den-sen / PIXTA(ピクスタ)

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◆コーチング実践ができる人は少ない

 コーチングを実践するための話法は、身に付けたいスキルをパーツ分解し、コアスキルを反復演習する「分解スキル反復演習型能力開発プログラム」により体得できる(第40回参照)。

 これにより、極論すれば、仮にコーチング理論をすべて理解していなかったとしても、コーチング話法を実践できることになる。コーチング理論を頭で理解していても、コーチング実践ができない人と、コーチング理論を理解していなくても、コーチング実践ができる人とで、どちらがコーチング実践のパフォーマンスが高いかといえば、明らかに後者である。

 20年来の演習経験をふまえれば、わが国のビジネスパーソンでコーチング理論を学習した人は多くても、コーチング実践ができる人は極めて限られていると言わざるを得ない。今からでも遅くはない。コーチング話法を繰り出すことを身に付ければ、企業や団体内でコーチングを駆使し、メンバーを巻き込むことができる、さらに価値を発揮する存在になれるのだ。

◆コーチングを実現するプロセス

 私は、マネジメントにおけるコーチングとは、マネジャーがメンバーに対して、命令したり押し付けたりしないで、マネジャーとメンバーがお互いの考え方をすり合わせて、方向性の合意をしながら、仕事を進めることをサポートするものだと考えている。

 マネジメントにおけるコーチングを実践するスキルを分解していくと、マネジャーが業績などの事実を把握すること、マネジャーが解決策の仮説を立てること、マネジャーとメンバーとで方向性のすり合わせをすること、マネジャーとメンバーとで方向性の合意を形成することに分解すると習得がしやすい。

 さらに分解していくと、事実の把握には固定観念の排除が、仮説を立てるためには柔軟思考が必要であることがわかってきた。そして、方向性のすり合わせのためには質問のスキルが、合意を形成するためには懸念解消のスキルが必要であることがわかってきた。

◆固定観念を排除する方法

 固定観念の排除は、いくら固定観念の排除をしよう、固定観念があるとこのような弊害があるという解説をしても、実現しにくい。さまざまな方法を試してきたが、私が実践した中で、最も効果のある方法は、簡単な評価者訓練を活用して、自分自身の評価結果が甘いのか辛いのか、どのような偏りがあるのかを、ほかならぬ自分自身で実感する方法だ。

 このように申し上げると、「今から評価者訓練のプログラムを開発したり実施したりすることを考えると気が遠くなる」という声を聴くことがあるが、難しい評価者訓練を開発する必要はない。むしろ、簡単な評価者訓練の方がよい。その方が身に付きやすいのだ。

 固定観念の排除のプログラムは、次の6セッションからなる。20人のマネジャーが参加する例だ。

・第一セッション:営業管理部門が作成した前月の活動実績と営業成果の資料と、本人が作成した活動・営業報告書、10メンバー分のサンプルを読み込む。
・10メンバー各々について、5段階で総合評価する
・20人のマネジャーが、各々の評価結果を共有し、平均値を出す
・平均値に対する、自分の結果の乖離幅と、乖離した個所の確認をする
・固定観念に陥りやすい傾向の簡単な解説を聞き、自身がどのような傾向があるか、自分の認識を確認する
・再度、10メンバーのサンプルを評価し直す

 6つのセッションは、各々が15分で、計90分、集中的に演習を行う。冒頭のセットアップや事前スキルチェック、最後のラップアップや事後スキルチェックを含めて、1プログラム120分で実施する。

◆陥りやすい「固定観念」の傾向

 固定観念に陥りやすい傾向とは、20年来の演習経験をふまえて、わが国ビジネスパーソンの陥りやすい傾向として、私は現在では、次の4区分の8つの傾向に分類している。