今年も、梅雨明け前から連日真夏日となる地域も多く、冷たい飲み物などが手放せない。気象庁の3カ月予想でも、8月から例年以上の猛暑が続くという。そこで注意したいのが、熱中症や心筋梗塞、脳梗塞といった死を招く事態だ。

 そうした危険な状況にいかに備えるか。それには、「暑さに負けない体を作り、汗をたくさんかけるような体にしなければならない」と、医療関係者は言う。
 「人間は、発汗を伴う活動で代謝を上げます。代謝熱で深部の内臓を温めることで免疫力をアップさせ、同時に熱を汗として放出することによって、脳や内臓の温度も安定させることができるのです」

 こう語るのは、東京都多摩総合医療センター血液内科外来担当医だ。
 「夏場で大切なことは、長時間の暑さに耐えられるように、早くに体を変化させることです。これを医学的に言うと『暑熱順化』と言いますが、つまりは汗をたくさんかける体にすることです。人間は生きるために、脳や内臓を含む領域の温度(核心温)を一定に保とうとします。そのため、体を動かすなどで作られた体内の熱は、血液を通して皮膚表面へと運ばれ、汗などによって外に放散される。特に、気温が上昇すると皮膚の血管が拡張して皮膚表面へ大きな血液を集めて汗を作り、一方で皮膚温度を上げることで、熱が体外へ逃げやすい環境を作ろうとするのです」(同)

 加えて、この医師は「汗をたくさんかくということは、体温が上昇し代謝がよくなること」とし、逆に体温が低いと細菌などの病原体に対する抵抗力が弱まり、腸内では悪玉菌や有害菌が増殖、あらゆる病気の原因なると指摘する。

 また、適切な運動などで汗をかき、体温を上昇させると、栄養素や老廃物を運ぶ血液の流れもよくなるという。
 「汗をかけば、汗腺や皮脂腺から、尿素やアンモニア、乳酸、老廃物、有害金属なども排出してくれます。中でも乳酸などの疲労物質、毒素の排泄は、デトックスの効果も一段と上がると言われる。そうすることで、酸化した体がアルカリ性になり、新陳代謝もよくなるため脂肪が燃焼しやすくなるうえ、ダイエットにも効果があるとされているのです」

 愛知医科大名誉教授(生理学)の菅屋潤壹氏は、著書の『汗はすごい』(ちくま新書)の中でこう記している。
 「脳が指令を出して皮膚の表面に大量の血液を集めて汗をつくりますが、その一方で皮膚温度を上げて熱を体外へと逃がすという環境づくりもします。そのとき血液や心臓に大きな変化をもたらします。内臓にたまった血液の多くを皮膚に向かわせ、心臓から押し出される血液量を、快適な気温の場合と比べて2倍近くに増やすのです。その後、皮膚に血液を大量にとどまらせるために、心臓に戻る血液が減ってしまいます。ただでさえ、汗を作るせいで血液量が少ないのですから、心臓は収縮しても血液を押し出せない状態になる。心臓に負担がかかり、血液は固まりやすくなって脳梗塞や心筋梗塞のリスクが上がるのです」

 つまり、体温上昇を先に察知して、汗が早く大量に出るようにすると、内臓や心臓への負担が増大する。こうしたことを放置、無視はできないということだ。
 この状態を改善するには、前述した「暑熱順化」が重要になるのだ。
 東京労災病院内科外来診療担当医は言う。
 「暑熱順化といいますと、汗をたくさんかける体にすることですが、これができると体温の上昇が少なくなり、心拍数の増加が軽減されます。また、汗腺の働きが活発になり、汗の中の塩分を再吸収する。そのことで体の中に溜まる血液量が増え、体温が上がりにくくなるのです。その結果、比較的少量の水分補給で体液が回復するようになり、熱中症や脱水症になりにくくなるのです」