高橋敏之・The Japan Times ST編集長

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「文法の勉強は、英会話には役立たない」。そう考えているとすれば、大きな誤解がある。文法を軽視したままでは、決して英語力は上がらないからだ。英会話教室イーオン・三宅義和社長の対談連載。今回の相手はジャパンタイムズの高橋敏之氏。前後編の後編をお届けします。

■「文法」の大切さは後からわかる

【三宅義和・イーオン社長】最近の英語教育のキーワードは読む、書く、聞く、話すという「4技能」です。大学入試もその方向で改革が進みました。おそらく、これから高校入試も4技能の方向になると思います。もちろん、それでいいと思うのですが、なんとなく4技能という言葉が独り歩きして、何のために4技能なのかという議論が少ない気がします。高橋さんは、何のための4技能だと思われますか。

【高橋敏之・The Japan Times ST編集長】おそらく、大学入試改革の旗印として取り上げられているのでしょうが、私は結果的にすごくいいことだと思います。われわれが英語を学ぶのは、究極的には日常で使うためです。例えば、仕事で使うということを考えてみたら、当然、会議で発言しなければいけないし、資料を英語で読みこなさなければいけません。

加えて、英語でメールを書かなければいけないし、外国人スタッフのプレゼン内容を理解する必要もあります。4技能のスキルというのは、そのすべてに関係がありますから、しっかりマスターすることによって、ビジネスマンとしてのスキルは伸びていくはずです。ただ私の経験からいっても、文法と単語も忘れてほしくないですね。なぜなら、それは4技能全てに関わる英語の基礎中の基礎です。

【三宅】いま、文法が悪者にされている気がしてなりません。よく「文法なんかに時間をかけるから話せない」だとか、「英語ペラペラの人を見てごらん。文法なんか全然、意識していないよ」ともっともらしく言われ、文法不要論がまかり通っています。しかし、そんなことはないですね。文法をないがしろにして、正しい英語が身につくはずはない。

【高橋】その通りです。私は、文法の習得には3つの段階があると考えます。まず、そもそも文法なんて、まったく理解もしてない段階。次に理解はしていても、それを使いこなすことができないという段階。最後に理解したものを完全に使いこなせるという段階です。

そして残念なことに、ほとんどの方が理解しただけで終わってしまう。使いこなすにはいたりません。すると「一生懸命、文法を勉強したけど、会話に役立ってないから必要ない」という結論に陥る。一種の言い訳ですね。そうではなくて、やっぱりこの使いこなすレベルになってこそ文法の大切さもわかるものなのです。

なぜなら、現在完了とか関係代名詞、あるいは仮定法とか難解なものもありますけれど、それらを会話で完璧に使いこなせたら、一気にコミュニケーションのレベルも上がります。ですから、文法をマスターすると一番伸びるのはコミュニケーション能力ということになります。

【三宅】「文法をマスターすると一番伸びるのはコミュニケーション能力」というのはまさに至言ですね!!文法力が中途半端になっている学習者が多いと思います。

【高橋】結局、この2番目のレベルの人にとっては、文法がすごくうっとうしいんです。話そうとすると、つい文法的なことが気になってしまう。多くの教材はその状態を悪と捉えます。ですから、三宅社長が言われた文法不要論になる。ところが、それは悪でも何でもありません。それは成長の過程で、誰もが通る道なのです。

■勉強した英語の基本構文を声に出して練習

【三宅】では、そこはどうすればいいのでしょうか。

【高橋】反復練習です。まずは習った文法を使って、ネイティブ・スピーカーと会話をしてみる。テーマを持った練習です。やみくもに話すのではなくて、仮定法を習ったから、自分の夢を英語で語ってみるとかですね。

あと、私が勧めているのは、文法のテキストに載っている例文を、ぜひ音読していただきたいということです。結局、黙読しているだけでは、理解の段階で止まってしまいますが、それを声に出すことによって、頭の中の知識が口から出やすくなってくるんです。文法にしても、習ってすぐ使えるなんて甘いものではないです。勉強した英語の基本構文を声に出して練習しないといけない。

結局、文法なんて単なる構造です。ネイティブ・スピーカーがよく使う構造を、われわれは文法という大仰な名前で呼んでいるだけです。よく「文法なんて、私は勉強することなく、英語を身につけてやる」というのは、言い方を変えれば、「外国人がよく使う構造なんて、私はひとつも知るつもりはありません」と言っているのと一緒です(笑)。

【三宅】高橋さんの説明、非常に論理的でわかりやすい。「果たして文法というものは大切なのか」という疑問に対して、ズバリと提言していただきました。基本構文の音読については、私も社内、あるいはセミナーなどで「やりましょうね」と訴えているのですが、とにかく、一番力がつきますよね。

それと単語も重要と指摘されました。私もやはり、その人の英語の基礎体力は知っている単語の数に比例すると思っています。「ST」を読みながら勉強する大きな利点は、数多くの単語に接することができることだと思います。高橋さん自身は、単語の重要性について、どのように考えておられますか。

【高橋】仮にリスニングをやるにしても、そもそも知らない単語が多いと聞き取れるわけがありません。また、英文を目にしても、正確に理解できない。逆に、知っている単語が多いと、何となく意味もつかめます。すると、英語力の向上にもなり4技能もおのずと伸びていくんです。

ただ私がすごく残念なのは、日本における単語学習が英単語の意味を暗記することに労力を置きすぎることです。よく電車の中で高校生が単語帳をめくりながら、必死に覚えようとしていますね。

表に書かれている単語を見て、すぐに裏返して日本語の意味を記憶しようとします。中高生の単語テストなら合格できると思うんですけど、いざそれをライティングやスピーキングで使おうと思っても出て来ません。けれども、英字新聞を読むという学習方法なら、その語がいかなる場面で、どのような文脈で使い、どんな言葉と結びつくのか理解できるようになります。

【三宅】できれば「ST」を購読し続けることも必要ですね。

【高橋】基本的に「ST」はリーディング素材なので、そこは任せろというつもりで毎週出しております。

【三宅】本日はありがとうございました。

(イーオン代表取締役社長 三宅 義和 構成=岡村繁雄 撮影=澁谷高晴)