今年4月にソニー生命が発表した『中高生が思い描く将来についての意識調査(男女の中学生200人・高校生800人対象)』で、男子中学生の将来なりたい職業に1位『ITエンジニア』、2位『ゲームクリエイター』、そして3位に『ユーチューバーなどの動画投稿者』が選ばれたと話題になりました。

大人からすれば『ユーチューバー』は職業というより趣味の範疇でしたから、それが中高生にとってはもはや職業として成立しているという感覚に驚きを隠せません。

でも驚いている場合ではないんです。そんな状況を受けてさっそく『ユーチューバー養成講座』を始めた会社が登場しました。先程のデータは男子中学生のなりたい職業でしたが、今回は小学生向けに教育事業を展開するFULMA(フルマ)が、ユーチューバーを育成する『YouTuber Academy』を開校。日本初だそうです。

中学生のなりたい職業なら、小学生のうちに学べるようにしておこうと思ったかどうかはわかりませんが、FULMAでは、今年の3月からユーチューバーの体験会をスタートさせ、そこで小学生に適した教え方のノウハウなどを順次蓄積させてきました。その経験を活かしてこの7月から本格的に授業をスタートさせています。

いまやユーチューバーはまさにアイドルやスター並みの人気を誇っているのは周知の事実。ウィキペディアで検索すると『主にYouTube上で独自に制作した動画を継続的に公開する人物や集団のこと』とあります。

つまり『継続的に』公開できるかどうかが重要な鍵なんです。誰でも毎日楽しいことだけやって暮らせたらそんな良いことはないと思って始めるんですが、それを職業にするには、継続できなければなりません。

実際の人気ユーチューバーの現実を調べてみると、想像を絶する努力が『継続性』を支えているとわかります。

例えば、先日テレビ番組でも紹介された人気ユーチューバーのヒカルさんは、これまで4年間の収入について『トータルはおそらく3億ぐらい。今年はこのままいけば、3億から5億ぐらいは稼げるのではないか』と答える一方、動画を作成するために実際にやった『自販機の飲み物を買い続ける』とか『宝くじや馬券を買い続けていくら当たるか』などのために使ったお金は5000万円を越えていると言います。

ユーチューバーはほかにもたくさんいるので、5000万円使ったけど全然収入が得られなかったというユーチューバーもいるということです。

そんな現実の厳しさまで、この講座で教えるわけではないでしょうが、『YouTuber Academy』のウェブサイトを見てみると、とても興味深い学習内容が盛りたくさんです。

ユーチューバーにはなってみたいけど、やるためにはネットのどんなことを知っていないとルール違反になるかや、投稿した動画は何年残るのかなど、やさしいクイズ形式で学ぶことができます。

さらには、映像を通じて人に何かを伝えるときに「どんなやりかたが一番良いのか」、それは「みんなが知ってることと比較して、ギャップを伝えるのが大事」だといった内容も教えてくれます。

そしてカメラを使って撮影はどうすればいいのか、撮った動画はどうやると編集できるのかなど、動画制作の基本までも網羅していて、大人でも勉強になることがいっぱいです。

担当者によれば、「ユーチューバーになるまでの過程には多くの学びが含まれており、内気な子供の場合などでも『表現する』という経験から自信を取り戻すきっかけにもなっていくでしょう」と話しています。

経済産業省の『IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(平成28年6月)』によれば、2015年時点で約17万人のIT人材が不足していて、今後IT人材の供給力が低下するにもかかわらず、ITニーズの拡大によってIT市場は今後も拡大を続けることが見込まれるため、IT人材不足は今後ますます深刻化し、2030年には、約59万人程度まで人材の不足規模が拡大する』とあります。

現在この対応策として2020年の小学校でのプログラミング教育必修化を検討すると文部科学省が発表しました(2016年4月)。中学生や高校生のなりたい職業が『ITエンジニア』や『ユーチューバー』『ゲームプログラマー』なら、まさに彼らは未来を支える救世主。

ユーチューバーを単なるブームに終わらせず、子供の教育に活用するということは、早い段階からネットリテラシー全般を身に着けることことにもつながり、とてもいいことなのではないでしょうか。

[文・構成 土屋夏彦/grape編集部]

土屋夏彦

上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。