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通勤ラッシュへの対策として、「時差Biz(時差ビズ)」なるキャンペーンが始まった。東京都が呼びかけたもので、一部の企業や自治体なども参加。時差通勤をおこなうことで通勤ラッシュを和らげ、テレワークなども推進する目的がある。

具体的な運用については、参加する企業ごとが決めていくことになるが、一般の企業では始業時間を早めたり、遅らせたりする。あるいは、フレックスタイムの導入が現実的な選択肢になりそうだ。

しかし、日本ではサマータイムの導入が提唱されながらも実現しておらず、霞が関ではじめた「ゆう活」も残念ながら一般には広まらなかった。今回の取り組みは、成功するのだろうか。あるいは、日本では、サマータイムが根付くのは難しいのだろうか。寺林智栄弁護士に聞いた。

●「終業時間が早まっても、残業時間が長くなるだけ」

「多様な意見があるかと思いますが、私は、長時間労働に陥りがちな日本の労働環境そのものが解決されない限り、時差ビズが根付くのは難しいのではないかと思います」

時差ビズと長時間労働とが、なぜ結びつくのだろうか。

「時差ビズは、要は参加する企業のみが、出勤時間を早めたり遅くしたりという時差出勤を導入しようという試みです。

しかし、未だに多くの社員が当たり前のように残業している日本の就業体制からすれば、例えば早朝出勤をしたとしても終業時間が早まったところで、残業時間が長くなるだけではないでしょうか。逆に出勤時間が遅くなっても、結局は終わらない仕事のために本来の出勤時間よりも早く出勤したり休日出勤せざるを得ないといった事態も想定されます。

参加する企業が一部となれば、業種によっては取引先などに合わせるため引きずられてしまうケースも想定できます」

その他、問題点はあるのだろうか。

「出勤時間が早くなることにより、特に小さな子どもを抱えている家庭では朝の出社前の時間が慌ただしくなる、保育園の開始時間前に出社しなければならなくなるなどといった問題が生じえます。現場の社員からすれば、負担や問題だけが増え、メリットがないと言わざるを得ないのではないでしょうか」

●日本では時差ビズ、サマータイムは根付かない?

根付かせるのは難しいだろうか。

「通勤ラッシュを改善するというごく一部の問題を解決するためだけの対策を講じても、労働環境そのものは解決されません。

結局は、出社時間を早い方にずらした社員、遅い方にずらした社員もともに、終わらない仕事を片付けるために、残業を余儀なくされたり、休日出勤をしなければならなかったりするのではないかと思います。

確かに、時差ビズによって、過酷な通勤ラッシュからは解放されるかもしれません。しかし、残業に対する法規制の厳格化(特に規制違反に対する雇用主の厳罰化)や個人のライフスタイルに合わせた出勤体制(フレックスタイムや時短勤務、在宅勤務の拡大)を導入することが先ではないかと思います」

ところで、時差ビズとは違うが、日本ではサマータイム制度も導入が検討されながら、実現していない歴史的な経緯がある。GHQの占領下だった1948〜1951年の一時期、日本でもサマータイムをおこなっていたようだが、現在の日本ではサマータイムの導入は難しいのだろうか。

「世界中で実施されているサマータイムは、社会全体が標準時を1時間程度進める制度です。時差ビズのように一部の労働者だけでなく、日本で暮らす人たち全てがこの時間帯で生活することになりますので、前述した時差ビズの問題のいくつかはクリアできるものの、通勤ラッシュは復活します。

問題はそれだけではありません。定時に仕事を終え、消費活動や家族の時間にあてる人もいるかもしれませんが、まだ外が明るいうちに日本人は仕事を止めることはできるでしょうか。時差ビズ同様に、サマータイム制度の導入も、ただ労働時間が長くなるだけではないかと思います。

結局、いくら制度を整えても、運用する人たちの価値観が変わらなければ、現実は何も変わらないと思います」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
寺林 智栄(てらばやし・ともえ)弁護士
2007年弁護士登録。東京弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)を経て、2014年10月開業。刑事事件、離婚事件、不当請求事件などを得意としています。
事務所名:ともえ法律事務所
事務所URL:http://www.tomoelaw323.com/