イラスト/藤井昌子

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「ペットと一緒に暮らしたい!」というニーズに合わせて、ペット飼育可能の賃貸住宅も増えてきました。
一方で、そのペットに対するクレームも確実に増えています。
ペットは飼育している人にとっては大切な家族の一員であり、クレームが出たからといって飼育をやめるのはなかなか難しいですよね。とはいえ、飼っていない人からしたら、快適な生活を脅かされるような迷惑な存在になることもあるのです。
過去に実際に起きたクレームの事例から、賃貸住宅でペットを飼っている人やこれから飼いたい人は、他人に迷惑をかけない飼育ができるように、また、他人のペットで迷惑を被っている人は、その解決方法にはどんなものがあるかを、一緒に学んでいきたいと思います。【連載】賃貸管理のプロが賃貸住宅の困りごとを解決
賃貸仲介・管理の現場に20年以上携わっているプロが、賃貸物件に住む人から相談の多い事例と解決方法をご紹介する連載です

一番多いペットクレームは、「わんちゃんの鳴き声」

ペット飼育可能物件で一番多く、解決し難いクレームは、何といっても「犬の鳴き声がうるさいので何とかして!」というもの。犬を飼いたくてペット飼育可能物件を探し、やっと夢にまで見た愛犬との共同生活スタート! と思いきや、近隣から激しいクレームが出てしまって途方にくれる方が結構な数いらっしゃいます。

よくあるのは飼い主不在時の鳴き声に対するクレーム。単身世帯や共働き世帯での飼育も増えており、そうなると飼い主が仕事で留守がちなため、お留守番のしつけができていない犬は、淋しくてずっと鳴き続けてしまうのです。飼い主は留守なのでそのことを知らず、近隣の入居者さんが耐えかねてクレーム……というケースがほとんど。途方にくれるのは私たち管理会社も同じで、「犬を鳴きやませてほしい」と言われて現地に行っても、相手が犬だけに注意しても意味がなく何ともし難いのが困りものです。

その他、廊下を人が通る度に敏感に反応してなかなか鳴き止まない、深夜や早朝など近隣が静かな時間帯に鳴く、共用部でほかの入居者さんに対してほえ続けるなどのクレームもあります。クレームが長引くうちに、毎日ほえ声を聞き続けている近隣の部屋の入居者さんも怒り心頭となってしまい、ポストに匿名の注意文が投函されたり、ひどいと玄関ドアに注意文をでかでかと貼られてしまった方もいました。なかには警察を呼ばれた方もいらっしゃいます。こうなっては、飼い主側も恐怖を感じてしまい、安心して住んでいられませんよね。

そんなことになる前に、ちゃんとお留守番ができるよう根気よくしつけをする、自分でするのが難しいならしつけ教室で学ばせる、などの対策を考えてもらうことが必要です。飼い主の留守中におとなしく待つためのしつけはもちろんですが、リビングなど決められた部屋から出られないようにして玄関付近の物音に反応しないようにするなどの対策も有効です。お金や時間がかけられないという方には、犬の無駄ぼえしつけ用の首輪なども市販されていますので試してみるのもいいかもしれません。しかし、犬にとってストレスになるという説もあるので、ご自分でよく調べてから使用を検討してください。

クレームが起こるのは室内だけではない!

室内だけでなく、共用部分でのマナーもクレームになりやすいので要注意です。

犬は散歩が必要なので一緒に外に連れて出ることになりますが、共用廊下で犬を歩かせてはいけないというルールがある賃貸住宅も多いもの。毛が飛んだり、粗相をしたり、ほかの入居者さんにほえたり噛み付いたりしないようにとの配慮ですが、守らない方がいらっしゃると、ペットを飼っていない方やルールを守っている方からかなりのクレームになります。「犬が成長して重くなり、抱っこできない」、などと言われることもありますが、ルールはルールなので頑張って守ってほしいと思います。

自由に歩かせた犬がエレベーターの中でオシッコをしゃー!なんてこともありましたが、エレベーターの中は密室なだけに臭いがこもってなかなか取れず困りました。ペット飼育可能物件とはいえ、飼っていない方もいらっしゃるのですから、近隣に不快な思いをさせないように気をつけてくださいね。

オシッコと言えば、バルコニーサッシを開け放して、普段飼い犬が自由に出入りできるようにしていたご家庭では、下の階の方から「排水口からオシッコの匂いがして困っている」とのクレームをいただいたことがあります。そのときは、「飼い犬がかなりの高齢で、オシッコが我慢できなくてバルコニーにしてしまうことがある」と言われました。しかし、バルコニーは共用部でもありますので、汚物の垂れ流しはもちろんルール違反です。そのクレームは飼い主の留守中に犬がバルコニーに出られないようにすることで解決しました。このケースは飼い主に悪気は有りませんでしたが、わざとバルコニーで排せつさせていたケースもあります。その後を水で流すので左右の部屋から臭いのクレームになりましたが、これは非常識と言わざるを得ません。

同じような排せつ物のクレームでは、散歩のときに集めたふんをそのまま共用のゴミストッカーに捨てる飼い主がいて、ゴミストッカー内部に悪臭がしてしまったことがありました。散歩中に回収した犬のふんは、自治体によって処理方法が決まっており、家庭用のトイレに流すか燃えるゴミで捨てるのが一般的ですが、燃えるゴミで捨てる決まりの場合は、臭いが漏れないようにビニール袋に入れて口をしっかり縛り、ほかの入居者さんに迷惑がかからないようにするのがマナーです。

猫ブーム到来! 犬以外のペットではどんなクレームがある?

鳴き声の大きさや散歩で外に連れ出す必要性から犬に対するクレームがどうしても多くなりがちですか、ほかのペットでももちろんクレームは発生します。どんな種類のクレームがあるのかを見ていきましょう。

最近の猫ブームで飼育が増えた猫は、室内で飼育している分にはあまりクレームにはならない印象です。過去に発生した猫クレームでは、複数頭飼育している猫が追いかけっこをして駆け回る音がうるさいというケース。こちらは床にマットを敷いていただくことで解決しました。また、発情期の猫の鳴き声に対しては、避妊や去勢手術をしていただいて解決しました。部屋の外と中を自由に行き来させていた飼い猫が共用部や近隣の庭部分でふんをしてしまいその強烈な臭いがクレームになったときは、完全に室内飼育にしていただきました。猫は飼い主が留守でも問題なく過ごせたり、散歩も要らないことから飼育する方が増えているようです。

ウサギやハムスター、魚や亀や爬虫類など、完全に室内飼育でかつ鳴かないペットはほかの入居者さんからのクレームになることはほぼありません。ただ、意外とクレームになるのがインコなどの鳥です。あんな小さな体で結構甲高く大きな鳴き声なのですよね。複数羽飼育する人が多いので室内飼育でもうるさいとクレームが出る場合があります。また、バルコニーに鳥籠を出す方がいますが、羽が飛び散り周囲の入居者さんの洗濯物や干していた布団に付くなどのクレームが来たこともあります。アレルギーのある方も増えているので配慮が必要です。

また、飼っていたハムスターが亡くなってしまった入居者さんが、そのハムスターを共用部の植栽の根元に埋めているのを目撃されてクレームになったこともあります。驚くことに、貸家の庭に飼い犬のお墓をつくってしまった強者も過去にはいらっしゃいました。悪気は無かったとしても、賃貸住宅ではさすがにNGです。ペットの埋葬をしてくれる業者さんもいるので、そういうところにお願いするのが現代のマナー。ペットも生き物ですからいつかはその寿命を全うします。最後まで責任をもって飼育する覚悟が必要ですね。

ペット不可物件でこっそり飼ってしまったらどうなる?

友人知人の犬や猫の赤ちゃんがかわいすぎてもらってしまったり、ペットショップで一目ぼれしてつい購入してしまったり、ついて来る捨て猫を見捨てられなくて拾ってきてしまったり……。ペット飼育不可物件だからダメだと分かっていても、ペットのかわいさにあらがえず飼ってしまって、それがバレて困ったことになる方も結構いらっしゃいます。この記事を読んでいる方にも、ドキッとした方がいるのでは?

特に犬をこっそり飼ってしまった方は、まず100%バレることを覚悟してください。私たち管理会社がそれを知るのは近隣にお住いの方からの通報です。犬の鳴き声がする、こっそり散歩に連れ出していたのを見た、などと言うお電話がかかって来るのです。防犯カメラに写っていることもあります。該当の方に「近隣からクレームが来ていますが、犬を飼っていませんか?」とお尋ねするとたいていの方は「友人から短期間預かっただけ」と仰いますが、禁止は禁止。発覚してしまったら別の方に飼っていただくか、退去していただくしか無いのが厳しい現実です。ペット嫌いな方、アレルギーの方もいらっしゃるので、ペット飼育不可物件はそういう方の事情が当然優先されます。本当に短期の預かりだったとしてもダメ。散歩好きな犬に不自由な思いをさせるのも可哀想ですから、くれぐれもこっそり飼育はしないでくださいね。

こっそり猫を飼っている人は、鳴き声のほか、日向ぼっこしている猫を窓の外から見られて発覚することが多いです。かといって外を眺めたり日向ぼっこ好きな猫を窓に近づけないようにすると、ストレスがたまり、壁紙や建具に悪戯をしてボロボロにするなどで被害が拡大してしまうこともあります。退去時にルール違反が発覚して多額の原状回復を支払うことになったら、飼い主だってたまったものではありませんよね。こっそり飼育は入居中に発覚しても、退去時に発覚しても困ったことになるので、実は飼ってしまっているという方は早めの対処をお勧めします。

【画像1】イラスト/藤井昌子

【画像1】イラスト/藤井昌子

ペット飼育可能の賃貸物件はたくさんありますが、実は物件によって違いがあります。なかでもお勧めなのは最近増えている「ペット共生型賃貸住宅」。ペット飼育の方にターゲットを絞り、ペットと楽しく暮らすための設備を充実させています。さまざまな工夫が凝らされて、飼育ルールもきちんとしています。一般的なペット可賃貸住宅ではペットを飼育していない入居者さんも多かったりするのですが、ペット共生型賃貸住宅に住む人はペットを飼育している率が高く、しかも家族同然に大切に飼育していてマナーのいい人が多いため、住人同士のトラブルも少ない傾向にあります。

避けたいのは、単なる空室対策のためにペット可では無かった物件をそのままペット可にしている物件です。ペット飼育のための設備が無いためペットと一緒に暮らしにくく、ペットを飼っている人が少ないのでクレームにもなりやすいです。同じように見えるペット飼育可能物件ですが、ペットと暮らすための工夫がどの程度なされているかをチェックして、愛するペットとの快適な暮らしを実現させてくださいね。

谷 尚子谷 尚子 賃貸住宅での暮らし応援団

独立系の賃貸管理会社ハウスメイトパートナーズに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。


(谷 尚子(ハウスメイトパートナーズ))