【原ゆみこのマドリッド】まだ足慣らしだから…

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▽「赤字でもいいんだ」そんな風に私が電卓を叩きながら考えていたのは火曜。レアル・マドリーがモナコのムバッペ獲得に1憶8000万ユーロ(約235億円)を払う用意があると聞いた時のことでした。いやあ、ちょっと前に言われていた移籍金1憶3000万ユーロ(約169億円)から、急激に値上がりしていたのにも驚いたんですけどね。この額って、ほとんどクリスチアーノ・ロナウドとベイルを獲得した時の金額を合わせたぐらい。昨今、賃上げとは縁のない一般庶民には想像もつかない高騰ぶりですが、その一方でこの夏、マドリーが選手売却で稼いだのは1憶2800万ユーロ(約167億円)程。

▽8000万ユーロ(約104億円)でチェルシーへ行ったモラタを筆頭に先日、ロサンゼルス市内に滞在していたマンチェスター・シティのホテルに河岸を変えたダニーロも3500万ユーロ(約46億円)、プレシーズン開始直前にバイエルンへの2年レンタルを決め、覚えめでたいアンチェロッティ監督の下で巻き返しを図ることにしたハメス・ロドリゲスからも1000万ユーロ(訳13億円)程、収入があるそうで、後はリヨンに移ったマリアーノの分という内訳になりますが、すでにテオ(アトレティコから移籍)、セバージョス(同ベティス)の獲得でクラブは契約破棄金額を超える移籍金を払い、計4600万ユーロ(約60億円)は使っていますからね。

▽となると、8200万ユーロ(約107億円)しか残ってないことになりますが、それでもモナコにそんなに払えるのなら、カゼミロも「Por qué no jugar aquí en el Real Madrid? Sería bienvenido/ポル・ケ・ノー・フガール・アキー・エン・エル・レアル・マドリッド?セリア・ビエンベニードー(どうしてレアル・マドリーでプレーしない? 歓迎されるよ)」と言っていたように、2億2200万ユーロ(約287億円)をバルサに払って、いっそネイマールを獲った方が確実な気も。まあ、両者は移籍金だけでなく、その後の年棒がムバッペは700万ユーロ(約9憶円)、ネイマールは3000万ユーロ(約39億円)とかなり違いますからね。

▽同じフランス人ということで、ジダン監督がムバッペを気に入っていることもあるでしょうが、ただ、昨季のCLやモナコのリーグ優勝でブレイクしたとはいえ、リーガ・エスパニョーラは当人初体験。まだ18歳の選手にここまで高額の値段がつくのに何の疑問の声も上がらないというのは、去年も今年もサンティアゴ・ベルナベウでメガプレゼンがなく、フラストレーションの溜まったマスコミの、とにかく大型移籍でこの夏を盛り上げたいという思惑が隠れている?

▽え、まだバケーション中でアジア商業ツアーに出ているロナウドを含め、今、チームにいない選手の話をするより、UCLAでのプレシーズン第1フェーズを終えたマドリーがどんな状態なのか知りたいって? そうですね、彼らが同じカリフォルニア州のサンタ・クラーラにあるリーバイス・スタジアムでインターナショナル・チャンピオンズカップ(夏に行われる親善大会)の初戦に挑んだのは先週の日曜。相手はかつての指揮官、モウリーニョ監督率いるマンチェスター・ユナイテッドだったんですが、実はこれ、8月8日にマケドニアのスコピエで行われるUEFAスーパーカップと同じカードなんですよ。

▽それもあって、どちらの監督もイロイロ考えたんでしょうね。まず前半にほぼtitulares(ティトゥラレス/レギュラー)を並べたマドリーに対し、相手はポグバやルカク、GKデ・ヘアらをsuplentes(スプレンテス/控え)にしてスタートすることに。それでもプレミアリーグがスペインより早く、8月第2週の週末に開幕することもあり、プレシーズンマッチもこれが4試合目というユナイテッドが押し気味な展開だったんですが、時折、見られたベイル、ベンゼマ、モドリッチ、イスコ、クロースらが信じられない程、器用にワンタッチでボールを繋いでいく姿にはもう、呆気に取られるばかり。さすが2年連続CL優勝を果たしたメンバー、そんじょそこらのチームとはテクニックの高さが比べ物になりません。

▽ただ、やはり今季最初の試合ということで、チームの最大の売り、決定力がどこか欠けていた彼らは先制点を挙げることができず、それどころか、前半終了間際には左サイドからマルティアルに突破を許し、ガラ空きのゴール前にラストパスを送られると、リンガードに決められてしまったから、さあ大変! それにも関わらず、後半、ジダン監督は予定通り、11人を総取っ替え、カゼミロ、コバチッチ、そして昨季アラベスで修業してきたテオ以外、全員RMカスティージャ(マドリーのBチーム、リーガ2部B)とフベニル(その下のユースチーム)の選手を並べてしまったとなれば、もう見ているこちらも何を期待していいものやら。

▽ところが69分、コバチッチのスルーパスを追ったテオがエリア内でリンデロフに倒されるというグッジョブで移籍後、初出場にして貢献。これで得たPKをマルセロからキャプテンを引き継いだカゼミロが決め、何とか同点に追いついたマドリーでしたが、そこまでが限界でしたね。後からピッチに入ったユナイテッドの精鋭を前に無得点に抑えたのは褒めてあげるべきでしょうが、勝ち越し点は奪えません。それこそ、ジダン監督も試合前、「Con Morata eramos mejores, nos falta un delantero/コン・モラタ・エラモス・メホーレス、ノス・ファルタ・ウン・デランテーロ(モラタがいた方がウチは良かった。FWが1人足りない)」と言っていた現状を図らずも暴露することになりましたが、それにしても前代未聞だったのは1-1で90分が終わり、突入したPK戦。

▽だって、最初の2人から、ユニテッドはマルシャルが枠外、マクトミネイがGKカシージャに止められた一方、マドリーもコバッチッチ、カンテラーノのオスカルとデ・ヘアに連続して弾かれる始末で、3人目になって、ようやくムヒタリアン、ケサダとゴールになったんですが…。続いたリンデロフはカシージャが阻止、テオに至っては、さすがアトレティコ出身と言うべきか、大きく外してしまいます。最後はユナイテッドのブリンドが成功し、マドリー最終キッカーのカゼミロがボールをバーに当ててしまったため、1-2で負けたって、古今東西、滅多にお目にかかれないぐらい低レベルのPK戦じゃないですか。

▽うーん、この時もモウリーニョ監督がポグバとルカクをキッカーに選ばなかったのはタイトルの懸かった対戦を控えて、マドリーに情報を与えたくなかったからという感じもしないではありませんけどね。ジダン監督もジダン監督で、それこそゴールが入らなくて負けたというのに、今度は「No voy a pedir nada/ノー・ボイ・ア・ペディール・ナーダ(補強を頼むつもりはない)。会長とは話しているし、今ここに来ている選手は28人。その働きぶりに満足している。後は8月31まで何でもありだからね」なんて、呑気に言っているんですもの。ちょと!! どんな試合でも勝たないといけないのは一体、どこのチームでしたっけ?

▽ただ、ゴール数の面では、火曜のマルカ(スペインのスポーツ紙)がロナウドから、「昨季、ビッグタイトルを自分のクラブと個人的にも獲れたのは最高だった。Hacerlo otra vez estaría bien/アセールロ・オトラ・ベス・エスタリア・ビエン(またそれをやるのもいいかも)」というコメントを聞いたと報じ、残留がほぼ決定的になったと見なされていますから、それ程、心配はないんでしょうけどね。その日はキャンプに1週間遅れて合流した上、右耳の聞こえが良くないため、ほとんど全体練習ができていないセルヒオ・ラモスがおらず、先週金曜に加わったばかりのU21ユーロ・スペイン代表組がUCLAのグラウンドでフィジカルトレーニング中という事情もあったため、まあ、初戦黒星も許容範囲ってことでしょうか。

▽ちなみにこの先、マドリーは木曜午前5時30分(日本時間同12時30分)から、ロサンゼルス・メモリアル・コリセウムでマンチェスター・シティと対戦した後、日曜にはバルサとのクラシコ・アメリカバージョンをマイアミで、更に8月3日にビジャ(ニューヨーク・シティ)やカカ(オーランド・シティ)もファン投票で選抜されているMSLオールスターチームとの試合をシカゴでこなして帰国予定。月末には脱税容疑でマドリッドの法廷に喚問されているロナウドも、その頃にはバルデベバス(バラハス空港の近く)で練習を始めているはずです。何せ、昨季はCLとリーガの2冠を果たしてしまったため、この夏はスーパーのつく大会が多くて、親善試合は4試合しか組まれていませんからね。しかもアメリカでプレーするため、私も普段、日本でリーガを見ているファンと同じ状況になってしまって辛いんですが、チームの準備状況など、ぼちぼちお伝えできればいいかと。

▽え、その悪条件は水曜午前3時(日本時間同午前10時)から、メキシコシティでトルーカとのこの夏の初プレシーズンマッチに挑むお隣さんも同じじゃないかって? その通りで日曜深夜にマドリッドを発ったシメオネ監督のチームは月曜に現地に到着。雨模様だったため、体育館を使っての練習しかできず、いきなり本番を迎えるんですが、こちらに新顔の選手がいないのはFIFA処分で登録ができないだけで、決してお金がなくて補強ができない訳ではありません。ええ、実際、ビトロ(セビージャから移籍)になど、ポンと契約破棄金額の4000万ユーロ(約52憶円)を払い、1月の登録期間が始まるまで、ラス・パルマスにレンタルしていますし、コンテ監督期待のモラタは火曜のインターナショナル・チャンピオンズカップ、アジア部門のバイエルン戦でデビュー初ゴールは挙げられなかったものの、ジエゴ・コスタ(チェルシー)もここ2週間のうちには決まりそうだとか。

▽おまけにそのトルーカ戦を含め、8月1、2日のアウディカップ(バイエルン主催の夏の親善大会)、ナポリ戦や決勝or3位決定戦、6日のブライトン(昨季プレミアリーグに昇格)戦もGol TVで放送されることがわかったため、アトレティコもスペイン・メディアに見放されている訳ではないとホッとできることに。先日、決まったばかりの12日のレガネス戦はわかりませんけどね。これはセルカニアス(スペイン国鉄近郊路線)を使ってブタルケ(レガネスのホーム)に見に行けばいいだけなので、まあ満員で入れなくない限り、心配はないかと。

▽ちなみにマドリッド勢で唯一、地元を離れず、猛暑の中、練習に励んでいるこの弟分チームはアトレティコに胸を借りる前、水曜にはRMカスティージャ、その後はタラベラ(3部)、バジャドリッド(2部)、ラージョ(2部)、そしてアラベスとのプレシーズンマッチを予定。この辺はまずTV中継はないのがお約束ですが、それは1年でリーガ1部復帰を果たしたヘタフェも同じなんですよ。ええ、月曜には柴崎岳選手も一緒にバレンシア州のオリバ(ゴルフ&ビーチリゾート)での2次キャンプに出発したチームは金曜にアルコジャノ(2部B)とこの夏、最初の親善試合。土曜にマドリッドに帰還した後は、うーん、まだオフィシャルウェブに出る情報がどこまで信憑性があるのか、私もちょっと不安なんですけどね。

▽8月2日には、コリセウム・アルフォンソ・ペレスが現在、改修中のせいでしょうか、そのすぐ近くにあるシウダッド・デポルティボ(練習場)でアトレティコ・バレアレス(2部B)戦とあったものの、あそこって確か、スタンドが1面に申し訳程度にあるぐらい。あとの観客は立ち見しろっていうことでしょうか。9日のアルコルコン(2部)戦は相手のホーム、サント・ドミンゴ開催なので、レガネスのようにセルカニアスで行けるため、マドリッドに観光に来ているファンなどにはお手頃かもしれません。そしてリーガ開幕、アウェイでのアスレティック戦前、最後の親善試合は12日、昨季2部に昇格したアルバセテが相手。何せ、ヘタフェはリーガの注目チームでは決してないため、キャンプ中のニュースもほとんど出ませんからね。私も困っているんですが、来週、こちらに戻って来たら、また練習を見に行って、柴崎選手の様子などもお伝えできるかと思います。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。