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text:Naoki Imao(今尾直樹) photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)

■プロローグ

TT RS アウディ・スポーツのリアル・スポーツカー

昨年秋に本国で発表された史上最強のアウディTTがニッポンに上陸している。

R8やRS6など、アウディのハイエンド・スポーツモデルを手がけるアウディ・スポーツ社が開発したリアル・スポーツカーである。

新開発の2.5ℓ直列5気筒ターボエンジンは最高出力じつに400psを誇る。0-100km/h加速は3.7秒(ロードスターは3.9秒)。

数値上、信号グランプリでポルシェ718ケイマンを置き去りにする。718ケイマンときたら、スポーツクロノパッケージ装着車でも4.7秒もかかるのだ。

いやいや、それは不公平な言い方だろう。アウディTT RSが常軌を逸して速いのだ。

しかもTT RSときたら、速いだけのスペック至上主義ではなくて、エンターテイメントに満ちたドライビングマシンなのである。

もしも機会があったなら、そのコクピットに身体を収めてみることだ。

ブラックにオレンジのスティッジが施されたゴージャス&レーシーなシートにもハッとさせられるけれど、ともかく着座してみよう。

■アウディTT RS試乗記

アウディ・スポーツの意図とは?

眼前にあるステアリングホイールに手をのばせば、3時と9時の位置に配されたアルカンターラの感触に左右の掌が喜ぶ。それだけでもう脳内からなにやら快楽物質が湧き出る。GT3と同じ感触ではないか!

フラットボトムのステアリングホイールの3時の位置のスポークの根元に設けられた赤いスターターボタンを押してみよう。

そこが地下駐車場だったりしたらたいへんなことになる。ヴォンッ! 爆裂音が壁と天井に反響する。こいつはスーパーカーか!? コンパクトなサイズに似合わぬ爆音がエグゾーストから発射され、TT RS劇場が幕を開ける。

乗り心地は硬い。なぜといって、このボディにして255/30ZR20という巨大かつ超薄型のゴムをつけているからだ。

そりゃあ、あなた、官能度はおのずと増すってもんです。つけてないみたいです。ってことはないにしても。銘柄はあのピレリPゼロ。フェラーリF40とともにこの世に現れた、これぞスーパースポーツのためのゴムですぞ。

ちなみに同じMQBプラットフォームを共有するアウディRS3と比べると、RS3の車両重量が1560kgあるのに対して、TT RSは1490kgと70kgも軽く仕上がっている。

それも、RS3は19インチの235/35を標準としているのに、である。ここにスタイリングだけではない、スポーツカーとしての性能差と乗り味をTT RSに与えようというアウディ・スポーツGmbHの意図を垣間見ることができるとは言えまいか。

TT RS 現実世界に住むザ・リアル・スーパーカー

乗り心地は前述したように硬い。路面が荒れているとバンピーですらある。しかるに、それが楽しい。カッ飛んで行くリアルが充実する。これぞ、リア充!

前後重量配分は当然フロントヘビーではあるけれど、それを感じさせない。「アウディドライブセレクト」を「ダイナミック」にすれば、クワトロ、すなわちフルタイム4WDの後輪へのトルク配分を増やして、アクセルワークを駆使したコーナリングが楽しめる。

ザッツ・エンターテイメント! と感嘆するのは、「ダイナミック」時に協調制御される7速Sトロニックのプログラムである。

減速するだけで、爆音を伴いながら自動的に完璧なダウンシフトをやってのけ、あとはもうステアリングとアクセル操作に専念するのみのお気楽な状態をつくり出してくれる。名演出家付きで、プレイヤーは役に没頭できるのだ。

テスト車はオプションのセラミックブレーキを装着していることもあって、意のままに止まる。信頼感バツグンである。

ボディがコンパクトなことも山道ではもちろん有利だ。いや、この乗りやすさは街中の日常レベルでこそアドバンテージを発揮する。

お気楽に乗れるスーパーカーをスーパーカーと呼ぶことが許されるなら、TT RSこそそれ、現実世界に住むザ・リアル・スーパーカーである。

■インテリア&エクステリア

コックピットはなにより上質に仕立てられている。リアル・スポーツカーにふさわしい、心地よい緊張感と機能性に満ちている。

自然に手を下ろしたところにあるシフトレバーやMMI®コントローラーを始め、すべての操作系があるべきところに配置されて、走りへの期待を高める。

最新のバーチャルコクピットにはRS専用機能が追加されている。12.3インチの液晶ディスプレイをメーターナセル内におさめたこれは、ナビの地図やオーディオなどの情報を表示するだけでなく、前後左右のGを表示するGメーターやラップタイマー機能を備えている。

前席のスポーツシートは、ドライバーの身体をしっかりとホールドする。テスト車はオプションの「エクステンデッドレザーパッケージ」が装着されている。

「ファインナッパレザーRSロゴ」と組み合わせ装備となるこれは合計210,000円と高価ではあるけれど、それに見合う、あるいはそれ以上の効果を室内に与えてくれる。

■装備

これって大バーゲン?

車両価格962万円の高級車だけあって、装備は充実している。マトリクスLEDヘッドライト、アクティブヘッドライト、前後スポイラーなどの外装はもちろん、内装面においても、シートヒーターにはじまり、MMIナビゲーション、RS3ではオプションのSスポーツシートも当然のように標準装備する。

機能面では、これまたRS3ではオプションの可変ダンピングシステム、マグネティックライドが標準になっている。

クルーズコントロール、レーンアシストを含む「アシスタントパッケージアドバンスト」、いわゆる運転支援システムは280,000円、リアル・スポーツカーぶりを印象づけた、7スポーク・ローター・デザインの20インチホイールは240,000円の効果的なオプション。

フロントのセラミックディスクブレーキも、RS3には設定のないTT RSのみのスペシャルオプションで660,000円。バング&オルフセンのサウンドシステムは130,000円のプラスとリーズナブルに思えるけれど、いかがでしょう。

リアのコンビネーションライトには、軽量で優れた省電力性能を持つOLED(有機発光ダイオード)を量産車としては初めてオプション設定したのも特筆事項である。特徴的な発光パターンに注目だ。

そうそう、オープンを標準装備するロードスターは9,780,000円で、160,000円しか高くなっていない。

これって大バーゲンでは?

■エンジン

2.5ℓ直列5気筒直噴ターボ

80年代にWRC(世界ラリー選手権)を席巻した初代アウディ・クワトロのDNAを受け継ぐ名機、と位置付けられているのが、MQB系RSモデルの搭載する2.5ℓ直列5気筒直噴ターボだ。

TTの場合、新たなターボチャージャーを備えて、最高出力は先代から実に60psアップの400psを5850〜7000rpmで、3.1kg-mアップした最大トルク48.9kg-mは1700〜5850rpmで発揮する。

今回、部品のダウンサイジングやアルミ製クランクケースの採用などの細かな設計の見直しで、エンジン単体で26kgの軽量化も実現している。

隣り合うシリンダーと離れたシリンダーを交互に点火する、1-2-4-5-3という点火順序から生まれる個性的なサウンドが、スポーツドライビングの愉しさを盛り上げる。

ボア×ストローク=82.5×92.8mmは2ℓ4気筒(アウディS3用とも通じる)と同一のロングストローク型ながら、圧縮比は10と、4気筒の9.6より高く、排気量が増えているのにより高回転型になっている。

それでいて中低速トルクに厚みがあって、回転もなめらか。アウディが誇るのも当然だ。

■シャシー

クワトロ・フルタイム4WDシステム

アウディの代名詞クワトロ・フルタイム4WDシステムは、小型軽量の電子油圧制御式多板クラッチをプロペラシャフトの後部に配置することで前後重量配分の最適化を図っている。

これをTT RSとしては初めて「アウディドライブセレクト」(コンフォート/オート/ダイナミック/インディヴィデュアルの4つのモードを選択可能)と強調制御することで、先代より緻密な制御を行う。

コーナリング時には狙い通りのラインをトレースするようにトルク配分を調節し、ドリフト状態になった場合でもESC(エレクトロニック・スタビライゼーション・コントロール)が内輪のブレーキを調整するというから頼もしい。

舵角が大きくなるほどレシオが速くなる「プログレッシブステアリング」はRS専用のチューニングが施されている。少なくとも違和感がない。

「マグネティックライド」はドライブセレクトを介して減衰特性を変化させることができるけれど、リアル・スーパーカーのこれは概ね硬めと申し上げて差し支えない。タイヤの標準は19インチの245/35。20インチのテスト車はなるほど硬派だった。

アウディTT RS

■価格 9,620,000円 
■ボディ・サイズ 4190x1830x1370mm 
■ホイールベース 2505mm 
■車両重量 1490kg 
■エンジン 直列5気筒2480ccガソリンターボ 
■最高出力 400ps/5850-7000 rpm 
■最大トルク 48.9kg-m/1700-5850 rpm 
■ギアボックス 7速デュアルクラッチ 
■サスペンション (前/後) マクファーソンストラット / 4リンク