【インタビュー】スペインでの1年半で“引き出し”を増やした鈴木大輔「一皮も二皮もむけたい」

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 スペイン2部のヒムナスティックで1年半を過ごし、間もなく3シーズン目を迎える鈴木大輔。在留邦人もほとんどいないタラゴナの街で、彼は通訳もつけずに孤軍奮闘している。

 スペインでの生活を通じて彼は何を感じ、選手として、一人の人間として、どのように成長しているのだろうか。

インタビュー・文=池田敏明

■2部でプレーする難しさと楽しさ

――まずは、ヒムナスティックでの2016−17シーズンを振り返っていただけますか。チーム、および個人として、どのような1年間でしたか?
2015−16シーズンにプレーオフに進出したこともあり、チームとしては当初、1部昇格を目標に掲げてスタートしたんですけど、シーズン序盤からなかなか結果が伴わず、最下位にいる時間が長くなってしまいました。結局、最終的な目標は2部残留になってしまいました。僕自身は、コンスタントに試合に出続けていた時期もあれば、出られない時期もあり、個人としてもチームとしてもタフなシーズンでしたね。でも、最終的に2部残留を果たして、自分もシーズンを通してそれなりに試合に出られたので、得たものは大きかった。途中で変わりはしましたが、最終的にチームの目標を達成できたのがよかったかな、と思います。

――目標を昇格から残留へと切り替えたのはいつ頃だったのでしょうか。
前半戦を終えた頃ですね。最下位に沈んでいたので、そこで残留という目標にはっきりと切り替えました。また、監督が代わったのでチームとしての戦い方も変わり、より守備的にしました。ラスト3試合のところでまた監督が代わり、元に戻した感じでしたね。

――シーズンを終えて、どんな収穫がありましたか?
シーズンを通して2部でプレーして、出たり出なかったりを繰り返しながらも割とコンスタントに試合に出られたので、2部のサッカーがどういうものか、どんな選手が結果を出しているのかが分かってきました。自分の中での情報が多くなったぶん、より溶け込むことができたと思います。

――スペインリーグというと、テクニカルで華やかなイメージがあるんですが、2部のサッカーは1部とは違うものですか?
2部のサッカーは、テクニカルで華やかではないですね。1部は経験していないので分からないですが、とにかくプレッシャーが激しい。プレッシャーをかけにいく、ボールを奪いにいくという部分は全チームが持っていると思います。1部よりも細かいミスが多いと思うので、だからこそプレッシャーをかけにいくという感じです。ボールを失わないように大事に繋いでいくチームも多いですけど、逆にパワー主体で来るチームもありますね。オープンな展開が試合を通して多くあり、ボールが行ったり来たりする中でプレーするので、フィジカルもすごく大事になります。

――鈴木選手のようなセンターバックの選手の場合、一対一の強さが重視されそうですね。
一対一の局面は多いですね。DFに限らず、どのポジションも多いです。

――対戦相手は知らない選手ばかりだと思いますし、情報がない中で対戦する苦労もあるでしょうね。
最初は何も知らないから「もういいや」って。Jリーグでは対戦相手のタイプは何となく分かるんですけど、「コイツ、どんな選手なんだろう」って(笑)。試合が始まって最初のワンプレーで、「あ、スピード系の選手なんだ」とか「パワー系なんだ」、「パサーなんだ」とを見ながらプレーするのは、新鮮で楽しかったですよ。2016−17シーズンはだいたい相手のタイプが分かってきて、チームメートにも聞けるようになって、情報を得た中でプレーできるようになったので、見える景色が少し違ってきましたね。

――日本人にはない、とても対応できないような能力を持ったFWと対峙することもあると思います。
抑えられないと思った選手はいないですが、1試合に何回もやられます。パーフェクトに抑えられた試合もないです。やられることもあれば、抑えられることもある。それが楽しいですね。

■ヘディングで負けている感覚はない

――2017−18シーズンに向けての課題は?
もう少し主張してもいいのかな、と思いました。スペインに慣れ、仲間との信頼関係が築けている一方、試合やトレーニングのたびに存在をアピールしていかなければならない中で、コミュニケーションの部分は大事だと思っていたので、言うべきところは主張するようにしていました。難しいことはあまり考えず、思ったことをどんどんぶつけていけばいいかな、と思っていたんですが、そういったところはまだまだかな、と感じますね。

――日本人は協調性を重視する傾向が強く、なかなか個を出せない部分があると思います。
協調性を重視することは、ベースとして持っておかなければならない部分だと思います。与えられたポジションを100パーセントの力でこなす。言われたこと、与えられた仕事を100パーセントやる部分は評価されると思うので、それは必要だと思うけど、シーズンを通して戦っていく中で、やはり思っていることを伝えるようにしないと、それがない選手だと思われると一気に評価が下がってしまうので、技術的なところもそうですけど、自分をアピールする能力が必要だと思います。

――思っていることを伝える、アピールするという部分でいうと、スペイン語の能力はいかがですか?
ピッチで伝えることに関しては問題ないです。練習中、試合中はほぼ不自由なくやれていると思います。日常生活に関してもそんなに問題はないですね。

――クラブが制作し、YouTubeなどで配信している『NASTIC TV』にもたびたび出演されていますが、流暢にスペイン語を話されているな、という印象を受けました。
あれは結構グダグダです(笑)。全く喋れていないと思いますよ。でも、意識的にああいう場には出るようにしています。あのプレッシャーの中でしゃべらないと、能力が伸びないと思ったので。

――『NASTIC TV』では、GKのストール・ディミトリエフスキ選手と一緒に出演することが多いようですね。
彼は何年もスペインにいるのでペラペラです。ただ、他国から来ていて喋れない経験があるから、教えるのがうまい。「今こういう感じだから、こう言うんだよ」というのをその都度、教えてくれるんで、一緒にいて語学力は伸びるかな、と思います。

――通訳はつけていないんですか?
いないです。スペイン人に日本語を教えている日本人の先生が現地いて、その方の下で学んでいます。

――タラゴナはカタルーニャ州にありますが、カタルーニャ語も勉強しているんですか?
カタルーニャ語はスペイン語と全く違うんですよ。チームには外国人プレーヤーもいるので、カタラン(カタルーニャ出身者)もスペイン語で話すんですけど、地元の人が集まるとカタルーニャ語になって何を話しているか分からないので、基礎的な部分だけは学びました。勉強するのは大事かなと。

――2016−17シーズンの第41節では、柴崎岳選手が在籍していたテネリフェと対戦しました。残念ながら鈴木選手はベンチスタートでしたが、柴崎選手のプレーはどう映りましたか?
違いを作れる選手だな、と感じました。わりと自由を与えられているな、という印象で、いろいろなエリアに顔を出し、自分でパスを引き出してゲームをコントロールし、危険なところにも常に顔を出しているというところは、うちの選手たちからも評価が高かったですし、出場した選手は「嫌だった」と言っていました。自分が試合に出てそれを感じられれば一番、良かったんですけどね。

――事前にチームメートに情報を教えたのでしょうか。
しました。ただ、スカウティングの段階で「ケアしなければいけない選手」として岳がピックアップされていて、全員で映像をチェックしていましたよ。「ボールコントロールの質が高くて、危ないところに顔を出す」という情報でした。「よく走るね」とみんな言っていて、評価は高かったです。

――少し遡って、2月の第27節サラゴサ戦では、スペインでの初ゴールを決めました。
最下位から脱出するために必要な勝利に繋がるゴール、チームとして価値のあるゴールを決められたのがよかったな、というのが思い出として残っています。あと、チームメートが初ゴールを喜んでくれたのもうれしかったですね。

――ゴールはヘディングで決めたものでしたが、空中戦で競り合う部分は武器としてアピールできると思います。
そうですね。そこは自分のストロングポイントと言えると思います。スペイン2部でプレーしていて、ヘディングの部分に関しては負けている感覚はないです。もっともっと良くなるとは思いますが、自信を持っていいと思います。

――その他に、日本人DFとしてスペインで通用すると感じたことはありますか?
常にいいポジションを取ろうとする意識は、個人的には自分の売りになるかな、と思いました。90分間集中して、正しいポジションにいようとする。決してサボらず、正しいポジションを取り続けるというのは、日本人として当たり前のこととしてずっとやってきたんですが、スペインでプレーしてみて、「あ、この部分は日本人の良さなのかもしれないな」と感じました。

■スペインは自分を主張する能力がより求められる国

――スペインに身を置くことで、サッカー観に変化はありましたか?
彼らは状況判断がうまいので、状況に応じて自分で考えて行動しなければならないという意味では、毎試合、考えさせられましたね。

――では、人生観の変化は?
生活に対して満足できる能力があるというか、「自分はすごく恵まれているな」と感じながらプレーする能力が高いな、と感じました。自分の場合は、ないものを求めがちだったかな、と思います。

――ヒムナスティックの本拠地であるタラゴナは、日本人にとってあまりなじみのない街だと思いますが、その魅力を教えていただけますか?
バルセロナに近いので、似たようなところがあると思うんですが、自分が初めて行った時の印象は「リゾート地のようなところだな」という感じでした。地中海沿いで、きれいなビーチがたくさんあって、天気が良くて。小さな街なんですが、凝縮されたようにいろいろなものが詰まっていて、何不自由なく、すべてがそろうような環境で、そこに海があってご飯がおいしくて、みんなゆったり過ごしているイメージですね。

――現地の方々と触れ合う機会も多いのですか?
地域密着型のクラブなので、地域の人と関わるイベントはけっこうあるし、子供たちも含めて地域の人たちとのかかわりはたくさんあります。

――在留邦人の方はいらっしゃるのでしょうか?
自分にスペイン語を教えてくれる方……ぐらいしか見たことがないですね。日本人同士で固まる時間がないですし、休日はチームメートの家族と遊びに行ったり、ごはんに誘ってくれたりすることが多いので、より現地に溶け込みやすいですね。

――日本から来る人は?
昨年、柏レイソルのサポーターが来てくれましたし、日本から来る人も増えています。バルセロナから近く、観光をしたついでに寄れるぐらいなので、それも影響があると思うんですが、わざわざ来てくれたのはすごくうれしかったです。

――古巣である柏の成績はチェックしていますか?
気になります。柏の選手と連絡を取り合っていますし。GKとセンターバックを若い選手が務めていることは本当にすごいと思いますし、個人的に期待しています。中谷(進之介)はかわいがっていた後輩で「(鈴木が柏時代につけていた)4番をつけますわ〜」と言っていたんですが、バリバリやっている姿を見るといい刺激になりますね。「負けてられないな」と。だからどんどん日本にニュースを届けて、彼らに頑張っている姿を見せないといけないですよね。刺激し合わないと。彼らのような若い選手にも欧州移籍のチャンスはあると思うので、どこかで一緒にやれればいいですよね。

――後に続く選手のためにも、鈴木選手の活躍は不可欠ですね。
ヨーロッパでの日本人センターバックの評価は、自分を通して見られるところは絶対にあると思います。スペイン2部では絶対に自分が見られると思うので、そこの責任は感じています。自分がスペイン2部で評価されれば、若い日本人センターバックの売り込みがかかった時に獲得してくれるかもしれない。そうなればいいかな、と思っています。

――スペインではなかなか日本人選手が成功を収められていません。その理由はどこにあると思いますか?
理由はどうでしょうね……。まだ1年半しかプレーしていないので一概には言えないですけど、一つにはサッカーのクオリティーが高いところにあると思います。あと、パーソナルなところでは、基本的にみんな気が強い。ノリがよくて気が強い選手がそろっているので、自分を主張する能力がより求められる国なのかな、と思います。日本人はそこで苦しむと思います。昨シーズン、乾(貴士/エイバル)くんはその評価を覆すインパクトを残しましたし、岳も加入から半年でチームをプレーオフに導きました。そうやってみんなで頑張れればいいかな、と思っています。

――乾選手は、うまく自己主張できているということでしょうか。
乾くんは……“サッカー小僧”ですし、イジられることでチームに溶け込んでいった面もあると思います。

■日本代表は意識している。ロシアW杯は絶対に出場したい

――2017−18シーズンの目標や、ご自分に期待することを教えてください。
来シーズンは、昨シーズンよりもっと自分を出していきたいですね。ようやくスペインのサッカーに慣れてきて、言葉や環境にも適応してきたので、今まで培ってきたものをぶつけていく年なのかな、と思っています。

――お話をうかがう限り、今までもかなり自己主張されてきた印象を受けましたが、まだ足りないということですか?
まだまだ足りないです。スペインでやっていくには自分を出すことが最も大切だと日々、感じているので、そこを失ってはいけないと思います。ただ、一番、足りないのは実力の部分なので、技術についても改善すべきところはあると思います。

――技術の面において、この1年半で特に成長できたと思える部分はどこでしょうか。
局面ごとに何をすべきなのか、より考えるようになったと思います。与えられた任務をこなすことがベースにあるんですが、それがすべてではなく、状況によって判断していかなければならない。みんなそうやってプレーしているので、僕もつられて出せるようになったかな、と思いますね。あと、個人的な能力では、体の使い方がうまい選手とマッチアップする機会が多いので、対応の仕方や体の使い方は意識するようになりました。もちろん当たり負けすることもありますが、それによって自分の引き出しが増えるというか、やられた経験が自分の伸びしろになるかな、とは感じていました。

――サッカー選手として今、持っている夢を教えてください。
選手としてはやはり、スペイン1部にステップアップしていくことが目標になると思います。

――1部の試合を見る機会もあると思いますが、自分がどんなプレーをするか、イメージしながら見ることもあるのでしょうか?
どうなんだろうな、と思いながら見ていますね。でも、あまり想像しすぎても仕方がないので、とりあえず2部で1日ずつ戦って、その先に1部でプレーする日が来ることを信じてやっています。

――試合を見ていて、うまいと思うセンターバックはいますか?
1部のチームでレギュラーとして出ている選手はみんなうまいですね。パス出しの能力、一対一の能力は、どの選手もマストで持っています。昨シーズンはセルヒオ・ラモスがあれだけのゴールを決めていて(リーグ戦で7ゴールを記録)、リアルタイムで見ていて勝負強いな、と思っていました。

――現在の日本代表については、どのように見ていますか?
代表は本当に意識していますし、今はチャンスがある時期だと思っています。客観的に見て、いろいろな選手を試している時期なのかな、と感じているので、いつ試されてもいいように、いい準備をしていきたいなと思っています。

――2018年ロシア・ワールドカップに向けての思いもあると思います。
自分はセンターバックとして一皮も二皮もむけたいと思っています。スペインに来てそれが少しできたと思っていて、いろいろな経験をする中で、センターバックとして成長している部分はすごくあるんですが、W杯という大きな緊張の中で戦えれば自分のさらなる成長につながるので、そういう意味では絶対に出場したいと思っています。