ホテルに沿って設置された壁(画像は『La Nouvelle République des Pyrénées 2017年7月24日付「Ils murent l'entrée du futur centre d'accueil pour migrants」(DDM)』のスクリーンショット)

写真拡大

難民問題に揺れるEUの中心国フランスは、居住許可取得の難しさなどお役所仕事の効率の悪さや消極的な受け入れ態勢により、難民申請数は国の規模に比べて少ない。「欧州連合統計局」のデータによると、難民危機が勃発した2015年において同国の亡命受入数は2万630人にすぎない。そんなフランス南西部の町のホテルに難民が収容されると知った近隣住民らが、ホテルの入り口を囲むように壁を設置したことを『La Nouvelle République des Pyrénées』など複数のメディアが報じた。

フランス政府は、入国したものの収容施設不足のため外で寝泊まりする難民達のために世界的ホテルチェーン“アコーホテルズ”系列の格安ホテル62館を購入した。ピレネー山脈の小さな町セメアックにあるホテル「フォルミュール1」もそうした中の一つであり、85人の難民を受け入れることがすでに決定している。

だがこの決定に対して24日の午前、セメアックの住民数十名が全長18メートル、高さ1メートル80センチもの壁をホテルの入り口を囲むかのように設置した。

この行為は一見、難民受け入れへの抗議のようだが、住民達の意図は違うものであった。壁の建設に関わった住民の代表ローラン・テイシェイラさんは「私達は難民受け入れに反対しているのではありません。むしろこうした人々のために何か行動を起こさなければと思っています」としつつも、「ここに元々住んでいる人達のことも考慮されるべきです」と説明する。

テイシェイラさんによると「人口約5500人の町セメアックでは85人もの難民に対応しきれない」というのが住民達の意見であるにもかかわらず、それが顧みられることなく突然受け入れが決定されたそうだ。「その過程の不透明さと性急に事が進んだこと」に納得できずにいるという。今のところこの壁の建設に対しては他の住民からの反対意見は出ておらず、また自治体からも勧告されてはいないとのことだ。

難民を受け入れたヨーロッパの各国では、国の思惑と住民の意志の相違からトラブルが多々発生しているが、特にフランスは抗議活動が目立っている。昨年、北部カレー近郊の「ジャングル」と呼ばれる難民キャンプの解体によって起こった暴動や、難民がイギリスに向かうトラックに勝手に乗り込むなどの行為が住民達の不安を煽り、難民受け入れの反対運動が起こっていた。

画像は『La Nouvelle République des Pyrénées 2017年7月24日付「Ils murent l'entrée du futur centre d'accueil pour migrants」(DDM)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)