安川電機の産業用ロボット。2015国際ロボット展にて(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

写真拡大

 いよいよ上場企業の決算発表シーズン。といっても、年に一度の本決算や半年に一度、開示される中間決算ではない。4〜6月の3カ月間を対象にした第1四半期決算だ。7月28日ごろから発表社数は一気に増え、8月半ばにかけてラッシュ状態に入る。今年度に入ってから出足3カ月間の業績動向は夏場以降の行方を占うものとしてマーケットの注目度は高い。

 こうした状況下、実力企業のトップバッターとして第1四半期決算を発表したのが安川電機(6506)。その決算を見た市場関係者から相次いで「ポジティブ・サプライズ」の声があがった。要するに、びっくり仰天の好業績だったのだ。株価も急騰。いったい、何が起こったのか――。(解説:証券ジャーナリスト、神田治明)

第1四半期、営業利益は2.4倍

 安川電機が20日午後4時に発表した第1四半期連結決算は売上高が1074憶9800万円(前年同期比18.9%増)と伸び率は二ケタに達した。それ以上にマーケットの関心を引いたのは、本業の儲けを表す営業利益が132億1800万円(同2.41倍)に膨れ上がった点だ。経常利益は125億6800万円(同2.38倍)、当期利益も97億9900万円(同2.85倍)に大ブレイクした。

 得意とする高付加価値のACサーボモーターが中国向けを中心に伸びたことが主因だ。ACサーボモーターを中心とするモーションコントロール部門に限ると、第1四半期の営業利益は108億3100万円(前年同期比2.33倍)と激増。また、ロボット部門も35億3100万円(同58.6%増)の営業利益を稼ぎ出した。

 同社はこうした今期立ち上がり3カ月間の好業績を踏まえ、第2四半期累計、つまり今年度上半期6カ月間の業績予想も上方修正。期初に打ち出していた売上高2135億円、営業利益197億円を、それぞれ2285億円(前年同期比21.8%増)、282億円(同2.04倍)に塗り替えた。

 会社側によると、モーションコントロール部門は、スマートフォン関連、データセンター関連、自動車関連での設備投資が世界的に盛り上がっていることが大きい、と指摘。証券アナリストとのミーティングでは需要増と背中合わせに、通常なら高まるボリュームディスカウント(値引き要求)の動きがおこらなかったことも収益アップにつながった、と説明した。また、中国の自動化ニーズの高まりから、利益率の高い産業用ロボットにも高水準の引き合いが寄せられている。

 下半期の見通しについては、先行き不透明を理由に期初の予想を変更していない。しかし、通期の業績予想は、為替レートが1ドル=110円、1ユーロ=115円と保守的な線を前提にしている。主要製品の需要増ペースが急減速しない限り、業績計画の大幅な超過達成が十分に可能、との観測がマーケットに飛び交っている。

銀行系証券も「べた褒め」

 この決算内容を見た証券会社の間から、「ポジティブ・サプライズ」の声があがったのは当然だろう。ポジティブ(前むき)と、サプライズ(驚異)という言葉をつなげた株式マーケットでは最大級ともいえる高評価だ。上期と通期での増配方針も注目された。

 案の定、決算発表翌日の21日は安川電の株価は買い殺到から、カイ気配でスタート。一時、2938円と上場来の最高値を付け、25日には2970円とさらに上値を追った。

 みずほ証券は「非の打ちどころがない決算」と担当アナリストが21日付のリポートで絶賛。日ごろ、クールな分析をウリとする銀行系証券のアナリストが、このように「べた褒め」するのはめずらしい。

これだけあるその他の有望企業

 実は、安川電機ほどではないにしろ、今後、収益が大幅に伸びる可能性を秘めている企業がある。古くから設備投資関連の有力企業として存在感を発揮してきた安川電機と同様、設備投資拡大で潤う企業はそうした変身候補だ。

 優良企業のファナック(6954)も、その一社で、今3月期の業績予想の前提レートは、なんと1ドル=100円。円安メリットに加え、ロボット受注の増勢から、会社側の業績見通しは上振れが有望だ。

 オムロン(6645)、日立(6501)、三菱電機(6503)、日本電産(6594)、富士電機(6504)もマークしたい設備投資関連企業である。

 ある有力エコノミストによれば、国内の製造業は積極的な設備投資計画を立てているところが多いため、「今秋以降、本格的に投資が動き出す可能性が高い」という。

相場はまだ助走段階

 先読みを争う株式マーケットは、半年から9カ月程度先をにらんで動く。7月20日に発表した日銀の「展望レポート」は日本経済の現状について、「所得から支出への前向きな循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している」と分析。

 9月には、景気の拡張期間が高度経済成長期の「いざなぎ景気」の57カ月間を越えて、戦後第2位に達する見通しだ。

 景気のエンジン役となる設備投資も、いよいよ熱を帯びていく可能性が出てきた。安川電機を先行ランナーとする設備投資関連株物色は助走段階といえるかもしれない。

(証券ジャーナリスト、神田治明)