まだ「ものさし」や「時計」がない時代、日本では「白長須鯨」や「馬」で距離や時間を測っていたそうです。

世界でも同じく、「何かを測るとき」に、さまざまな動物が活躍しています。

ここでは、米澤敬さんと日下明さんの著書『はかりきれない世界の単位』より、世界で実際に使われている動物に関する単位を紹介します。

01.
「クローシャ」
牛の鳴き声が聞こえる距離

これは、古代インドで牛の鳴き声が聞こえる距離。グロータ(goruta)とされることもあります。

どれくらいの距離なのかは、5kmとも1.8kmともいわれ、定かではありません。牛を神聖な動物とするインドでは、なにかと牛が基準になっていて「牛が柔らかい土を踏んだときにできるくぼみの体積」と言う単位もあったそうです。

02.
「驢馬力」
驢馬の力の程度

西洋においては、ロバは愚鈍さや頑固さの象徴。ロバにしてみたら理不尽な話です。驢馬力は、おおむね馬力の1/3。1884年に定義されました。

じつはロバは速度こそ遅いものの、ウマより大きな荷重に耐えることができます。驢馬力単位も、ロバにとっては不本意なのかもしれません。

03.
「ムゲセゲレ」
ハエのペニスの長さ

ドイツ南部のシュヴァーベンで使われる「とても小さいもの」を示す単位。意味はハエのペニス。

実際に測った研究者によると、約0.02mm。長さ以外に、体積、重さ、さらには時間の単位としても使われることがありますが、うっかり使うのは考えもの。

04.
「モルゲン」
牛1頭が午前中に耕す面積

直訳すれば、ドイツ語の「朝」。単位としては、かつて午前中に耕すことのできる広さを表していました。

古代ローマには、2頭の牛が午前中に耕す広さ、ユゲルム(jugerum)があります。馬なら、イランのジョフトガーヴ(joft gau)やハンガリーのジョック(jock)が、1頭の馬が1日に耕す面積のことです。

05.
「ブーク」
トナカイの角が
見分けられる距離

シベリアの原住民たちが用いていた、トナカイの角が見分けられる距離。角の枝まで見えたら1ブークになります。

ロシアにはまた、野牛の鳴き声の聞こえる範囲という単位があり、これは土地の契約などにも使われた、面積の基準でした。

06.
「カッツェンシュプルング」
猫のひとっ飛び

ドイツの距離、あるいは面積の単位。意味は「猫のひと飛び」です。日本でいうなら「向こう三軒両隣」に近い感覚。

夏目漱石の『吾輩は猫である』の舞台も、だいたいそれくらいの範囲でした。遠いときには「カッツェンシュプルングでは無理」などとも言うそうです。

07.
「リークシャー」
シラミの卵1個分の重さ

黒ケシの種子1粒の重さ「ラージャサルシャバ」などは、いかにも古代インドらしい単位ですが、リークシャーはシラミの卵を意味する重さの単位。約0.7mgと換算されています。

ただし、もしも髪の毛にシラミの卵がついていたら、重さを測るよりもまずは駆除を考えましょう。

「トレサレーヌ」「アラウトゥン」「ハナゲ」…測れそうもないことを推し量ろうとする事で、科学も文化も発達してきた。本書では、近代化とともに使われなくなった、人間味溢れるちょっとおかしな単位を50紹介。