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●低血圧は3種類に大別できる

「低血圧だから朝が苦手なんだよね」といった趣旨のコメントを、誰しも一度は見聞きした経験があるのではないだろうか。低血圧が原因と思われている不調はいろいろとあるが、実際のところ本当に低血圧と関係があるのだろうか。ウィメンズヘルスクリニック東京の知久正明医師にうかがった。

○拡張期血圧と収縮期血圧

低血圧を理解するには、まず血圧をきちんと理解する必要がある。血圧とは心臓から血液が送り出される際に「血管にかかる圧力」のことを指す。心臓が収縮したときの圧力が「収縮期血圧」で、心臓がふくらんでいるときの圧力が「拡張期血圧」と呼ばれる。別名で収縮期血圧が「最高血圧」、拡張期血圧が「最低血圧」とも表現される。

「若い人の血圧は拡張期血圧の方が上がりやすくなります。それは血管に弾力性があるため圧力が緩衝され、拡張期にその圧力がリバウンドしてくるからです。加齢とともに血管は硬くなるため、高齢者は収縮期血圧が上がりやすくなります」

日本高血圧学会のガイドラインは、最高血圧140mmHg以上、最低血圧90mmHg以上を「高血圧」と定義しているものの、低血圧の指標は明らかにしていない。ただ、WHOによる世界基準では、「最高血圧が100mmHg以下、最低血圧が60mmHg以下」を「低血圧」と定義している。

「日本では1980年代までは和食を中心とした高塩分食が中心であったため、最高血圧は全体的に高めでしたが、塩分を控えるようになった現在では低下傾向にあります。また、収縮期血圧は加齢によって上昇しますが、拡張期血圧は加齢とともに下がっていきます。高齢者の拡張期血圧が低くても『低血圧』とは呼びません」

○低血圧者の正確な数値は不明

日本人のおよそ3分の1から4分の1の人が高血圧を患っており、心筋梗塞や脳梗塞などの重大疾病につながるため、一般的にも認知され多くの人が治療にあたっている。一方で、低血圧の患者は若い女性に多く、症状が軽い場合は病院やクリニックに通院しているケースが少ないため、正確な数値が把握できていない。

「低血圧には大きく分けて3種類あります。けがなどによる出血や心臓などの病気が原因で起きる低血圧を『急性低血圧』と言い、緊急を要します。『慢性持続性低血圧』には、原因不明でおこる本態性低血圧やホルモンなどの病気で起こる二次性低血圧などがあり、治療対象となることもあります。突発的に起こるのは『起立性低血圧』。急に立ち上がった瞬間に立ちくらみが起こるのが典型的な症状です。自律神経の障害の場合が多いのですが、神経系などの病気を持っていても起きることがあります」

●自律神経の乱れを整えて体の不調とサヨナラ

普段の運動不足や寝不足などにより血圧を正常に司る機能が弱っていても、起立性低血圧になりやすいとされている。ただ、「若い方が低血圧によって不調を訴える原因の多くは、自律神経の乱れからきます」と知久医師は話す。

○自律神経の役割

私たちは普段から意識していなくても、交感神経が緊張して血管を収縮させたり、副交感神経が血管をリラックスさせたりすることで、血圧のバランスを保っている。起立性低血圧は、この自律神経のバランスの崩れなどから生じるとのこと。

例えば過度なストレスにさらされていると、血圧を上げる交感神経が常に優位に働く。するとバランスをとろうとして副交感神経が過剰に働いて血圧を下げてしまうため、急激な立ちくらみやめまいをきたし、ひどいときはその場で倒れてしまうことも。

「自律神経の乱れを整えるためには、規則正しい生活が大切です。適度な運動、バランスのよい食事、十分な睡眠をとることが必要です。また、ストレスや疲れがたまっているときに深呼吸やため息をするのも、交感神経の緊張を和らげるため対策の一つになります」

交感神経は、午前中と夕方にかけて2回ほど優位になり、昼食後や夜には副交感神経が優位になる。そのため、スポーツや仕事などの活動は午前中や夕方頃に行うほうが効率的。昼食後は体をリラックスした状態にさせておくのが理想的だ。短めの昼寝がとれるとベストだが、勤務中はなかなか難しい。少なくとも、昼休みの時間はゆっくり過ごすように心がけるのがよいと知久医師はアドバイスを送る。

また、自律神経の乱れを整えるために運動、食事、睡眠のそれぞれにおいて気をつけたほうがよいポイントをうかがった。

運動

「適度な運動」とは、一日20〜30分の運動を少なくとも週3日間実施するのが理想的とのこと。「1駅余分に歩く」などでもよいそうだが、自然が豊かな公園など、緑の中で心地よさを体感して歩くほうが一層リラックス効果があるという。

食事

バランスのよい食事をするうえでは、体のエネルギー源である糖質・脂質・タンパク質をしっかりとり、ビタミンやミネラルも補充することが大事になってくる。

例えば、糖質は脳の活動を支えているため、低血糖になると頭が働かず生産性が著しく落ちてしまう。脂質は心臓の動きを支えており、良質な油、特に魚の油は効果的と言われている。そして、肉や魚などの動物性タンパク質や、大豆などの植物性タンパク質が基礎代謝を上げる筋肉を作るものであることは、広く知られているところだ。

睡眠

理想の睡眠時間は7〜8時間くらいで、6時間未満だと心臓病などのさまざまな疾病リスクが上昇するとされている。また、「疲れているから」と長時間寝てしまうのも自律神経の乱れを引き起こすため逆効果だという。

「低血圧だから朝起きられないという方がいますが、低血圧と寝起きには明らかな因果関係はなく、慢性疲労や睡眠不足のほうが原因と考えられます。ただ、私たちは『寝だめ』ができないので、とれなかった睡眠の分としては30分くらいの昼寝などを取り入れるといいでしょう」

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