画像提供:マイナビニュース

写真拡大

●独自路線を突き進むトーンモバイル

"格安"な料金で人気を博し、大手キャリアからユーザーを奪って急成長しているMVNO。そうした中にあって、ハードからソフトまでを自社で手掛け、子供やシニアをターゲットにするなど、独自色を打ち出して販売拡大を進めているのが、カルチュア・コンビニエンス・クラブ傘下のトーンモバイルだ。同社があえて他社とは一線を画す戦略を取る理由はどこにあるのか。

○CCC傘下ながら独自性の強いサービスで注目

ここ数年来、大手キャリアからネットワークを借りて、“格安”な月額料金でモバイル通信サービスを提供するMVNOが人気を獲得するようになった。最近では大手キャリアが、MVNOなど格安なサービスに対抗するため安価な料金プランを提供するようになったことからも、その影響の大きさを見て取ることができるだろう。

だがそうしたMVNOの中にあって、「スマートフォンが安く使える」というMVNOの王道の施策に力を入れるのではなく、独自の方針をもってサービス展開している企業もいくつか見られる。そのうちの1つとして挙げられるのが、レンタルビデオショップの「TSUTAYA」などで知られるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の傘下企業であるトーンモバイルだ。

実際、トーンモバイルがMVNOとして展開する「TONE」のサービス内容を見ると、他のMVNOと比べ大きく異なる戦略を取っていることが分かる。多くのMVNOはSIM、つまりネットワークのみを提供し、端末は別に購入してもらう、水平分離型の販売方法が主流だ。だがTONEはスマートフォンとネットワーク、サービスを一体で提供し、全てのサポートをトーンモバイルが請け負うなど、キャリアと同じ垂直統合型の販売手法をとっている。

通信料は月額1,000円と安いが、通信速度は500〜600kbpsと低速で、動画の視聴やアプリのダウンロードをする時は別途高速通信ができるチケットを購入する必要があるという点も、独自性の強さを感じさせる。音声通話に関しても、通常の音声通話を利用するには別途料金を支払う必要があり、標準で用意されているIP電話の利用を推奨。IP電話では利用できない緊急通報に関しても、ソフトウェアで対応できる別の手段を用意している。

ハードウェアに関しても、トーンモバイルが提供するスマートフォンは基本的に1機種のみで、カラーもホワイトの1種類のみと選択の余地がない。しかも販売されるスマートフォンはトーンモバイルが独自に開発・調達したオリジナルモデルであり、採用するOSは標準的なAndroidながら、通常のAndroidでは実現できないさまざまな制御ができるよう、独自のミドルウェアを搭載するなど大幅なカスタマイズが施されたものとなっている。

●子供とシニア重視の戦略

○ターゲットはスマホの中心ではない子供とシニア

ターゲットとするユーザー層にも特徴がある。多くのMVNOは、大手キャリアから既存のスマートフォンユーザーを奪う戦略を取っていることから、ターゲットは20〜40代くらいの、スマートフォンを積極的に利用する人達が中心となる。だがトーンモバイルは、あえてその中心となる層は狙わず、スマートフォンの利用が少ないとされる子供、そしてシニアをターゲットとしているのだ。

実際、トーンモバイルが力を入れているサービスを見ると、その狙いがよく理解できる。7月25日に同社が実施した発表会では、子育て世代向け女性誌「VERY」とコラボレーションし、親からの要望に応えるべく、中学生までは夜10時から翌日の朝6時まで、スマートフォンを利用できないようロックをかけられる機能を提供することを発表している。子供向けの対応とはいえ、通信事業者が自ら積極的に“通信させない”取り組みをするのは異例中の異例だ。

さらに同日には、指定の場所に訪れると、自動的にロックがかかる「ジオロック」機能や、親子で紙に約束事を書き、それを撮影することで、利用時間や使えるアプリを決められる「親子の約束」などの機能を追加したことが発表されている。しかもこれらの機能は独自のハードウェアと連動させていることから、親世代よりもスマートフォンに関する知識を豊富に持つ子供であっても、容易に制限を解除できない仕組みになっているという。

一方シニア向けとしては、やはりスマートフォンに馴染みがなく不安や抵抗感を抱く人が多いことから、安心して利用できる仕組みに力を入れている。フィーチャーフォンからのアドレス帳移行や、リモートなどによるサポート機能を標準で提供するのに加え、最近ではあまり力を入れなくなった紙の説明書に、あえて力を入れて取り組むなど、不安を取り除くための施策に注力している。

さらにスマートフォンに馴染んでいない人に向け、テキストの入力を音声でしやすくする仕組みを提供するほか、スマートフォンを持って歩くとTポイントが貯まる仕組みなども用意。また離れた場所に暮らす家族に安心感を与えるべく、歩数が一定に達していない場合は家族に通知が届くなど、シニアの見守りに関する機能も充実させている。

●レッドオーシャンには後から参入

○MVNOのレッドオーシャン化を見越した戦略

トーンモバイルでは、子供、そしてシニア世代を獲得した後に、スマートフォンのメインユーザーを獲得する考えを持っているとのこと。なぜメインとなるユーザー層ではなく、そうではないユーザー層の獲得を優先しているのだろうか。

そこにはMVNO市場の動向が大きく影響しているようだ。急速に人気を高めているMVNOだが、参入障壁も低いことから、既に600社を超える企業がMVNOに参入しているとされている。それだけ多くのMVNOが参入していることからMVNO同士の競争も激しくなっており、日本通信やNTTぷららなど、コンシューマー向けサービスから撤退するMVNOも徐々に出てきている。

実はトーンモバイルの前身は、インターネットサービスプロバイダー(ISP)大手のフリービットが、独自にMVNOとして展開していた「フリービットモバイル」であり、トーンモバイルの代表取締役社長を務める石田宏樹氏も、元々はフリービットモバイルの社長であった(現在は会長)。現在のMVNO同様、参入障壁が低く多くの事業者が参入したISP事業で勝ち抜いてきた石田氏は、フリービットモバイル時代からMVNOが将来的に価格競争に陥る可能性を予測。当初より端末と通信、サービスを提供する垂直統合型のビジネスモデルを提供するなど、独自色の強いサービスを展開していたのだ。

そうした独自色の強いフリービットモバイルが、CCCとの提携、そしてCCC主導のビジネスへと移行したのに伴い、子供やシニアなど従来よりターゲット層を絞り込みつつも、CCCの持つ販売網を生かして拡大する戦略をとるようになった。この独自戦略が功を奏し、例えば子供向けの取り組みに関しては、公益社団法人全国子ども会連合会や東京都などからの推奨を獲得するなど、差異化を図ることには成功しているようだ。

だがいずれはトーンモバイルも、子供やシニアだけでなく、スマートフォンのメインとなるユーザー層を狙いに行くべき時が来る。独自の工夫により、あえてレッドオーシャンを避ける戦略を取り続ける同社だが、今後はより先の市場拡大に向けた展望を明らかにする必要もあるといえそうだ。