稲田朋美ホームページより

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 稲田朋美防衛相が大臣をようやく辞任したが、何をいまさら、というしかない。森友学園をめぐる虚偽答弁に、都議選での「自衛隊としてお願い」発言、そして南スーダンPKOをめぐる日報隠蔽問題と、この間、さまざまな問題発言、行動が散々国民から批判されてきたにもかかわらず、「"ともちん"がかわいくてしようがない」(政界関係者)安倍首相は、周囲の声に耳を貸さず、頑として更迭を拒否してきた。そのあげくがこのザマである。

 しかも、今回の辞任も稲田氏が責任を取ったという話ではなく、稲田氏自身にふりかかった疑惑をごまかし、野党が要求する閉会中審査をつぶすために、安倍政権が先手を打って稲田氏をやめさせたということにすぎない。

 稲田防衛相は昨日の会見でも、関与を否定していたが、明らかに、日報隠蔽に関わっている。昨日、発表された特別防衛監察の報告では、「幹部から日報の存在に関する何らかの発言があった可能性は否定できないものの、 書面による報告や非公表を了承した事実はなかった」となっていたが、これは、陸自幹部が稲田防衛相が隠蔽を了承したと証言していたのに、稲田防衛相が強硬に否定したため、玉虫色の表現をとらざるをえなかったということらしい。

 実際、FNNは稲田氏への「報告」を示す防衛省幹部による"手書きメモ"を入手。そこには、2月13日に大臣室で交された、稲田氏と幹部との生々しい会話の様子が記録されていた。

辰己昌良統幕総括官「破棄漏れがある」
湯浅悟郎陸幕副長「まだ全部調べていない」
(略)
稲田防衛相「CRF(注:陸上自衛隊中央即応集団)。7/7〜12のものもあったということ?」
湯浅「紙はないかとしか確認しなかった。データはあったかというと、あった。今あったのは1件のみ」
(略)
湯浅「1年未満のなかで運用。帰国して報告書を作るまで残っている」
稲田「明日なんて答えよう。今までは両方破棄したと答えているのか?」
米山大臣秘書官「後藤くんにも、データは破棄したと答えた」

 稲田氏が明確に日報データの存在を認識し、隠蔽に関与していたことはもはや決定的といっていいだろう。なお、メモに出てくる「後藤くん」とは、日報問題をめぐる国会で厳しく稲田防衛相を追及していた民進党の後藤祐一議員のことで、稲田氏が頭を抱えている様子がありありと伝わってくる。

 いや、問題は稲田防衛相がたんに隠蔽を了承していたというだけではない。自衛隊日報にはもっと深い背景がある。たとえば、発売中の「週刊文春」(文藝春秋)が載せた"防衛官僚覆面座談会"では、防衛省の中堅官僚Bが一連のリークを"陸自による防衛相への反乱"とする見方について、こう語っている。

「反乱説はどうかなぁ。日報を『ない』としたミスを目立たなくするために、陸自が組織防衛に走った可能性もある」

 そして、続けて中堅官僚Cがこう述べているのだ。

「『陸自で破棄されていた報告を受けている』と大臣が国会答弁しちゃった手前、辻褄を合わせるために"統幕で日報が見つかった"ことにした。ところが、防衛監察で陸自だけが悪者にされる可能性が浮上して、慌ててリークが始まった、と」

 ようするに、自衛隊制服組が稲田氏ら政府側の答弁に振り回されるかたちで、組織的隠蔽をめぐって嘘を積み重ねることになったということだろう。

 実際、本サイトでも指摘しているとおり、そもそもこの日報隠蔽問題の背景には、日報にも記されていた昨年7月のジュバでの「戦闘」が、安保法に基づく自衛隊駆け付け警護の新任務付与にとって"不都合な事実"だったという事情がある。稲田防衛相と安倍首相は、国会で「戦闘」を「衝突」と言い換えて、新任務付与を閣議決定。その11月には、強引に駆け付け警護の任務を付与した自衛隊部隊を現地に派遣した。

 だからこそ、この日報隠蔽問題は、政権を忖度した防衛省が「戦闘」をなかったことにするため、日報の隠蔽を働いた可能性が濃厚なのである。それどころか、官邸、安倍首相が防衛幹部に指示をした可能性すらあるのだ。

 24日午後の閉会中審査でも、稲田防衛相だけでなく、安倍首相も報告を受けていたのではないかという疑惑が焦点となった。共産党の笠井亮衆院議員は「(総理も)早くからご存知だったのではないか」と切り込み、防衛省の黒江哲郎事務次官、豊田硬官房長が、今年1月18日に二人そろって官邸を訪れ、総理に面会している事実を突きつけた。実は、この1月18日というのは、陸自で岡部俊哉陸幕長にデータが見つかったことが報告された日の翌日にあたる。さらに、陸自内の日報データの保管事実が報道された3月15日の2日後にも、やはり黒江事務次官が安倍首相と面会していた。

 安倍首相は繰り返し「ありえない」と強弁したが、日報隠蔽問題について要所要所で黒江事務次官ら防衛省・自衛隊幹部から報告を受け、対処方針を指示していたのではないかという疑念は尽きない。それどころか、隠蔽疑惑が表面化した12月末以前より、駆け付け警護の新任務付与のために、なんらかのかたちで日報隠蔽に関与していた可能性もあるだろう。

 安倍首相は、稲田防衛相の辞任を受け、官邸で記者団に対し「閣僚の任命責任についてはすべて総理大臣たる私にある。国民の皆様の閣僚に対する厳しいご批判については、私自身、真摯に受け止めなければならないと思っている」と述べたが、「閣僚の任命責任」にしても「国民に対する真摯な説明」にしても、安倍首相はいつも口だけだ。

 本来ならば、防衛省で組織ぐるみの隠蔽が行われた事実が認定され、稲田防衛相の関与も濃厚、さらに自身の指示疑惑まで浮上しているのだ。情報をフルオープンにした第三者による真相究明の実施が急務だろう。

 いや、それだけではない。隠蔽問題が明るみになるなかで問題発言を連発した稲田防衛相を、ここまで延命させたのは、他ならぬ安倍首相である。国民の不信は頂点に達している。いますぐ総理の座を降りること。それが、責任のとり方というものだろう。
(宮島みつや)