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●最新オフィスかと見まがう教室

教育現場へのICT導入が、急速に進められている。端末一人一台体制やプログラミング授業必修など、矢継ぎ早に文部科学省の方針が示されたからだ。そんななか、先進のICT教育環境を整えた学校を見学させてもらった。東京の聖徳学園だ。

案内してくださったのは聖徳学園 教育ビッグデータ エバンジェリスト 情報システムセンター長 ICT支援員 横濱友一氏だ。まず、名刺に印刷されている“ビッグデータ エバンジェリスト”という肩書きに少々驚きを憶えた。エバンジェリストということは、ICT化を進めるほかの教育機関に、助言や指導を行っていることが容易に想像できる。これだけでも、聖徳学園が先進のICT教育環境を整えていることがうかがえる。ただ、横濱氏はエバンジェリストとはいっても、普段は教職なのだそうだ(以下、横濱先生)。

○多目的に使えるスペース

続いての驚きが、最初に通された四方をガラスに囲われた部屋だ。採光が豊かで明るいこの部屋は、“学校の一室”というよりも、先進企業の会議室のような様相だ。70インチクラスのディスプレイが4基備えられ、オーディオ機器も充実している。細かいことだが、記者会見のときによくみる、バックパネルまで用意されている。この部屋はどういう用途で使うのか横濱先生にたずねると、「教室です」という答えが返ってきた。

最新のオフィスかと思うほどの施設だが、奥には自習をする生徒や、“早弁!?”(筆者が入室したのは正午前だった)をする生徒がチラホラとみられた。横濱先生は「基本的に、生徒が自主性を持って使える教室になっています」と笑みをみせる。そのほか、複数のクラスが合同で授業を受けたり、国語や数学といった異なる科目の同時授業を行ったりとフレキシブルに使えるようになっている。

印象的だったのは、部屋の片隅に小型の掃除機が用意されていたこと。横濱先生によると、「掃除機ひとつを置いておけば、生徒たちがこの部屋を使ったあとに、自主的に掃除していきます」とのことだ。日本では、小学生の頃から生徒たちが教室を掃除するという習慣が根づいているが、それが中学・高等学校の聖徳学園でも実践されているという証だ。

●デバイスを“使う心”を育む

続いて教室をのぞいてみよう。見学させていただいた教室は、これまで拝見させていただいたほかの学校に比べ、面積的には若干小ぶり。だが、正面と左前にプロジェクターによる投影可能なボードが設置され、多くの情報を伝えるシステムだというのはひとめでわかった。

残念ながら、すでに昼休みとなっていたので実際の授業風景はのぞけなかったが、印象に残る光景を目にした。それは、生徒たちはお弁当を食べながら談笑し、そして手元のiPadで何かしらの情報収集、あるいはコミュニケーションを行っている姿だ。廊下にiPadを手にしていた生徒もみられた。だが、友人との“おしゃべり”、つまり、リアルなコミュニケーションはまったく失われていない様子だった。

横濱先生は「社会に出たときに触れるデバイスを“使う心”を育てることに主眼を置いています」と話す。どういうことかというと、社会人でもデバイスに振り回され、トイレに長時間こもりスマホをのぞいたり、運転中にスマホをいじったりということがある。最近では「Pokémon GO」を自転車乗車中、あるいはクルマの運転中にプレイすることが社会問題になった。どんなに新しいデバイスやアプリが出てきても、正しく使える心構えを育てるということだ。デバイスを使っていいときは使い、NGなときには使わない。または、デバイスに夢中になりすぎて、本来やるべきことをおろそかにしないという姿勢を育てているということだろう。

○バーチャルなコミュニケーション手段も用意

一方、“バーチャル・コミュニケーション”にも力を入れている。聖徳学園には教職員・生徒をあわせて900人ほどが在籍しているが、それぞれが「Talknote」というSNSアプリを導入し、バーチャルにコミュニケーションを図っている。

たとえば、日曜日の夜に何か問題が起こった際に、生徒が先生にSNSを使って連絡。先生は、月曜の朝にいきなり問題を告げられるのではなく、日曜の夜のあいだになんらかの対策を考える余裕が生まれるという。

また、こんな効果もある。多くの子どもが集まる学校では、やはりリアルなコミュニケーションが不得意な生徒がいる。そうした生徒は孤立しがちだが、それはまわりの生徒がその子のことを理解していないからという場合もある。だが、リアルなコミュニケーションが不得意な生徒がSNSで自分のことを発信し、それをほかの生徒が理解すれば、リアルなコミュニケーションに発展する。

ただ「しばしばSNS上で仲違いも生まれます(笑)。そんなときでもSNS上で仲裁する生徒が現れて、かえってグループとしてのコミュニケーションが深まります。教師としては、ログとして会話が残るので、何が仲違いの原因なのか、判断しやすくなるのがメリットでしょう」と横濱先生は話す。

●和室やスタジオも用意

さて、せっかくなのでほかの施設もザッとみてみよう。聖徳学園は創立90周年を迎え、記念事業として各所をリニューアルしたそうだ。美術・技術室、音楽室などには例外なくプロジェクター投影機能が備えつけられた最新のものだった。

特に印象に残ったのは“和室”。書道といった授業に使われるとのことだが、これほど本格的な和室を備えた学校はそうないだろう。

極めつけは、スタジオの存在で、映像や写真撮影に使われるという。和室もそうだが、スタジオを備えた学校というのも珍しいのではないか。

こうした施設を見学させていただき、ICTだけではなく総合的に学びの環境を整えているのだなと理解した。これほどの学舎に通えるのは素直にうらやましいと思いながら、ガヤガヤと楽しそうにする生徒たちの声を背に、聖徳学園をあとにした。