7月初旬に行われたセレクトセールは例年以上の大盛況で終了。総売り上げも2日間で数十億円のレコード更新を叩き出し、馬産地界は相変わらずかなりの好景気ぶりだ。その大きな要因となったのが買い手の羽振りの良さでもあった。今年は史上2位の高額となる5億8000万円の取引きが出るなど、未だにケタ違いの購入がどこかしこで相次いだのである。中でもひときわ目立ったのが、ジェンティルドンナの全妹であるドナブリーニ2015をこれまた3億7000万円の破格値で落札したDMMドリームクラブ。その他、同クラブはリアルスティールの全弟や現役最強の呼び声が高いキタサンブラックの全弟など計3頭を期間中に購入。どこかで聞いた名前かと思うが、大元はネットビジネス最大手のDMM.comなのである。

既に耳に入っている人もいるだろうが、DMM.comは「DMMバヌーシー」というアプリの製作を発表し、この中で先に購入した馬を最大1万口で募集する。つまり、ユーザーはスマホ内で馬のオーナー権を取得し、数万円という単位から気軽に一口馬主の気分を味わう事が出来るのである。具体的なリリースは8月5日となり、詳細などはまた別記事で追って紹介したい。今回、特に焦点を当てたいのはその画期的なシステムである。

着目したいのは、競走馬として掛かる平均的な維持費を算出し、最初の募集額へ先に上乗せして価格を決定した点。つまり、アプリユーザーは最初の応募だけで自身が購入した馬のオーナーにいとも容易くなれるのである。本来なら、競走馬は厩舎へ預託するだけで月に数十万もの莫大な出費があるほか、意外なランニングコストが随所で必要となるのだ。実際、1頭単位で所有する馬主の人もその資金繰りに必死で大変という声を聞くほど。今回の1万口という募集数のお陰で、それらの個人負担分が極めて少なく済む利点が最も大きいのだ。これはまさに一口馬主業界の中でも盲点とも言えるのではないだろうか。

競馬ファンなら誰しもが一度は憧れる“馬主”のステイタス。が、現実はそう甘くなく、なれるのはほんの一握りの高所得者だけである。それが、このDMMバヌーシーでは感覚で疑似体験する事が出来、且つ出費も一度に1~数万円単位のかなり現実的なラインで設定されるというのだから実に面白い取り組みだ。しかも、そのラインナップは誰もが認める名馬たちの兄弟なのだからテンションは上がる一方ではないか。勿論、これだけの人数で割るのだから賞金的な分配は期待出来ないは承知の上。それでも、この良血馬たちのオーナーに僅かでも関われている喜びの方が遥かに大きい。ユーザーのニーズと運営側のリスク、また生産界にとってもこのビジネスが成功すれば馬の購買率が上がる事で一石三鳥以上の相乗効果が生まれるという着眼点はまさにお見事としか言い様がない。

実際に稼働してからは多数のシミュレーションを取って行きつつそのシステムを修正しては行くだろうが、競馬界を良い意味で大きく揺れ動かすであろうこの取り組みを今後も注目して追って行きたい。DMM.com、恐るべしである。