ペニシリン以外の有効性の低い薬や、場合によっては毒性のあるものを使わなければならない場合もあり、治療が難航することもあった。

そこで、本当にペニシリンアレルギーがそれほど多いのかを検証することにしたのだ。

研究では同大小児救急外来を受診した4歳から18歳までの子どものうち、保護者が「子どもにペニシリンアレルギーがある」と申告した577人から、発疹やかゆみといった軽度のアレルギー症状を持つとされた100人を選出。

「ペニシリンを皮膚に塗る」「ごく微量のペニシリンを注射し注射部位の変化を観察する」「医師の厳重な監督下でペニシリンを服用する」という3つの標準的なアレルギーテストを実施した。

その結果、100人全員にまったくアレルギー症状が発生せず、医療記録からペニシリンアレルギーの表示が削除されたという。この結果から、医師らは「低ペニシリンアレルギーと診断されている子どもは、再度アレルギー検査を受けるべき」とコメントしている。

医師は正確な診断を受けるよう勧める

検証した100人全員が誤診だったという驚きの事態はなぜ起きたのか。医師らは

「子ども特有の消化器の不快感や発疹などがちょうどペニシリンを投与したタイミングで確認され、医師や親が慎重を期してアレルギーと判断してしまうのではないか」

と推測している。子どもに限らず成人でも同様の傾向にある可能性もあるという。

研究は米国での事例だが、日本でも誤診や過剰診断は起きていないのだろうか。東京都内の総合病院に勤務する内科医はJ-CASTヘルスケアの取材に対し、「過剰診断が特別多いと感じたことはないが、まれに疑問を感じる例もある」とし、次のように話した。

「カルテ上はペニシリンアレルギーと書かれているのに、詳しい症状が未記入なので直接患者に確認すると、本人もいつ診断されたか覚えていないことがありました。念のため検査をするとアレルギーはなく、不安を覚えました」

自己診断は難しいうえに危険であり、この医師は処方された薬でアレルギーのような症状が出た場合、薬品名や服用日、症状を明記して処方した医師にアレルギーテストを頼んだ方が良いと指摘する。

「薬物アレルギーと診断されると、その後提供される治療に大きな影響を与えます。必ず正確な診断を受けてください」