南アフリカのミッドランドの自宅で撮影に応じる、南アフリカ唯一の女性の伝統的首長、マサラナボ・モジャジさん(2017年4月24日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】マサラナボ・モジャジ(Masalanabo Modjadji)さん(12)は、将来、医師になることを目指している女子児童だ。

 しかし、彼女は普通の子どもではない。雨を降らせる神秘的な力を宿しているとされる、南アフリカで唯一の女性の伝統的首長だ。

 モジャジ一族の女王は、南アフリカ北部リンポポ(Limpopo)州で暮らす民族バロビドゥ(Balobedu)の世襲首長で、マサラナボさんは2005年に母親である前女王が死去した際、生後3か月で王位を継承した。18歳になったら、正式に女王の座に就くことになっている。

 AFPは今回、彼女と会うまれな機会を得ることができた。女王は現在、学業のため、バロビドゥ民族出身で、与党アフリカ民族会議(ANC)の議員でもある後見人のマトール・モチェハ(Mathole Motshekga)氏とともにヨハネスブルク(Johannesburg)近郊で暮らしており、取材にはモチェハ氏が女王に代わって応えた。

 普通のセダン型の車で学校から帰宅したマサラナボさんは、学校のトレーニングウェアから黒と白の伝統的な衣服に手早く着替え、色とりどりのビーズでできたヘッドバンドを身に着けた。

 そして後見人の隣に静かに座ると、ほほ笑みながら注意深く耳を傾けた。

「彼女は生まれながらにこの地位にあることを知っています。だから急ぐ必要はありません」モチェハ氏はそう話し、女王は「雨の女神の化身」だと説明した。

 さらに「世界は近代化しており、彼女の臣下らも教養のある人々になるでしょう。だからこの時代に合わせて、彼女自身も教育を受けることを望んでいます」と語った。

■女王の義務

 マサラナボさんが王位に就くことになっている先祖代々のモジャジスクルーフ(Modjadjiskloof)村は、ヨハネスブルクの北東約400キロの肥沃(ひよく)な谷モロトツィ(Molototsi)にある。

 現在のジンバブエ南東部を起源とするこの君主制は、200年以上もの間女性によって統治されてきた。

 母親は、歴代の女王の中で初めて読み書きを習得した。英語を話し、コンピューターを使いこなし、車の運転もできた。

 長年にわたる運動や継承争いの末、バロビドゥ民族の女王は昨年、アパルトヘイト(人種隔離)以降では初めて、南アフリカの法律の下で正式に認知された。

 これにより、新たに民主化された南アフリカにおいて民族の首長を含め全人種が選挙や政策立案に関与できることを目的に1996年に採択された新憲法の下、女王が18歳になった際には、マサラナボさんの王族は政府から助成金を受け取る資格を得る。

■毎年恒例の雨乞いの儀式

 大学生の兄がいるマサラナボさんは、学校が休みの期間中、モジャジスクルーフにある王宮に赴き、早期の伝統教育を受けている。

 モジャジ一族は、南半球の春にあたる時期に、雨乞いの儀式を執り行うのが伝統となっている。

 臨席は王族だけに限られている儀式は、5週にわたって5か所の異なる聖地で行われ、女王が雨乞いの祈りを主導する。

 もし全てが順調に進めば、最終日にはその季節で初の降雨がある。最近、相次ぐ厳しい干ばつに見舞われている南アフリカにとってはうれしいニュースとなるだろう。

 儀式では、特別な牛と醸造酒が用意され、土足厳禁の王宮の中庭で歌や踊りが奉納される。

 モジャジ王族協議会のジョン・マラッジ(John Malatji)氏によると、「(円形の中庭の真ん中に連れてこられた)動物(牛)に、その特別な醸造酒を飲ませる」という。

 その後、残った醸造酒は、若者や高齢者を含めた一族の間で分け合い、その後、雨乞いの祈りが唱えられる。

■「男性でもあり女性でもある」

 正式に女王の座に就いた後、マサラナボさんは未婚女性数人と縁組し、通常は夫が新妻の家族に対して支払う「ロボロ(婚資)」をその家族たちに支払う。

 結婚後、妻たちは他の王族関係者たちとの間で子どもをもうけ、生まれた子どもたちは、女王の実子とみなされる。女王自身も子どもをもうけることはできるが、相手は親族のみに限られ、その親族が誰であるか明かされることはない。

 モチェハ氏は、「女王は、男性でもあり女性でもある。そうして一族は拡大していくのです」と語った。
【翻訳編集】AFPBB News