7月31日で閉店する青山アンデルセン

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 表参道で長年親しまれたベーカリー「青山アンデルセン」。

 この人気老舗ベーカリーが、少し意外な「ある理由」により7月いっぱいで閉店することになった。

◆「アンデルセン」は日本にデニッシュを広めた老舗だった

 アンデルセンベーカリーを運営するアンデルセン・パン生活文化研究所(タカキベーカリー)は1948年に広島市で創業。キャッチフレーズに「パンからはじまる、ヒュッゲな暮らし。」を掲げ、全国各地でベーカリー「アンデルセン」、「リトルマーメイド」、JR九州との合弁ベーカリー「トランドール」などを展開するほか、西日本を中心に百貨店やスーパーマーケットなどにおいてもパンを販売している。「ヒュッゲ」とはデンマーク語で「人と人とのふれあいから生まれる、温かな居心地のよい雰囲気」という意味で、同社の事業拡大は当時珍しかった「デニッシュパン」を全国に広める役割を果たした。

 青山アンデルセンは「東京・青山通りにコペンハーゲンの街角を持ってきました」をキャッチフレーズにタカキベーカリーの首都圏旗艦店として1970年開店。1985年現在地に増床移転した。現在は1階にベーカリー、2階・3階にレストラン、地下1階にサンドイッチカフェが出店しており、長年に亘って表参道を代表する店の1つとして親しまれてきた。

 その後、アンデルセンは都内でも店舗展開を進め、現在は、東急百貨店東横店や新宿伊勢丹、東武百貨店池袋本店などにも出店している。

 表参道で50年近くに亘って親しまれてきた青山アンデルセンであるが、今年5月に突然「7月末での閉店」を発表することになった。

 しかも、その理由は店舗の地下にある「東京メトロ銀座線の改良工事」。東京メトロでは2020年の東京オリンピックをひかえて「銀座線リニューアルプロジェクト」を実施している。確かに銀座線表参道駅の一部は青山アンデルセンの地下部分に当たるものの、建物が駅と直結している訳ではない。地下鉄の改良工事が地上にまで影響を及ぼすとは一体どういうことであろうか。

◆閉店理由は「銀座線」――駅と直結していないのに一体なぜ?

 東京メトロ銀座線はもともと「東洋初の地下鉄」として1927年に部分開業(上野―浅草間)した東京地下鉄道を起源とし、今年で90年を迎える。表参道駅は1938年に東京高速鉄道(帝都高速度交通営団の前身)銀座線青山六丁目駅として開業し、その翌年、現在の銀座線にあたる区間は全通を迎えた。青山六丁目駅は神宮前駅を経て、1972年に表参道駅に改称されている。

 銀座線は「東洋最古の地下鉄」であるため、のちに建設された地下鉄と比較して非常に浅い位置を走っているという特徴がある。その浅さゆえに、1945年1月の銀座空襲では地下鉄でありながら大きな被害を受けることになり、復旧まで2か月も要したほどだ。これは、大型河川や運河を多く跨ぐために比較的深い位置に建設された大阪市営地下鉄御堂筋線が空襲時に避難者輸送をおこなうなど「防空壕」の役割を担ったこととは対照的であった。

 近年、銀座線は部分開通から90年を迎えて設備の老朽化が深刻なものとなっていたうえ、戦後に開通した路線に比べてバリアフリー化も進んでいなかった。そこで始まったのが「銀座線リニューアルプロジェクト」だ。

 しかし、地上から浅く、天井が低くて構内も狭い銀座線の改良工事は困難を極めた。とくに、銀座線表参道駅は半蔵門線表参道駅と一体化されており、さらに千代田線との乗り換え駅であるうえ渋谷方面にはかつて使われていた「幻のホーム」跡も存在するなど構造が複雑で、その結果、工事が地上の建物にまで影響を及ぼすことになってしまったというわけだ。アンデルセンでは、地下鉄の改良という公共性に賛同して東京地下鉄(東京メトロ)に建物全体を譲渡することを決めたという。