【眠れない本5選】好奇心を刺激する夜更かし必至の不眠本(伊藤裕一)

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フミナーズをご覧のみなさん、こんばんは。俳優・脚本家の伊藤裕一です。
前回の「眠れる本」の記事では、眠る前の読書におすすめの本を、本選びのプロ・間室道子さんに教えていただきました。もう本を読んで、ぐっすり眠れるようになりました?
でもね。
眠れる本の紹介は、あくまで前回の話。今回はどうかご覚悟を。
ちなみにですが、この記事のタイトルはもうご覧になってますよね?
何かの間違いではございません。
快眠法を紹介するWebメディアのフミナーズが、不眠本を紹介します!!
これはすごい! バイキンマンが、指の間まできれいに手を洗うようなもんじゃないか!

目次

考え事やモヤモヤで眠れない夜は、読書を楽しむのもアリ深夜の書店に来る人は、夜更かし好きなロマンチスト?フミナーズ読者の好奇心を刺激する「眠れない本」5選!『サキ短編集』 サキ 新潮文庫『チョコレート・コスモス』 恩田陸 角川文庫『なんらかの事情』 岸本佐知子 ちくま文庫『残穢(ざんえ)』 小野不由美 新潮文庫『かいじゅうたちのいるところ』 モーリス・センダック 冨山房気になる本を読んでみたたくさんの素敵な本や物語に出合うコツ

 

考え事やモヤモヤで眠れない夜は、読書を楽しむのもアリ

攻めるなぁ…フミナーズ。でも、そういうところが好きなんだよね。
ただ、どうか勘違いされませんように。
今回の記事は、みなさんを眠れなくするための本を紹介するわけではありません。(そんな意地悪はしません)
眠れない夜、考え事やモヤモヤに支配された頭の中を、一度クリアにするために、お話の世界に逃げ込んで空想を楽しみませんか? という意図なんです。
前回に引き続き、本選びのプロ・代官山 蔦屋書店コンシェルジュの間室道子さんに、眠れなくなる物語を教えていただきました。

間室 道子(まむろ・みちこ)さん大人の知的好奇心を刺激する“森の中の図書館”というコンセプトで作られた代官山 蔦屋書店のシニア・コンシェルジュ。日々、膨大な量の書籍に目を通しており、読書量は年間約720冊。
書店での接客のほかに、書評家としても活動中。現在『プレシャス』、『婦人画報』などに連載を持つ。
間室さんの戦略的いい夢を見る方法は、「夢に見たい場所へ足しげく通う」こと。(夢に見るほどハワイ大好き)

深夜の書店に来る人は、夜更かし好きなロマンチスト?

代官山 蔦屋書店は深夜2時まで営業しているということですが、深夜の本屋さんに足を運ぶ人って、どんな人達なんですか?

 

クリエイター、デザイナーの人が多いですね。仕事終わりにゆっくり資料を探しに来ているのではないでしょうか?
眠れないで苦しんでいるというよりは、リラックスして本探しを楽しんでいる人達が多い印象ですね。

 

雰囲気も素敵ですし、夜更かしも楽しめそうですね。

 

「夜の本屋さん」と言うと、なにかファンタスティックでロマンチックなことが起こる予感がしますよね。とってもムーディですよ。

 

フミナーズ読者の好奇心を刺激する「眠れない本」5選!

そんな、夜の本屋さん好きやフミナーズ読者のために、眠れなくなるほど素敵な本をご紹介できればと思います。
間室さんの中で「眠れなくなる物語」の条件、王道ってありますか?

 

続きがどんどん気になるほど面白い物語、ゾクッとする物語は睡眠時間を削ってしまいますね。どうせ眠れないなら、眠れなくていいや! 今日は徹夜しちゃうか! という気分で読みましょう!

 

潔い!

 

『サキ短編集』 サキ 新潮文庫

サキは短編の名手といわれている英国の作家です。英国には「泊まり客の枕もとに、オー・ヘンリー ※、あるいはサキ、あるいはその両方をおいていなければ、女主人として完璧といえない」という文学者の名言があるそうです。
サキは冷笑的でゾクッとするような作風で、まさに眠れぬ夜の密かな愉しみにうってつけ!

※オー・ヘンリーは、サキとともに短編の名手といわれている作家。サキとは対照的に、オー・ヘンリーは情緒的で庶民に親しまれやすい作風。

 

この本の帯に、「ユーモアと風刺」とありますが、眠れない夜に特におすすめの短編はどれでしょうか?

 

サキはツイストの効いたラストが多い作家なんですが、話がどう転がっていくのかまったく予測できない。
人生に行き詰まった青年が、死体と入れ替わって人生をやり直そうとする『ある殺人犯の告白』や、神経衰弱を患った男の恐怖体験を描いた『開いた窓』が、特におすすめですね。

 

今、本をめくってみたら、1つ1つが結構短いお話なんですね。

 

そう。だから手軽ですぐに読み終えてしまうんです。

 

『チョコレート・コスモス』 恩田陸 角川文庫

分かりやすくご紹介すると、恩田陸版『ガラスの仮面』といったところでしょうか。演劇一家に生まれた女優と、観る者の心をかき乱す芝居の天才少女が、演劇界で切磋琢磨する様子を描いた作品です。
先ほど紹介した、サキの短編『開いた窓』がオーディションの題材として登場するなど、奇妙なオーディションがいくつも出てくるので、俳優の伊藤さんもハマると思います。
特におすすめの見所は、「自分は喉から手が出るほど演劇の世界にいたいのか?」と悩んでいるサラブレッド女優が、演技に覚醒するシーンです。

 

覚醒…ですか。

 

長いので、部分読みがおすすめなんですが、どこで話を止めていいのか分からなくなっちゃう、眠れない夜に一気読み必至の作品です。そういう意味で「眠れない本」なんです。

 

読み始めちゃったら、ハマっちゃう予感がします。止まらなくなるのは怖いなぁ。次の日が遅入りの日に読もう。

 

『なんらかの事情』 岸本佐知子 ちくま文庫

翻訳家としても人気がある、岸本佐知子さんのエッセイ集です。現実の話なのか作り話なのか境目があいまいで、へんてこな妄想話ばかり! 眠る前に読むと想像が膨らんでしまって眠れなくなりますね。

 

「脳が脱臼するエッセイ集」という風にご紹介いただきましたが、脳が脱臼するってどういう意味なんでしょうか…?

 

脳がすべるような感覚だと私は思っているんですが、口がすべる、手がすべるという感覚に似ていると思ってください。

 

…こればっかりは、読んで体験してみないと分からないかもですね。おすすめのエピソードはどの作品でしょうか?

 

「ダース・ベイダーはどうやって眠っているのか」について、妄想して書いた『ダース考』がおすすめです。

 

気になる…。自分でもいろいろ妄想して眠れなくなっちゃいそうですね。

 

『残穢(ざんえ)』 小野不由美 新潮文庫

ホラー的な要素を含むミステリーが得意で女性に大人気の作家、小野不由美さん作のドキュメンタリー・ホラーです。
知的なミステリーは、作家との知恵比べなんですが、ホラーは逆に作家の世界に完全に身を委ねるものなんです。

 

「布団をかぶる」ほど怖いシーンがあるとおっしゃっていましたが…。

 

ホラーには2タイプあって、一点集中型(血がドバーッなど)とじわじわ型(伏線が謎めいている恐怖)があるんですが、『残穢』はじわじわ型のホラーです。

 

日本的ですね。一つのシミが気になっちゃうとこから始まるみたいな。

 

この物語の主人公であるホラー作家の元に、恐怖体験をつづった一通のファンレターが届くところからお話が始まります。
私はこの作品は小野不由美さん自身の経験なのでは? と思っているんですが。

 

もう怖い…。

 

手紙の内容は、送り主の自宅マンションで起こる怪奇現象について書かれているのですが、ホラー作家はこの怪談話にデジャブを感じます。気になって調べ始めるんですが、そんな作品はどこにもない。
で、ふと昔のファンレターを整理してみると、別の送り主からのファンレターにも同じような怪奇現象のことが書かれているんですよ。

 

どちらの手紙も同じマンションから届いたんでしょうか?

 

同じマンションですが、別々の部屋だったんです。

 

じゃあ、マンション全体で何かあった系…?

 

ホラー作家と送り主は、このマンションで過去に何か起こったのか気になって調べ始めます。でも、殺人や自殺などの事件は起こっていない。それにもかかわらず、人が居つかない部屋があるんです。

 

え〜!?

 

この2人は共に数年間にわたり調査を続けます。その結果、この土地自体に穢れ(けがれ)や因縁があり、この穢れはどこからか感染してきているんだと気づきます。
最後には、全てを語ると呪われてしまうから、お話の一部を伏せて語り継がれる、北部九州最強の怪談に行き着くんですよ。
物語自体は淡々と描かれているのですが、リアリティがあって実生活まで怖くなってしまいます。

 

ひえ〜…。読みたいけど、数日間眠れなくなっちゃいそうですよ。
(語り部としても超一流の間室さんのトークで、終始鳥肌立ちまくりでした…)

 

『かいじゅうたちのいるところ』 モーリス・センダック 冨山房

夜中に子どもが何をやっているのかを描いた大傑作です!

 

これは、映画にもなりましたね。

 

この作品を知っていて、既に読んだことがある方も多いと思いますが、読む視点を変えてみると面白い発見があります。
子どものころに読むと、奇妙な姿のかいじゅうたちに目が行くかと思いますが、大人になると時間に目が行くと思んです。視点を変えて読んでみると、かいじゅうが出てくる部分はずっと夜のシーンなんです。
私はこの作品は、夜の魅力を描いた本なのでは? と解釈しています。

 

この本の作者が言っていることではなく、間室さんご自身の解釈なんですか?

 

はい。子どもにとって、夜はすごく魅力的なんだと思うんです。この本は夜の魅力をとてもよく描いていると思います。

 

確かに、男の子がかいじゅうたちの世界に夢中になっているシーンは、すべて夜の風景ですね。気持ちが離れると空が明るくなってきてる。面白いなぁ。

 

気になる本を読んでみた

『なんらかの事情』を読んでみました。

なんだかとてもフィーリングが合うんです、岸本佐知子さんの文章と思考回路。
どうりで「脳が脱臼する」感覚がイマイチ分からないわけだ…。僕はとっくに脳が脱臼しているようです。
先天性脳脱臼だったことに、この本を読んで気づかされました。
もちろんここまでのクオリティではないですけど、僕もブログにこんなこと書いてたなぁなんて思っちゃいましたし、『才能』の書き出しを見て、僕もこんなこと言いかねない! って、うずうずしちゃいました。
「君ならどう思う?」って聞かれてるみたいな感覚。
想像力豊かな人が眠る前にこのエッセイを読んだら、岸本さんからバトンを受け取って、どこまでも妄想を突っ走らせてしまうんだろうなぁ…。
うまーく、夢とつながないと、延々と思考を巡らせて眠れなくなってしまうであろう、危険な作品です。

『チョコレート・コスモス』を読んでみました。

これはもう、俳優としては読まないわけにはいかないですよね。
背表紙に書かれた言葉もまた、たまりません。
「芝居の面白さには果てがない。一生かけても味わい尽くせない。」
だから辞められなくなってしまうんです。
 
この本は最初っから読む人の心を鷲掴みにします。天才少女との突然の出会い。一気に彼女から目が離せなくなります。でも、すぐに見失う。この瞬間、ハマってしまいました。
僕は感覚派とか天才肌と呼ばれる俳優ではなく、演技を分解したり、組み立てたりするのが好きなタイプなので、天才少女の演技プランをどうにかこうにか理解しようと躍起になったり、その解釈の素晴らしさに息を呑んだり。
でも、これは僕が俳優だから楽しめたというわけではありません。この本のすごいところは、この業界のことを全く知らなくてものめり込めること。前情報は一切いりません。絶妙な分かりやすさで、演劇界を描いています。
 
見所は「奇妙」なオーディションのシーン。間室さんは「奇妙」と表現していましたが、実はこのお話に出てくるようなオーディションが実施されることは少なくありません。
だから、この本を読んで唯一後悔したのが、オーディション審査員を「その手があったか!」と驚かせるようなプランを、先にやられちゃったこと。
もし今後、僕が同様のオーディションに参加するとしたら、オーディションに参加する、ベテラン・若手最有力候補・アイドル・天才の全員の手の内を知ってしまっているわけです。もう、おんなじことはできないじゃないですか。そこからは「自分ならどうするか?」って考え始めてしまって眠れませんでしたよ。いろいろ自分でもやってみました。
サキの短編『開いた窓』も自分が演じるとしたらどうするのか考えながら読みましたし…。今でも悩んでます。
このオーディション、明日来たらどうするんだろう、僕は…。
 
この作品には、俳優であることの苦悩や、俳優には何が必要なのか、なんて話も出てきます。
これは、俳優ならば誰しもが直面する壁。この作品なりの答えが描かれていたのはとてもうれしかったです。
登場人物の悩みが晴れた途端、周囲の景色が鮮明に見え始めたように感じました。
悩みが晴れた瞬間の視野が広がる感覚を、本を通じて追体験しているようで、爽快な気分になったのを覚えています。
 
ただ、ここまで560ページ。寝る前に読むなら、相応のご覚悟を。
そして、あとがきを見て愕然としました。なんと3部作! しかも、今連載雑誌が休刊中だと!?
続きが読みたくて眠れないじゃないか!!
しかし、僕も筆は早い方ではありません。
脚本を待ってくれている人たちの気持ちが、痛いほどわかりました。書かねば。

たくさんの素敵な本や物語に出合うコツ

人生の時間は限られているので、最後まで読まずにどんどん途中下車して、たくさんの作品に触れることが大切だと思います。

 

途中下車ですか。

 

好みにあわない、つまらない、内容が自分のレベルよりはるかに下だと思う本はもちろん、今の自分には理解できないけれど、おそらく質が高い本なんだろうなという予感がする本も、途中下車していいと思います。

 

時間をおいて、また読むんですね。

 

そう。そうすることによって、本の内容を理解するとともに、自分の成長を感じることができるんです。

 

本の世界が、お芝居や映画と違うのは、共通のビジュアルイメージがないことですよね。
だから、誰しもがおんなじビジュアルイメージを持たなくてもいい。
絶世の美女が出てきたら、自分好みの絶世の美女を思い浮かべればいい。
作者の世界に身を委ねつつ、でも、色を塗るのは自分自身。
わがままに、自分の趣味嗜好たっぷりにイメージしていいのが「本」なんだと思います。
近所の公園に彼らを登場させるのも、映画で見た憧れの場所に行ってみるのも、ファンタジーなんてもう、イメージし放題!
誰の目も気にせず、存分に笑ったり泣いたりできるのも、眠る前の読書の魅力ですね。
 
もし、みなさんが考え事やモヤモヤに悩まされて眠れないときには、物語の世界に没頭して、いっそのこと頭の中をイマジネーションでいっぱいにしちゃいましょう。

 
取材協力:代官山 蔦屋書店
 

●【眠れる本5選】睡眠導入・快眠する物語の条件とは(伊藤裕一)

 
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