「はなまるうどん」の店舗

写真拡大

 吉野家ホールディングス(HD)が運営するうどんチェーン「はなまるうどん」の業績が絶好調だ。4〜5月には、うどん1杯ごとに天ぷら1品が無料になる「天ぷら定期券」(税込300円)の販促を期間限定で行ったこともあり、客数が底上げされた。はなまる事業の2017年3〜5月期決算の売上高は前年比14.5%増の67億100万円、営業利益は同82.6%増の4億6400万円と大幅な増収増益となった。はなまるの6月末の国内店舗数は前年同期比35店増の428店で順調に増加している状況だ。

 はなまるで使用する麺には、1玉当たりレタス1個分の食物繊維が入っていることもあり、健康志向の人たちに人気を博している。サラダがたっぷり入ったうどんなど健康的なメニューが豊富で、女性にも人気だ。はなまる事業の17年2月期決算の売上高は前年比10.8%増の236億円、営業利益は9億円(前年同期は11億円)となり、吉野家HDにおける第2の収益源として順調に育っている状況だ。

「吉野家」を運営する吉野家HD、「すき家」のゼンショーホールディングス(HD)、「松屋」の松屋フーズの牛丼大手3社は、主力の牛丼店に次ぐ第2の収益源の確立を急いでいる。というのも、主力の牛丼店は飽和状態にあり、出店の余地が限定的だからだ。

●店舗数はいずれも横ばい

 ここで、牛丼業界を簡単に俯瞰してみたい。

 牛丼店といえば、多くの人が吉野家を挙げるのではないだろうか。1899年に個人商店として吉野家が誕生し、1958年に株式会社吉野家を設立。その頃、牛丼以外のメニューをすべて排除し、牛丼一筋で勝負することにしたという。1965年に年商1億円を達成し、1968年に新橋で2号店を出店。チェーンストア理論に則り多店舗化へと舵を切った。

 すき家と松屋の誕生は吉野家よりもずっと後になる。牛丼店としての松屋の1号店は1968年、すき家の1号店は1982年に誕生した。その後、吉野家とすき家、松屋の3社は店舗網を拡大し、競争は激化していった。安さを競う「牛丼戦争」という言葉も生まれた。特に店舗数の伸びが著しかったのはすき家で、2008年9月末時点で国内1087店となり、吉野家を抜き去った。

 こうして牛丼大手3社は激しい出店競争を繰り広げてきた。しかし近年は、出店競争は鳴りを潜めている。17年6月末時点の国内店舗数は、吉野家が1198店、すき家が1958店、松屋が943店となっているが、3社とも店舗数は停滞している。

 吉野家の店舗数は09年初頭から現在まで概ね1100店台で推移している。すき家は13年初頭から現在まで1900店台、松屋は2012年初頭から現在まで900店台で推移している。3社の店舗数は近年横ばい状態で成長が止まっている状況だ。

 3社は店舗数を増やすことよりも、メニューを多様化させたり、価格を引き上げたりすることで、1店当たりの収益性を高めることを重視しているとみられる。牛丼一筋だった吉野家も、「タコライス」や「そば」といった非牛丼メニューを充実させている。すき家は「鉄火丼」や「うな丼」など、松屋は「親子丼」や「うどん」などを投入し、非牛丼メニューを強化している。

●牛丼店以外の収益源

 一方で3社は、第2の収益源を育てることでリスクの分散化を図っている。扱うメニューが牛丼だけだと、例えば2000年代初頭に発生したBSE(牛海綿状脳症)問題のように、牛丼特有のトラブルが発生してしまうと、大打撃を被ってしまう。そこで、メニューを多様化することでリスクを最小限に抑えようとしているのだが、一方でメニューの多様化を牛丼店だけで対応すると効率が悪くなる。食材の配送・保管コストや調理技術の習得のためのコストなどが余計に発生するためだ。この場合、別の業態店で対応したほうが効率と収益性は高まる。そのため、3社は第2の収益源を育てる必要性が高まっていたといえるだろう。

 ゼンショーHDでは、回転寿司店「はま寿司」が第2の収益源になりそうだ。平日は一皿税別90円という安さで提供し、人気を博している。サイドメニューも好評で、たとえば「旨だし鶏塩ラーメン」は一昨年に100万食以上、昨年は160万食以上を約2カ月間で売り上げる大ヒット商品となった。はま寿司では、こうしたサイドメニューが充実している。また、グループで牛肉を扱っている店が多いこともあり、ハンバーグやローストビーフなどの肉をネタにした握りが充実しているのも特徴的だ。

 はま寿司はスシローやくら寿司、かっぱ寿司と共に回転寿司業界の覇権争いを繰り広げている。そのなかでも業績は好調なほうといっていいだろう。はま寿司の17年3月期決算の売上高は前年比8%増の1090億円、経常利益は同6.1%増の45億円となっている。着実に成長している状況だ。第2の収益源としては、はなまると比較して規模が大きいので、吉野家HDを一歩リードしている状況だ。

 はま寿司は競合する大手3社と激しく覇権競争を繰り広げている状況だ。はま寿司が蹴落とされる可能性は否定できない。はなまるはライバルの「丸亀製麺」が大きく立ちはだかっている状況だ。丸亀製麺事業の店舗数は3月末時点で778店を展開し覇権を握りつつある。丸亀製麺は知名度やブランド力の面でも抜きん出ているといえるだろう。

●伸びしろが大きいとんかつ事業

 松屋フーズでは、とんかつ店の「松のや(松乃屋)」が第2の収益源になるだろう。「ロースかつ定食」が税込500円という安さで食べられるとあって好評を博している。定期的に行われる「ワンコインフェア」と銘打ったキャンペーンも人気だ。普段は税込600円程度のとんかつなどが期間限定で税込500円になる。多くの店舗が24時間営業というのも特徴的だ。

 松のやを中心としたとんかつ事業は好調で、17年3月期決算の直営店売上高は前年比40.8%増の85億円で大幅な増収となっている。6月末時点の国内店舗数は前年同期比33店増の124店と大きく増加している。松のやは大きく化ける可能性がある。松のやは、誕生したのが05年で比較的若いブランドということと、とんかつ業界で覇権を握りつつある競合が少ないためだ。

 とんかつ業界では「かつや」が5月20日時点で381店と先行しているものの、松のやが出店できる余地はまだ十分にあり、挽回が可能といえるだろう。かつやの知名度やブランド力は丸亀製麺ほどあるわけではなく、とんかつ業界で抜きん出ているとはいえない。はなまるが丸亀製麺を追い抜くことよりも、松のやがかつやを追い抜くほうが、想像が容易ではないだろうか。

 牛丼大手3社は第2の収益源の確立を急いでいる。第2の収益源はそれぞれ業界が違うため、真正面から競合しておらず単純比較はできないが、あえて16年度の売上高を基準に競争順位をつけて比較してみると、ゼンショーHDのはま寿司が売上高1090億円でトップを走り、吉野家HDのはなまる事業が売上高236億円で2位につけ、松屋フーズの松のやを中心としたとんかつ事業が直営店売上高85億円で追いかけているといったところだ。

 牛丼大手3社による牛丼店競争も去ることながら、第2の収益源競争からも目が離せない。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)