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 スズキは24日、静岡県・牧之原市にある相良工場で、始業前に約5分間行っていた任意の体操などに未払い賃金があったとして、島田労働基準監督署から是正勧告を受け、約1000万円を支払ったことを明らかにした。

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■何が商品力か?社会は労働者が作り上げている

 自動車産業で忘れてはならないのが「生産技術」だ。「製品の魅力が自動車会社の業績を決める」ものと考えている人が、自動車ジャーナリストを含めて大多数だ。もちろん製品の魅力が一定のレベルに達していなければ問題外だが、殆ど差のない状況では「安く・タイミングよく・品質が良い」ことが勝負を決める。

 この3つの目標を飛躍的に高めたのが「トヨタの看板方式」だった。半世紀以上前から「多品種少量生産」を目指したこの生産方式は「順序生産」まで徹底して現在も進められており、世界の製造業の方向性を決めている。商品力と同時に「資金効率」を飛躍的に高め、日本経済の高度成長をけん引してきた大発明だった。

■工場労働者が誠意ある人格であること

 この生産方式を推し進めるキーパーソンは、工場労働者だった。労働者は「自ら考え、カイゼンを進める力」を必要としている。この方向性は社員の「マナーが低下」しては成り立たないのだ。「生真面目に誠意を持って」仕事にあたることが100%必要なのだ。さもないと車の品質が成り立たなくなる。

 その意味では三菱自動車の問題は「基本から成り立たない」のだ。VW、クライスラー、ダイムラーなど排気ガス規制、燃費規制で制御プログラムの不正を行っていたことは、自動車産業にとって危機をもたらすもの。AIに移行する現在、さらに品質保証を確実にしないと、危険が生じ社会問題化する危険がある。

 この「品質保証」を担うのが「工場労働者」だ。工場労働者が「生真面目に誠意をもって」仕事に取り組まないと三菱自動車になる。つまり死者が出るのだ。労働問題は労働者の働く姿勢も変えてしまう。スズキの場合「安全のための体操」の位置付けがあいまいであったと感じる。労働者自身の安全を確保するための「体操」は重要で、それが任意の状態であったことが驚きだ。

 また過去の習慣から始業前に体操しておくことを「自分の安全のため」と社員が意識できていないことも大きな問題だ。スズキの「品質保証」に対する認識が、社員全体に浸透しておらず、企業側の体制もあいまいになっていることが、問題視されねばならない。これは「コーポレートガバナンス」の最重要課題であり、弁護士によるマニュアル作りだけでは実現できない基礎的企業統治だ。

 今回、体操の時間が操業時間前であり、参加は任意であるとの認識が社員に徹底していなかったので、労働基準法違反とされたのだ。しかし、これも「安全のための体操」であることから疑問が湧く。

 過去「QCサークル」などを時間外に行うことが指導されてきた。就業時間外に仕事の進め方の研究をするのだ。これは「労働基準法違反」の可能性があり、現代では勧められる方法論ではないが、社員が安全や資金効率など自覚するには必要なことで、就業時間内に行うのであっても続けられなければならない。

■安全はモラルの高い労働者が作り上げるもの

 どのような製品も、品質を保つのは「労働者の高いモラル」だ。トヨタの豊田章男社長のスローガン「もっと良い車を作ろうよ」は、「生真面目で誠意ある人格」を求めている。これはどのような産業でも、行政でも、団体でも同じことで、この人格なくしては社会が成り立たない。

 役所には「国民のためにもっと良いサービスをしようよ」と言いたいのだ。「他者に対して誠意を持つ」ことが社会に貢献することであり、他者を「ぞんざい」に扱うことは、社会に対して、人類に対して「裏切り」となると自覚すべきなのだ。

 スズキの問題は、「たかが体操」「労働問題」とだけ捉えることのできない「深刻な社会問題」である。このまま労働者、資本家が「生真面目で誠意ある人格」を目指していないと、社会の根幹である「品質保証体制」が崩れてしまう。高速道路を疾走する車を見れば、「品質保証」は社会システムの根幹であることが、良く分るはずだ。