畳表の原料となるイグサの生産が首の皮一枚つながった――。農機大手のクボタ(大阪市浪速区)が、イグサの収穫機「いぐさハーベスタ」の生産を約9年ぶりに復活させた。

 日本一のイグサ産地である熊本県八代市の農家の男性は「クボタさんが収穫機を再び造ってくれなければ、イグサ生産の廃業や大幅縮小が相次いだでしょう」と胸を撫で下ろす。クボタは2019年までに100台を生産・販売予定。今年6月からすでに29台を出荷している。ちょうど現在、収穫の大詰めを迎えているが、「いぐさハーベスタ」は大活躍しているという。

 イグサの収穫量は激減している。農水省の統計によると、07年のイグサの収穫量は1万5200トンだったが、昨年は8340トンと半分近くになっている。

「かつては、ほとんどすべての部屋で畳が使われていましたが、最近は、家を建てても、畳の部屋を1部屋置く程度。中国品の輸入の影響もある。価格は国産の3分の1程度。07年ぐらいから増えました」(農水省生産局地域対策官)

 熊本県の農産園芸課によると、多くの農家は米とイグサの二毛作。1月にイグサを植え付け、6〜7月に収穫。8月に田植えをし、秋に米を収穫する。イグサの収穫は2カ月で一気に行う重労働で、収穫機は不可欠だ。しかし、イグサ需要の激減で07年ごろまでにクボタを含め農機メーカーは、イグサ収穫機製造から撤退していた。

「製造されなくなって約10年。手持ちの収穫機を手直ししながら何とかやってきましたが、もう限界ということで、熊本県などを通じてクボタさんに再生産のお願いをしてきました。高齢化、後継者不足で、イグサの収穫を手刈りでやるのは到底無理です。何とか延命できた。農家は大喜びです」(熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会担当者)

 1台の価格は745万円(税込み)。かつて生産していた時の倍まではしないが、かなり割高になっている。それでも3年で100台では、ビジネスとしてはおいしいものではないだろう。

 クボタの広報担当は「農業振興という観点でも事業を捉えています」と苦笑する。

 畳文化継承の裏側には、こんな苦労があった。