中国政府が、脱北者の北朝鮮への強制送還を続行する意思を改めて示したと、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が伝えている。

VOAによれば、中国外務省の陸慷報道局長は24日の定例記者会見で、国連のトマス・オヘア・キンタナ北朝鮮人権特別報告者が強制送還の中断を求めたことに対し、脱北者は保護すべき難民ではなく不法越境者であるとの見解を示した。

拷問が横行

陸氏はまた、中国政府は脱北者問題を国内法と国際法、そして人道主義の原則に基づいて適切に処理してきた、と説明したという。

中国政府は以前から、脱北者問題が出るたびにこれと同じ主張を繰り返してきた。しかし、中国政府が行ってきた脱北者の強制送還が、国際法に違反しているのは明白である。

中国が1982年に加入した「難民の地位に関する条約」は第33条において、生命や自由が脅かされる恐れのある領域に難民を追放したり送り返したりしてはならないと規定している。脱北者の多くが経済的理由から越境しているとしても、それは生き延びることを優先するあまり政治を考える余裕がないからであり、ほとんどの脱北者は政治難民として認められる要素を備えている。

それなのに中国政府は、10万人をゆうに超える脱北者に足枷をはめるなどして本国に送り返し、また送還された人々全員が本国で拷問、収監、処刑といった過酷な迫害を受けてきたのだ。

これは、現代の世界史上でも類を見ない状況とされる。言ってみれば、中国政府自身が10万人もの男性と女性、老人と子どもたちを処刑場送りにしてきたも同然なのだ。

中国が北朝鮮との間で結んでいる「辺境地域の国家安全と社会秩序維持業務のための相互協力議定書」には、「住民の違法越境防止業務」(第4条)、「犯罪者処理問題での相互協力」(第5条)、「犯罪人、違法越境などの引継ぎ手続き」(第9条2項)などが規定されている。これらを根拠に、中国は北朝鮮との条約上、脱北者を送還する義務があると主張している。

しかし、中国が1988年10月に加入した「国連拷問等禁止条約」は第3条で、「いかなる当事国も、拷問を受ける恐れがあると思われる相当の根拠がある他の国に、個人を追放・送還もしくは引き渡してはならない」と規定している。たとえ難民だと見なされない人であっても、拷問が横行する北朝鮮のような国に無理やり送り返してはならないということだ。

(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

中国がいい加減、このようなことを止めるべきなのは言うまでもないが、日本をはじめとする諸外国は、もっとこの問題で中国を責めるべきだ。北朝鮮の金正恩体制を存続させているのは、中国と北朝鮮の貿易だけではない。脱北者を強制送還することで、金正恩体制の恐怖政治を間接的に支える形になっているのだ。

北朝鮮から核兵器を完全になくすには、かの国の民主化が不可欠だ。そこに至るためには、より多くの北朝鮮人が外部の情報や空気と接し、「自分たちの声」を上げるようにならなければならない。

そのためにも、中国政府に脱北者の強制送還を止めさせ、自由を求める北朝鮮人の「安全地帯」を作る必要があるのだ。