人間は舌だけで味わっているわけではない。
約9割が視覚からの情報だと言う「食事」。実は「器」も重要な食材のうち!?
器の重要性を知るべく、「器のいいところを知るカフェ」に訪れた。
 

 

 
人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ……!
 

日本茶はいい。
代表される成分の「カテキン」には、がんを予防し口内を殺菌し、体脂肪を燃焼させ、抗酸化作用で若さを保ち……とにかく健康にとって素晴らしい飲み物。
一説にはリラックス作用もあり、睡眠の質を向上したりストレスを解消したりする力まで持つと言う。
お茶を飲んで一息つくことほど素晴らしい時間はない。
 
そんな日本茶を、もっと楽しむ方法があるらしい……?
そう聞きつけたわたしは大阪・心斎橋の『wad cafe』に向かった。
 


2階にある店内に入った瞬間、視界に飛び込んでくる茶器の数々。
そう、ここは茶器からお茶を楽しむことができるカフェなのだ。
器は店長の小林さんがずっと集めてきたもので、メインは作家さんのもの。中には海外の人の作品もある。
その数、500個以上。
「器のどこに惹かれるんですか?」と訊ねたら
「表面的な綺麗さより芯のある美しさ」という、通すぎるお答えを頂いた。
何はともあれ、わたしも器を楽しんでみよう。
 
わたしが頼んだのは「かぶせ緑茶“ごこう”」。
1週間前後シートをかぶせて日光を遮ることで渋みを抑え旨みを引き出したものを「かぶせ緑茶」と呼ぶそうだ。
一煎目は60度というぬるめの温度でちょっとだけを楽しむ。
 

お茶を淹れるときは最後の一滴まで逃さず。
 

いざ飲んでみると、香りとともにぶわっと広がる旨み。
まるで上等なお出汁のようだ。だてにシートかぶせてない……!
 

二煎目になるとお茶の温度も淹れる時間も量も変わるため、器も別のものに。
見た目で全く印象が変わる。味わい方も変わる。
お茶を存分に楽しむために、器がエスコートしてくれているようだね……。
ここからはおかわりをお願いすればお湯を淹れてくれるので
ゆったりお茶タイムが始まる。
 

最後には、茶葉をおひたしにして。
茶葉って硬くて苦いイメージがあったが、全然そんなことはない。
味わい深いお野菜のようなやさしいお味に感動を覚えた。
 
夏場に忘れてはいけないのはこちら。
 

「氷盛り」だ。宇治、ほうじ茶、黒蜜、白蜜の4種から選べるがわたしはほうじ茶をチョイス。ミルクのトッピングも欠かせない。ちなみにこれでミニサイズである。
冷たさを残してほろほろ溶けてゆく氷と、香り高いほうじ茶、ほんのり甘い練乳……!
かき氷は夏の贅沢の極みだ。
 
ここでは「金継ぎ(きんつぎ)」も行っている。
 

金継ぎは割れたりヒビが入ったりした器を漆で繋いで金を蒔く古来から伝わる技術。
先ほどのおひたしも、金継ぎの器で頂いた。
器を大事にしているからこそ、壊れても修復し、また使う。
その時、金で蒔いて新しい味をプラスする。
これは物を大事にする日本の誇れる技術だ。
 

お茶を楽しんだあとは、3階にあるギャラリーにお邪魔した。
 

この時やっていたのは花岡央さんという岡山のガラス職人の展示会。
 

手づくりだからこそ、同じものはひとつとしてない。
鮮やかな色も美しいが、「透明さ」もそれぞれ違う。
光を浴びて透けるグラスの何と美しいことか……。
「100円ショップで買うのも器ですし、山に入って土を採って薪で焼くのも器。ピンキリの世界です。でも、世界中の人が見てもいいと思うような器に若い時から触れてほしい。いいものを長く使ってほしい。いい器を持てば、人生が変わりますよ」
家にある食器はほぼ100円ショップ、
最近は割れるのが怖くてほとんどをプラスチックにしているわたしの心もグラグラと揺れるかわいさ……!
 
「例えば朝のコーヒーの一杯だったとして、綺麗なグラスがあれば飲む行為が楽しくなるんですよ。じゃあ豆を探そう。その時聞く音楽はどうしよう?敷くランチョンマットを買ってもいい。いろんなことに派生していくことで、ライフスタイルが変わるんです」
想像する。
今は3つ108円(税込)の無骨なプラスチックカップだけど、それがこの綺麗なグラスになる……。
多分、小鳥なんかも囀るだろうな。
おいしいパンをトーストして、サラダと一緒に食べよう。
朝は忙しなくなりがちだけど、ちょっと早く起きて優雅な時間を過ごす。
 


ありだな……!!
 
わたしは人生を変えるべくグラスを購入した。
あいにく小鳥は囀らず蝉がうるさいが、理想的な朝だ。
仕事中水を飲むグラスがかわいいだけで、少し心が浮かれる。
器にそんな力が持つということを知れてよかった。
いつも視界に入る日常的なものを、
ちょっと特別にするだけで自分の心に与える効果は凄まじい。
そして「捨ててもいい」が「大事に使いたい」に変わることで、すべてのものを大切にできる気がする。
 
「器のいいところを知るカフェ」で、
まんまといいところを知って帰ってきてしまった。
 
 
『wad omotenashi cafe』
大阪府大阪市中央区南船場4-9-3 東新ビル2F
TEL:06-4708-3616
営業時間:13:00〜20:00(L.O 19:30)定休日不定休
「かぶせ緑茶“ごこう”」1,000円
「ミニ氷盛り」ドリンク料金+400円(ミルク+30円)