IMGアカデミーの室内施設でトレーニングするアスリートたち

写真拡大

IMGアカデミーの核心はフィールド外にある? “APDプログラム”って何だ!?

 ジュニアからトッププロまで世界中からアスリートが集まるIMGアカデミーで元日本代表FWの高原直泰氏がプログラムを体験し、レポートする特別企画第2弾。今回はサッカートレーニングではなく、フィールド外で行われるフィジカル、メンタル、そしてビジョンと、世界でも類を見ない最先端のトレーニングを紹介する。

APDプログラムとは?

 IMGアカデミーを卒業したトップ選手の活躍で各種目の練習風景をメディアなどで見かけることはあるものの、その裏にある核心とも言うべきトレーニングを目にすることは多くない。Athletic & Personal Development、略してAPDと呼ばれる複合プログラムがあり、特に長期留学をする選手たちはこのすべてを受けることになる。

IMGアカデミーで行われているAPDプログラムの一覧

 いわゆる筋トレ系のフィジカルトレーニングからメンタル、ビジョン、栄養学などアスリートとして必要なものだけでなく、リーダーシップやライフスキルなど人間形成にも役立つプログラムがそろう。ジュニアスポーツの中でそれぞれ少しずつ認知、普及されてきているが、その最先端のトレーニングが一箇所でできる施設は世界中を見てもなかなかない。それぞれのプログラムについて、高原氏の体験および感想とともに紹介しよう。

アスレチック・トレーナーと理学療法士

 サッカーコーチと並んでとても大切な存在がアスレチック・トレーナーと理学療法士だ。練習後のアイシングや身体を痛めた際のテーピングなどはもちろんだが、IMGアカデミーで一番大事にしているのは“ケガをしないこと”。アスレチック・トレーナーは選手一人ひとりの身体のバランスや可動域などをチェックしながら、ケガを予防するためのトレーニング方法などもアドバイスしている。そして万が一、ケガをしてしまった場合でも、アスレチック・トレーナーとともにエキスパートである理学療法士がそれぞれのリハビリメニューを用意するので安心してトレーニングに参加できる。


アスレチック・トレーナーによる身体のバランスチェックを受ける高原氏

「基本的な考え方は日本にも同じようにありますが、プロチームでもここまでの施設や人材をそろえているところはないですよ。必要なときにいつでも利用できる環境は素晴らしいです。ただ、一つ大事なのは、特に育成年代にはケガをしないための身体作りが大事なことをきちんと理解させることだと思います。いくら施設があっても利用するかは自分次第ですから」

APDプログラムのほとんどは2016年に完成したばかりのパフォーマンス&スポーツ科学センターで行われる

ビジョン・トレーニング

 “ビジョン”と聞くと、動体視力を上げると理解されるケースが多くある。しかし、実際のスポーツのパフォーマンスを向上させるには見るだけでは不十分で、“See(見る)”“Think(考える)”“Do(行動する)”、この3つがつながって初めて意味が出てくる。目で捉えて、脳で状況を認識し、身体を正しく動かす指令を素早く出す。これをどれだけ素早く行えるかが鍵で、正しくはビジョン&ブレイン・トレーニングと呼んでいる。3Dを利用したソフトや最新の機器を駆使して、10種程度のトレーニングを受けることになる。

フィット・ライトと呼ばれる機器を使い、足を中心にした反応速度を上げるトレーニング。オフェンス、ディフェンスなど具体的な状況を想定して配置し、赤、青、緑など光った色に合わせて正しい動きを行う

ダイナボードを使って周辺視と反応速度を上げるトレーニング

「これは非常に面白かったです。特に小・中学生でトレーニングができると有効だと感じました。自分のチームのトップ選手にもよく“周りの状況を見ろ”と指示するんですね。でも、なかなかできない。サッカーはボールを回すときのポゼッションがとても大事です。相手や味方のポジションやボールの位置など、状況を把握して動く。それをどれだけ瞬時にできるかが大切なので、小さい頃からそのベースを身につけておくのとそうでないのとでは将来が変わってくるでしょうね。自分が中学生だったとき、学校のサッカーチームのスローガンが“見よ、読め、動け”だったので、慣れていました。ここではビジョンに特化したトレーニングがあるのはとてもいいですね」

スピード/ムーブメント・トレーニング

 いわゆる筋トレに加えて、作った身体をいかに使えるようにするか、そのスピードやアジリティーを鍛えるトレーニング。芝のフィールドや天井のついたターフと呼ばれるエリアで基礎的な動きを学んだり、ハードルやラダーを使ったトレーニングもある。サッカーならサッカーに特化した内容を専門のストレングスコーチが考えるため、競技のプレーでも使える身体づくりを効率的に学べるようになっている。

1回のセッションでは天然芝のフィールドでストレッチやダッシュなどを組み合わせたトレーニングを1時間ほど行う

「IMGアカデミーのコーチの評価も同じでしたけど、日本人はテクニックやボールの扱いはうまいけど、身体の使い方や力の伝え方がうまくないという場合が多い。実際に接触しながらテクニックを使えるのか。相手に当たられたときに、身体のバランスをキープできるか。それを鍛えるためにはスピード系、ムーブメント系のトレーニングはとても役に立ちますよね。日本でもダイナミックストレッチと呼ばれるもので、ストレッチと合わせて動的なものを取り入れていますが、発展途上だと思います。アメリカ代表監督も務めた(ユルゲン・)クリンスマンが積極的にこのようなトレーニングを取り入れていて、ドイツのA代表でも行うようになったり、世界ではスタンダードになっています。IMGアカデミーの良さは、何といってもその分野の専門家がいることです。日本の現場ではサッカーコーチなどがやることもありますが、専門性は薄かったりしますから」

メンタルトレーニング

 メンタルを鍛える必要があるのは“気持ちの弱い”選手という話が、いわゆる根性論を元に聞かれることがよくある。ここアメリカではメンタルトレーニングは気持ちの問題ではなく、たとえば筋トレと同様に鍛えられるメソッドがあり、一つのテクニックとして扱われることが多い。メンタルコンディショニングコーチによる専門的なセッションが行われ、集中力の高め方や呼吸法、あるいはチームビルディングなど競技に特化したプログラムを展開している。コーチによる講義形式から器具を使ってゲーム感覚で取り組むものまで幅広い。

呼吸を整えながら、箸を使ってナットを積み上げていくトレーニング。モニターの色は呼吸のリズムに合わせて変わる。緑色の場合は正常の呼吸になっていることを示している

「僕らの時代にはメンタルトレーニングはありませんでしたね。気持ちが前に出ていなければ、有無を言わさず怒られて鍛えられるという感じです(笑)。だからコーチたちはメンタルトレーニングというと抵抗感がある人も多いと思いますが、今の子たちには有効だと思いますよ。ニーズや選手のメンタリティーは変わってきています。“自分の頃はこうだった”という考え方は賛成できません。状況や時代の変化に合わせて必要なものはどんどん取り入れてやるべきです。自分がU-15代表として練習に参加したときには、一部ですがメンタルトレーニングを取り入れていました。いわゆる呼吸法だったんですが、気持ちを落ち着かせて集中するのに使えました。育成年代でも十分に有効だと思います」

 明日更新の最終回では高原氏の海外経験についてじっくりインタビュー。サッカー選手として人として、海外に挑戦する意義を大いに語ってもらいました。

※IMGアカデミーでは1週間単位で年中どのタイミングでも参加できる短期キャンプ、アメリカの高校卒業と大学進学を目指す長期留学などを提供しています。また資料の送付や無料のカウンセリングも受け付けています。興味のある方は以下のIMGアカデミー日本窓口にお問い合わせください。
メール:imgajapan@img.com
電話:03-6758-7891
日本語公式サイト: https://www.imgacademy.jp/