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誰もが一度は見かけたことがある気になる存在

 長い間、ずっと気になっていた存在がある。彼らを目撃するたびに話しかけたい衝動に駆られながらも、自制心を保って今までやってきた。しかし、もうこれ以上の沈黙に耐えることができそうにない。だから、語ろうと思う。著者が気になっているのは、駅のホームで抱き合い、海藻のように揺れているカップルについてである。

 とはいっても、彼らについて何を語ればいいのだろうか。なにせ、相変わらず筆者は彼らに話しかけることすらできないのである。それにしても、この手のカップルに、美男美女が少ないのは何故なのだろうか。顔を凝視して確認したわけではないが、遠目から見たところによるとそのように感じる。しかし、おそらくこれは偏見であろう。きっと彼らとの精神的な距離が、筆者の目を曇らせてしまっているのだ。

 それだけ彼らは遠く、霞のかかった存在である。けれども、彼らを目撃したことがない人は、一人もいないのではないか。もはや絶滅危惧種となった公衆電話よりは、メジャーな存在だ。もちろん駅のホームだけに限らず、街中でも彼らは揺れている。

 しかし、何と言ってもよく目撃されるのは駅のホームである。特に終電間際になると、彼らはここぞとばかりに増殖する(しかも何故か、複数の路線が乗り入れるターミナル駅に出没することが多い)。階段やエスカレーターの影で揺れていることもあれば、堂々と人目に付きやすい場所で揺れていることもある。神出鬼没に現れる彼らは、異質な存在であるにもかかわらず、背景の溶け込み、ただ静かに揺れているのである。

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