プランデッリ(右)はイタリア代表監督時代にカッサーノ(左)を手懐け、その才能を引き出した。(C)Getty Images

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 元イタリア代表FWのアントニオ・カッサーノが、二転三転の末に現役引退を表明したとき、サッカー界きっての問題児として知られる男だけに、「またか」と感じた人も少なくないだろう。しかし、恩師は違うようだ。
 
 昨シーズンは首脳陣と揉めてサンプドリアで構想外となり、1年を棒に振ったカッサーノは、新シーズンからセリエAに昇格するヴェローナと7月10日に1年契約を結ぶ。しかし、8日後にホームシックから引退を決意するも家族とクラブに説得され翻意したが、現地時間24日に再び退団、そして引退すると表明した。
 
 久々に家族(妻と2人の息子)と離れてホームシックになったという本人は、「もうサッカーはしない。35歳の俺にとって、家族と一緒にいることが最優先」と語っている。
 
 行く先々で起こした数々の問題行動で“カッサナータ”という造語まで生んだカッサーノだけに、驚きはしても「意外ではない」という声は多い。しかし、カッサーノが主軸として活躍したEURO2012でイタリアを準優勝に導いたチェーザレ・プランデッリ監督(今夏からUAEのアル・ナスル指揮官)は、イタリア紙『レプッブリカ』で「非常に誠実な決断だと思う」と、カッサーノに賛辞を寄せている。
 
「アントニオには重要な価値があり、家族と強く結ばれている。この時期にこういう類の決断をしたのは、ヴェローナのサポーターや街、会長、クラブ全体に敬意を払ったということだと思う。残るための正しい気持ちや刺激がないところに留まりたくなかったんだ。とても苦しい、だが同時に威厳ある決断だったと思う。彼に大きな拍手を送るべきだ」
 
 さらに、カッサーノと衝突しなかった数少ない指揮官であるプランデッリ監督は、「絶対にカッサナータではない」ともコメント。「成熟した男がしっかり考えたうえでの選択だ。35歳となり、彼は自分に優先すべきことがあると自覚しているんだよ」と、カッサーノの決定はワガママでなく、真剣に考え抜いた末の結論のはずという見解を示した。
 
 一方で、「バーリの宝石」と呼ばれたカッサーノを12歳で発掘したプロ・インテル・バーリのトニーノ・ラーナ会長は、イタリア『ANSA通信』で「彼の歴史を知らなければ理解できない」と、カッサーノが愛情を必要とする人間だと強調している。
 
「彼は誰からも愛されてこなかった。だから今は奥さんや子供たちから離れられないんだ。アントニオには自分を愛してくれる環境が必要なのだよ。幼少期に父親がいなかったしね」
 
 ラーナ会長は「偉大な選手だが小さな人間を作ってしまったことへの悔いはある」と、カッサーノを人として成長させられなかったことを自責しつつ、「あと2、3年は高いレベルでやれるはず」と、スパイクを脱ぐという本人の決断に寂しさをうかがわせた。
 
 同じように、類まれなる才能を持つカッサーノのプレーをまだ見たいというファンは少なくない。これまでの経緯を考えれば、再度の引退撤回でも驚きはない。そこでまず手を挙げたのが、6部のクラブ「ユニオン・スポルティーバ・レジーノ1910」だ。
 
 ANSA通信によると同クラブは、「限られた予算では、彼ほどの選手を雇うコストをかけることはできない。だが、街全体が歓迎し、彼が望むたびにファリナータ(ガレットのような食べ物)をご馳走する」と、カッサーノに加入を呼び掛けたのである。
 
 カッサーノ一家が暮らしてきたジェノバの街があるリグーリア州を拠点とするUSレジーノは、「家から近いし、ノスタルジーも感じないだろう」と、カッサーノに今までどおり家族と暮らしながらプレーしないかと打診した。
 
 ちなみに、26日付の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙は、「ジェノア、スペツィア(セリエB)、ヴィルトゥス・エンテッラ(セリエB)からオファーがあった場合、カッサーノは引退を撤回するかもしれない」とも報じている。いずれもジェノバからほど近い場所に本拠を置いており、家族と離れ離れにならずともプレー可能だ。

「家族のそばにいることが優先」と引退を表明したカッサーノの行く末やいかに?