JDIが銀行に1000億円の金融支援要請をしたことから見えてくること

写真拡大

 27日付日本経済新聞は、経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)が、筆頭株主で官民ファンドの産業革新機構の債務保証を条件に、主取引銀行に1000億円規模の金融支援を要請していることを伝えた。資金使途は、石川県の能美市と中国江蘇省の2カ所の工場での生産中止や人員削減に伴う構造改革費用、そして運転資金となっている。

【こちらも】ジャパンディスプレイは現在の苦境をどう切り抜けるのか?

 JDIが主力としていた液晶パネルが、韓国や中国メーカーの台頭で価格競争力が低下したことに加え、アップルが今秋発売するiPhoneの一部モデルに有機ELを採用し、18年モデルでは発注量をさらに拡大する見込みにあるため、液晶パネルの需要減少が進むとの判断のもとに、抜本的なリストラを進め赤字体質からの脱却を目指すことになった。特に能美工場は年内をめどに生産を停止し約500人の従業員は、昨年12月から稼働を始めた白山工場(石川県白山市)に配置転換する。同時に固定費削減のため、退職金積み増しによる数百人規模の早期退職も募集するとしている。

 一見すると前向きとは言い難いが、有機EL業界の変革を予期させるニュースだ。6月30日に住友化学が有機ELパネルの製造コストを半減させる新素材の実用化にメドをつけたことが報じられた。この開発では海外のパネル大手やジャパンディスプレイの関連会社のジェイオーレッド(JOLED)とも協力関係にある。

 「高分子型」の有機ELは発光素子をインク化して塗布することが欠かせないが、発光素子形成の精度を高めるところにネックがあった。住友化学は印刷するように安定的にパネルをつくる新素材を開発。発光素子をインク化して塗布するタイプの有機ELは、従来の真空装置を使う「蒸着」タイプと比べて製造工程が少なく、コストを大幅に削減できる見込みだ。

 また、「蒸着」タイプの有機ELで大型テレビ市場を席巻し、スマホ向け市場では先行している韓国のサムスン電子やLG電子を意識して、「中型から徐々に市場を拡大し印刷型有機ELを10型以上の領域でデファクトスタンダード(実質的な標準)にしていきたい」とJOLED 社長(JDI会長)の東入來信博氏は5月に語っていた。しかし、全てのサイズをマーケットに出荷できることになれば、ビジネスチャンスは格段に広がる。ただし、住友化学の新素材は、国内外のパネルメーカー向けに19年から量産する見通しであり、即効性を期待することは禁物であろう。

 何はともあれ、今回の資金調達が生産体制を一新し、総合パネルメーカーへと生まれ変わる、JDIの最初の一歩であることを強く願うものである。