7月20日、米CNNは米政府当局者の話として、「北朝鮮が新たな大陸間弾道ミサイル(ICBM)もしくは中距離弾道ミサイルの発射実験を準備しているようだ」と報じた。その情報の信ぴょう性は不明だが、北朝鮮は今後も恐らくさまざまなことをやってくるだろう。

北朝鮮は、今春から立て続けにミサイル発射実験を繰り返している。それに対して、米国は空母を日本海に展開するなどし、「米軍が先制攻撃をするのではないか?」との懸念が広く報道された。

その間、北朝鮮の脅威については、新聞でもテレビでもさまざまな視点からの見方が紹介された。しかし、それこそ諸説が飛び交う状況で、実際のところは分かりづらい。その最大の理由は「根拠の希薄な臆測」が非常に多くみられるからだろう。

そこで本稿では、北朝鮮の核ミサイル問題を検討する上で留意すべき事項、特に何が「判明している事実」で、何が「推測」なのかを考え、そこから北朝鮮核ミサイル問題の今後の展開を予想してみたい。

在韓米軍撤退が北朝鮮の「交渉」

まず、北朝鮮サイドの「意図」は何か?

ここで分かっているのは、「北朝鮮は一貫して核とミサイルを開発してきた」という「事実」である。その理由に関して、北朝鮮自身は声明などで常にこう明言している。
 
「米国に対抗するため、自分たちも核大国になる」
 
つまり、敵国である米国に攻め滅ばされないために、対抗策として核ミサイルを手にする。それは自衛のための当然の権利だという言い分である。

これは核不拡散という国際的な利益に反する言い分であり、それがために国連安保理でも、北朝鮮は核実験と弾道ミサイルの技術を使ったいかなる発射実験も禁止されている。北朝鮮も国連加盟国である以上、安保理決議には従う義務がある。この点で、北朝鮮の言い分は通らない。

しかし、北朝鮮側からすれば、安保理決議よりも、自国(より正確には「金正恩独裁政権」)の安全保障が優先される。金正恩政権側の安全保障では、自分たちよりはるかに強大な敵国である米国から自分たちを守るためには、決定的な対米抑止力、すなわち米国本土にまで届く核ICBMを持つことが最優先される。良い悪いで言えば当然悪いに決まっているが、北朝鮮が独裁政権を維持するためには実に合理的な政策でもある。

従って、北朝鮮はこれからも核ICBM開発を止めることはないだろう。彼らはいまだ米国本土、特に心臓部であるニューヨークやワシントンに届く核ミサイルを保有していない。それを手にするまでは、金正恩政権の安全保障は確立しないのだ。

こうした北朝鮮の「目的」について、根拠が希薄なままメディアで定説化しているものに、「北朝鮮の狙いは米国と直接交渉することであり、その上で米国から体制保証を取り付けることだ」との説がある。こうした観点から派生した見方には「北朝鮮は米国を振り向かせるために挑発的に暴れているだけ」といった見方もしばしば見かける。

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黒井文太郎(ジャーナリスト ) ※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載