■留まるところを知らないトイレの進化。日本人はなぜこだわるのか?

日本人の「トイレ」へのこだわりは、国際的にみても特徴的なものであるようです。日本発のヒット商品「ウォシュレット」は今や世界中で使われていますし、便座カバー、ペーパーカバーなどのこだわりは突出したものがあります。さらに、瞬間暖房機能付きの便座や自動洗浄機能など、トイレの進化は留まるところを知りません。



利用する個人も、トイレスペースを多方面に活用している方がいます。スモークスペースにする方、トイレに本棚を作り、便座に座りながらの読書を楽しむ方。音響機器やポータブルテレビを置き、音楽や番組を楽しむ方もいます。

■狭い住宅事情の中、トイレは一人になれる貴重な空間

このように、日本人がトイレにこだわることには、いくつかの理由があると考えられます。まず一つ目が、住宅事情です。部屋数の少ない日本の家屋では、プライバシーを守れる場所が限られてしまいます。狭い部屋の中に何人もの家族が布団を並べて就寝したり、親子が個人スペースを共有したりする家庭も多いものです。

そうしたなか、トイレは一人の時間を楽しめる数少ないリラックススペースと言えるのかもしれません。なんとなく一人になりたいとき、そんなときにはトイレに駆け込んで鍵を閉め、音楽やテレビに浸ってほっと一息をつく。そんなひとときに癒しを感じる人も、意外に少なくないのかもしれませんね。

■トイレにこもると慰められる?トイレの意外な心理効果

また、心理的にもトイレの狭いスペースは安心を感じられる場所だと思われます。四方を壁に囲まれていると、どこか守られているようで安心できます。幼い頃、親に怒られて押し入れにこもった経験はありませんか? 学校で嫌なことをされて、布団にもぐりこんだ経験はありませんか? 狭いトイレ空間にもストレスを抱えた人の心を癒すような、そんな心理効果があるのかもしれません。

子宮の中のように狭くて安心して守られるスペースに身を置き、温かい便座に包まれて、汚物をすべて飲み込んでもらう。そして、溜め込んだ不要物をデトックスした後の爽快感! 排せつは人間の基本的な生理的欲求の一つですが、排せつには性欲の解消とつながるような快感があります。だから、トイレはリラックススペースでありながら、ちょっとエロチックでファンタジックな空間でもあるのだと思われます。

■「便所飯」は安心した場所で食事をとりたいという本能?

ところで、数年前には「便所飯」という言葉が世間を騒がせましたね。一緒に食事をとる友人のいない学生などが、クラスメイトと同じ空間で昼食をとることを避け、「一人で食べているところを人に見られなくない」といった理由から、トイレの個室でご飯を食べる現象のことです。衛生的には好ましくありませんし、マナーとしてもよくない行為だと思います。一方でトイレの個室は、対人関係ストレスから逃れられる「シェルター」のような空間です。「食事は誰の攻撃も受けず、確実に安心できる場所でとりたい」と思うのは、人間の本能的な欲求ではないでしょうか。

安心できる人と一緒にいられるなら、ためらいなく食堂で食べることができるでしょう。また、周りが知らない人ばかりなら、どこで食べることもできるでしょう。しかし、関わりのある人と同じ空間にいながら、たった一人で食べるのは相当気が重いものです。そんなときには、確実に安心できる「トイレ」という個室にこもって食事をとりたくなるのも、無理からぬことなのかもしれません(便所飯を推進しているわけではありません)。

■日本人にとってトイレに求める思いは大きい?

トイレは誰もが利用するなじみの場所でありながら、人がトイレに対して感じる思いや欲求は、意外に奥深いものなのかもしれません。特にシャイで内向的な人が多い日本人にはトイレ空間に対して感じる愛着も強く、この愛着がトイレ機能を進化させ、トイレ空間に対するこだわりを生んだのだとも考えられます。

もちろん、トイレにこもってばかりいては、社会性が失われてしまいますね。しかし、トイレという安心できる個室空間にこもりながら、排せつとともにストレスを洗い流すことで、もう一度外の世界と関わる勇気が湧いてくるのかもしれません。そうした意味で、私たちにとってトイレの持つ意味はとても大きなものなのかもしれないと、ふと思うのです。

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