38件の手術が中止になった(写真はイメージ、本文とは関係ありません)

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埼玉県さいたま市の県立小児医療センターで、病室や手術室に「チャタテムシ」という虫が複数見つかり、予定されていた手術を取りやめた。

人を刺したり噛んだりするような直接の害はないが、場合によってはアレルギー反応をもたらすことがあるという。家庭でも比較的よく見かける虫で、どう注意すべきかを調べた。

アレルギーの原因やダニ発生の要因にも

J-CASTヘルスケアが埼玉県病院局経営管理課に取材したところ、最初にチャタテムシが発見されたのは2017年7月19日。子どもの入院患者が、病院で貸し出している本に付いていた虫を見つけたという。その日の夕方、患者の親が虫の件を病院職員に伝え、ほかの病棟でも調べたところ、21日になってチャタテムシがいたとの報告が複数あった。

その後、手術室でも目撃情報があったため、虫採集器(バグトラップ)を病院内の複数個所に設置したところ、手術室5室と8つの病棟でチャタテムシを確認。24〜25日の2日間、予定されていた38件の手術を中止し、害虫駆除の専門業者による炭酸ガスを用いた燻煙処理と、徹底的な清掃を行った。この後に再度虫採集器を設置して、チャタテムシが完全にいなくなっていれば26日から手術を再開する。

チャタテムシが発生した原因は不明。なお経営管理課の話によると、過去に埼玉県内の病院で同様の事例はないという。

さいたま市健康科学研究センターが運営するウェブサイト「サイエンスなび」に、チャタテムシの生態に関する説明が書かれていた。カビを好んで食べる小さな虫で、夏の高温多湿な時期に大発生することがある。ちょうど今の時期が該当する。生息場所は、家の中の押し入れや畳、木製家具のほか、段ボール箱や壁紙、書籍にもいる。湿気の多い場所に穀物や乾物、菓子を置いておくと、そこにもわきやすい。体調は2ミリ以下で、ダニと間違われることがある。

埼玉県の発表によると、「死骸がアレルギーの原因やダニの餌となりダニ発生の要因になることがある」という。

アレルギー性ぜんそくの約2割はチャタテムシが原因か

チャタテムシは日本全国に約100種類いる。国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構」(農研機構)のサイトには、その一種「ヒラタチャタテ」について2011年の研究論文を引用し、「日本のアレルギー性ぜんそくの大人の患者185人のうち22%がヒラタチャタテに対するIgE抗体を持っていました」と説明している。IgE抗体とは、アレルギー反応に関係する抗体を指す。これは、日本人でアレルギー性ぜんそくを抱える人のおよそ2割は、ヒラタチャタテがアレルゲンになっている可能性を示している。

本来手術室はクリーンな環境であるべきで、患者の健康に害を与えるかもしれないチャタテムシ駆除、消毒のため一時的な手術中止はやむを得なかったのだろう。

ただし農研機構のサイトでは、チャタテムシが1匹もいない環境を作る必要はないとしている。確かに「室内にチャタテムシが大量に発生すれば、死骸等が大量に空気中に漂い、長期間大量に吸っていれば、その抗体が体内で増えて、アレルギー反応を起こすかもしれません」。そこで大繁殖させないために、室内を湿度60%以下に抑える、死骸を除去するために掃除を徹底する、といった日々の対策を怠らないことが大事だ。