『ブランカとギター弾き』 (C)2015-ALL Rights Reserved Dorje Film

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…前編「多くのリアルなストリート・キッズを路上で起用〜」より続く

【映画を聴く】『ブランカとギター弾き』後編
ブランカ役のサイデル・ガブテロはYouTubeの歌姫

すでにプロの歌手として活動を始めているというだけあって、ブランカを演じるサイデル・ガブテロの歌は瑞々しく透明感があり、心をいっぺんに持っていかれる。劇中の歌唱シーンは思いのほか少なく、おのずともっとたくさん見たくなってしまうが、若さゆえの荒々しさとか不器用さを残したその歌いっぷりは、経験を積み重ねた大人の歌手にはない吸引力を持っている。今後の活動が楽しみだ。

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また、本作の劇伴を手がけているのはLAに拠点を置く音楽家、アスカ・マツミヤ。もともとクラシックピアノの素養があり、ポップス畑のミュージシャンのサポートから女性30人で構成されるクワイアのための作曲まで幅広く手がけている。スパイク・ジョーンズ監督の『アイム・ヒア』では自身が歌った主題歌「There Are Many of Us」を提供したほか、映画音楽でもキャリアを積んでおり、本作ではピーターのギターに呼応するようなギターのインストゥルメンタル曲が中心。アコースティックギターのアルペジオが、スラムのカオスの中にある色彩の豊かさを美しく浮かび上がらせている。

劇中でブランカがステージ用に、オレンジ色のワンピースを着るシーンがある。盲目なのに色が分かるのかと尋ねるブランカに、ピーターは「温かい心の色」と答える。本作には、見る者にこのオレンジ色のワンピースのような心持ちを与えるヴァイブレーションが備わっている。世界を旅する日本人監督がパリで脚本を書き、マニラで撮影した2015年のイタリア映画が、ようやく日本でも公開される。そのことに感謝しながらひとつひとつのシーンを噛みしめたい、珠玉の77分である。(文:伊藤隆剛/ライター)

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。